男爵令嬢モブリーナ・モブリンの受難

はやまさくら

この縁談、お断りします!(脚本)

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〇貴族の応接間
  お二人が執務室から去った後、
  私はこっそりと客間に戻りました。
モブリン男爵「どこに行ってたんだい、モブリーナ?」
モブリーナ「ええ、ちょっと・・・」
  本当のことなど話せません。
  私は口ごもってしまいました。
モブリーナ「ねえ、お父様。 ウィレム殿下はこれ以上私に 会うおつもりがないみたいですし・・・」
モブリーナ「明日にはお屋敷を出立しようかと 思うのですが、いかがかしら?」
モブリン男爵「ふむ。せめて形だけでも、 見合いを行うべきではないのか?」
モブリン男爵「ワシはもう少しゆっくりしたいし・・・」
  賓客として最上級のもてなしを
  受けることが出来る状況は、
  確かに得がたいものでしょう。
  お父様は私の言葉に難色を示しました。
モブリーナ「いけませんわ! そろそろ戻らなければ、 弟たちが屋敷の中を 無茶苦茶にしてしまいます」
モブリーナ「お父様もお仕事が 溜まっていらっしゃるんでしょ?」
モブリン男爵「仕事なら問題ない。 息子たちも留守番くらい できると思うが・・・」
モブリーナ「違うのです、お父様! これ以上、滞在を伸ばせば、 私は殿下に呪い殺されてしまいます!」
  殿下の冷え切った視線を思い出し、
  私は身震いしました。
モブリン男爵「何を大げさな。 殿下は理知的な方だぞ。 そのようなことをなさるはずがない」
モブリーナ「お父様も公爵殿下の不興を買って、 路頭に迷うようなことには なりたくないでしょう?」
  あの方のアシュリー様に対する執着心は
  推して知るべし。
  殿下は国政を左右するほどの権力と、
  大貴族としての財力を
  兼ね備えております。
  その気になれば、
  お父様を左遷することも、
  本当に私を呪うことも・・・可能です。
モブリン男爵「モブリーナ。まさかお前・・・」
モブリン男爵「アシュリー殿への想いを断ち切れず、 しかもそのことを 殿下に知られてしまったのか?」
モブリーナ「お父様の忠告を無視してごめんなさい、 愚かな娘でごめんなさい・・・」
モブリン男爵「よし、家に帰ろう! 明日とはいわず、今すぐ帰ろう!」
  お父様は絶叫し、
  慌てて荷物をまとめ始めました。
モブリーナ「・・・さ、さすがに深夜に出立するのは どうかと思いますが?」

〇貴族の応接間
  お父様は公爵殿下とアシュリー様の
  関係について、
  既にご存じだったようです。
モブリン男爵「ウィレム殿下とアシュリー殿は 兄弟同然で育った幼なじみなんだよ」
モブリン男爵「お二人は子供の頃から仲がよく、 アシュリー殿がオメガとして 初めての発情期を迎えた際には・・・」
モブリン男爵「殿下が迷うことなく、 彼を番(つがい)にしてしまったんだ」
  どうやらお二人の仲は
  「知る人ぞ知る秘密」だったようです。
  お父様は、縁談を持ちかけられた際に、
  陛下からお聞きしたようです。
モブリーナ「幼なじみということは、 アシュリー様もそれなりのご身分と いうことでしょうか?」
  ご本人は平民だとおっしゃいましたが、
  一国の王子の幼なじみが
  平民とは考え難いですわ。
モブリン男爵「そうだな、話してなかったな・・・」
モブリン男爵「アシュリー殿は 王弟タイレル・アーレンフリート様の ご長男なんだよ」
モブリーナ「えっ、タイレル様といえば・・・」
モブリン男爵「そう、国王陛下の弟君、 処刑された前レイノルズ公だよ」
モブリーナ「つまり、ウィレム殿下とアシュリー様は 従兄弟同士なのですね」
モブリーナ「・・・あら、でもおかしいですわ?」
モブリーナ「確かタイレル様が処刑された際に、 その長男は毒杯による自害を賜ったと 聞きましたが・・・」
モブリン男爵「そう、おかしいんだよ。 生きているはずのない人物が、 公爵殿下の傍にお仕えしているんだ」
モブリン男爵「一体どうやって、 処刑の場から連れ出したんだろうね」
  おそらく最愛の番(つがい)を
  失うことを恐れたウィレム殿下が、
  何らかの交渉や裏工作を
  なさったのでしょう。
  お二人が結婚の許しを
  得られないのも納得です。
  何せアシュリー様は「処刑されたはず」の
  人物なのですから。
  許すも何も、死者との結婚が
  公に認められるはずもありません。
モブリーナ「・・・で、お父様は全てをご存知の上で、 この縁談を私に持ちかけたのですね。 あまりにもひどい話ではありませんか」
モブリン男爵「すまん・・・ だが、正直に事情を話したら、 お前は絶対にこの縁談を断っただろう!?」
モブリーナ「当たり前です!」

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