第1話 不思議な夢(脚本)
〇幻想空間
(男の声)まだ、間に合う・・・。
(男の声)このまま行けばお前は戻れなくなる・・・。
(男の声)オレだって、お前と一緒にいたいけど・・・
朝比奈(佐々木)智美「待って・・・、あなたは誰なの?」
〇おしゃれなリビングダイニング
朝比奈(佐々木)智美(昨夜は変な夢を見たものね・・・)
私は朝比奈智美。35歳の専業主婦、結婚10年目。夫と小学3年生の女の子と1年生の男の子の4人家族。
私たち夫婦は同い年。同じ銀行で知り合って交際、結婚。結婚を機にあたしは仕事を辞めた。
夫の健一さんは優しくて、絵に描いたようないい人。出世は・・・どうなのかしら。評価は「中の下」だって自分では言ってるけど。
一緒に働いていた時も欲がなくあまり要領のいいタイプではなかったかな。今でも職場ではそんな感じみたい。
でも健一さんはあたし達家族にとって本当によい夫で父。子供達も元気に育ってくれて、あたしはとても幸せ。
今のこの穏やかな時間が続いてくれたら何もいらない・・・。
朝比奈健一「おはよう。土曜なのに早起きだね」
朝比奈(佐々木)智美「おはよう。なんとなく早起きしちゃった。子供たちはまだ寝てるの?」
朝比奈健一「二人とも布団の中でゴソゴソ動いてたから、もうすぐ起きてくると思うよ!おっ、来た来た」
朝比奈理沙「お父さん、お母さんおはよう!お腹すいたー」
朝比奈翔太「おはようなのだ!」
朝比奈健一「おはよう!二人とも元気だねぇ!」
朝比奈(佐々木)智美「おはよう!」
朝比奈(佐々木)智美「3人とも着替えてらっしゃい。朝ごはんにしましょう!」
朝比奈理沙「はーい」
朝比奈翔太「りょーかい!」
朝比奈健一「平日は子供たちのお世話ありがとう。今日は俺が二人の面倒見るよ。公園で遊ばせようと思ってるんだ!」
朝比奈(佐々木)智美「あら、いいの?実は今日デパートでバーゲンがあって、それに行きたいなって思ってたの。でもあなたも仕事で疲れてるんじゃない?」
朝比奈健一「大丈夫だよ。子供と遊ぶの楽しいし!智美さんもたまにはリラックス!」
朝比奈(佐々木)智美「ありがとう!ステキな旦那さまでうれしいわ!」
朝比奈健一「じゃあ決まり!」
朝比奈(佐々木)智美「明日の日曜は家族4人で遊びましょう!」
朝比奈健一「OK!じゃ、何して遊ぶか考えよう!」
優しい夫と毎日穏やかに暮らせてうれしい。
〇おしゃれなリビングダイニング
その日の夜──
朝比奈健一「あぁ、いいお風呂だった。子供たちはよっぽど疲れたみたい。もう寝ちゃったよ」
朝比奈(佐々木)智美「今日も一日お疲れ様でした!あたしも好きな服とか買えて楽しかったわ。明日はどうする?」
朝比奈(佐々木)智美「あなたも息抜きしたら?好きなことしてもいいし、仕事とかあればしてもいいよ。明日はあたしが子供と遊ぶから!」
朝比奈健一「いやいや大丈夫。明日はみんなで遊ぼう。ドライブにでも行く?」
朝比奈(佐々木)智美「そうなの?うれしい!やっぱりみんなが一緒のがいいよねぇ!」
朝比奈健一「そうだね。じゃ明日も早起きだ。おやすみ〜」
朝比奈(佐々木)智美「おやすみなさい!」
朝比奈(佐々木)智美(明日の朝はお弁当でも作ろうかしら・・・。早く寝なくちゃね)
〇幻想空間
・・・オーイ
・・・智美、起きろってば!
朝比奈(佐々木)智美「う、うーん・・・」
朝比奈(佐々木)智美「えっ?」
〇部屋のベッド
佐々木拓馬「オーイ、朝ですよ~。今日は智美が朝ごはん当番だよー」
佐々木拓馬「グーグー寝てるから、オレ着替えちまったよ。メシは簡単でいいからとっとと起きてくれ〜」
朝比奈(佐々木)智美「た・・・拓馬?」
朝比奈(佐々木)智美「何で拓馬がここにいるの?」
佐々木拓馬「何言ってるの?あなたの旦那さんの拓馬くんですよー。寝ぼけてないで起きて下さい〜!」
佐々木拓馬。大学時代付き合っていた人。見た目はカッコいいけど、強引で振り回されることが多く卒業と同時に別れた・・・はず。
朝比奈(佐々木)智美(そうか、これは夢なのね・・・)
佐々木拓馬「お前だって仕事だろ?遅刻したらうるさい課長に怒られるって言ってたじゃん」
朝比奈(佐々木)智美(うるさい課長・・・?あぁ、イガラシ課長のこと・・・?あたし、銀行員を続けていたんだわ・・・)
朝比奈(佐々木)智美「拓馬は・・・、そう、確か大手の大日生命保険会社に内定をもらってたんじゃなかったかしら・・・?」
朝比奈(佐々木)智美(あたしはあの時拓馬と別れずに、結婚した訳?結婚しても銀行に勤めてるのね・・・、随分リアルな夢だこと・・・)
佐々木拓馬「ホラホラ、とりあえず早く会社行かなきゃね!」
朝比奈(佐々木)智美「(そうよ、これは夢なんだから・・・)オッケー!寝坊してゴメンネ!朝ごはん作るわよ~!」
朝比奈(佐々木)智美(拓馬かぁ・・・、すっごい強引だったけど、頼れる面はあったわねぇ・・・)
〇明るいリビング
朝比奈(佐々木)智美(全く家庭的でない拓馬、仕事一筋・・・。学生の時もあたしは彼のペースに振り回されてばかりだったなぁ・・・)
佐々木拓馬「ごちそうさん。オレ先行くね。夜はお客のところに行くから何時になるか分からんわ。メシはいらないよ」
佐々木拓馬「あ、そうだ。今月オレまた営業成績トップか取れそうなんだ。もしかしたら今度係長になれるかも。そしたら給料上がるぜ~!」
朝比奈(佐々木)智美「そうなの?すごいじゃない!楽しみに待ってるわね!」
佐々木拓馬「サンキュー、頑張るわ。それじゃ行ってきます」
朝比奈(佐々木)智美「行ってらっしゃい!あたしも着替えて仕事に行かなきゃ!」
朝比奈(佐々木)智美(拓馬って、何に対しても、頑張り過ぎちゃうタイプだったわよね・・・)
朝比奈(佐々木)智美(あたし達に子供は・・・いないみたいね。まぁ、これは夢だしねぇ・・・)
朝比奈(佐々木)智美「さ、あたしも仕事よ。がんばらなくっちゃ!」
〇仮想空間
この夢の世界では、あたしと佐々木拓馬は、大学卒業後も交際は続き、お互い25歳で結婚した・・・。共働き、子供はいない。
拓馬は大日保険の営業マン、あたしは中堅金融機関、すこやか銀行で正社員として働いている。
あの時、拓馬と別れなければ、こんな生活を送っていたのかもね・・・。
〇ホテルの部屋
朝比奈(佐々木)智美(朝だ・・・)
朝比奈健一「おはよう。どうしたの?そんなビックリした顔して?」
朝比奈(佐々木)智美「あぁ・・・、なんでもないの」
朝比奈翔太「おはよう!今日はみんなでドライブだ!遊園地行きたい!」
朝比奈理沙「えーッ、理沙、動物園がいいー!」
朝比奈健一「ハハハ、両方は行けないよ。お母さんはどっちがいい?」
朝比奈(佐々木)智美「えーッ、そこであたしに振るー?決められないよ~」
朝比奈翔太「ぜったいに遊園地!」
朝比奈理沙「イヤだイヤだ!動物園じゃなきゃイヤだ~!」
朝比奈翔太「お姉ちゃんいつもわがままばっかり!」
朝比奈理沙「だって動物園行きたいんだもん。翔太のバカ〜!」
朝比奈(佐々木)智美「(健一さん、こういう時は何もしてくれないのよね・・・)よーし、じゃあ恨みっこなしのジャンケンにしよう!」
朝比奈(佐々木)智美「ほら、理沙、泣かないの。ハイ2人とも、ジャンケンしなさい!」
朝比奈理沙「グズン、わかった・・・」
朝比奈翔太「よーし、負けないぞ!」
朝比奈理沙「ジャーンケン、ポン!」
朝比奈翔太「ジャーンケン、ポン!」
朝比奈理沙「ひゃあー負けたァ!」
朝比奈翔太「やったぁー勝ったー!」
朝比奈(佐々木)智美「ハイ理沙、恨みっこなしよ!今回は遊園地に決定!」
朝比奈理沙「うん・・・。じゃあ次は必ず動物園連れてってね・・・」
朝比奈健一「わかった。えらいぞ理沙!じゃあ、今日は遊園地ね。早速準備しよう!」
朝比奈(佐々木)智美(ちっちゃい子供はわがままで、こういう時は困るわよね・・・)
朝比奈(佐々木)智美(楽しみにしていたドライブなのに、何か疲れちゃったな・・・)
朝比奈(佐々木)智美(あんな変な夢、見たせいかしら・・・?)
私も結婚10年前後なんですが、たまに若い頃付き合っていた人との何気ないシーンが頭に浮かぶことありますね。ただ彼女の場合は元カレと現在進行形の夢をみているから、何か危険な予感がしました。
不思議なストーリーですね。しかし、この影響で今の幸せが壊れてしまわないか心配です…