第2話 遊園地(脚本)
〇遊園地の広場
結局、行きの車内では少し寝てしまった。
朝比奈翔太「うぉー!着いた~!」
朝比奈理沙「ジェットコースター乗りたーい!」
朝比奈健一「なんだ理沙~。さっきは動物園がいいって泣いてたのに!」
朝比奈理沙「ヘヘッ!やっぱり遊園地も楽しいかも!」
朝比奈(佐々木)智美「まったく、ゲンキンな奴め!」
朝比奈翔太「よーし、みんな!まずは観覧車に行くぞ~」
朝比奈理沙「オーケー!」
朝比奈(佐々木)智美「2人とも、走ったらあぶないよ!」
朝比奈健一「何か疲れてるみたいだけど体調悪いの?大丈夫?」
朝比奈(佐々木)智美「大丈夫よ。健一さんに運転してもらってるのにウトウトしちゃってゴメンネ。あたしは元気いっぱいよ!」
朝比奈健一「そう・・・、ならいいけど。何かあればすぐに言ってね」
朝比奈(佐々木)智美(相変わらず優しいわね・・・)
朝比奈健一「じゃあ、観覧車に行こうか」
朝比奈(佐々木)智美「うん!」
〇観覧車の乗り場
朝比奈翔太「乗るぞー!」
朝比奈理沙「おう!」
朝比奈健一「2人とも足早すぎ!」
朝比奈(佐々木)智美「ハァハァ・・・走りすぎて息切れちゃったわよ。もうあたしもお父さんも若くないんだから〜」
朝比奈健一「30越えて体力落ちたよな~」
朝比奈(佐々木)智美「あたし達ももう立派な中年よね~」
〇観覧車のゴンドラ
朝比奈翔太「もうすぐてっぺんだ!」
朝比奈理沙「高ーい。あれは富士山?」
朝比奈健一「そうだよ。晴れてるからよく見えるね」
朝比奈理沙「ねぇねぇ、お父さんとお母さんも二人で遊園地来たこととかあるの〜?」
朝比奈(佐々木)智美「そりゃあるわよ。二人が生まれる前だけどね」
朝比奈(佐々木)智美「お互いジェットコースターとか怖いのは苦手だから、観覧車とか豆汽車とかばっかり乗ってたわよね〜」
朝比奈健一「男のくせに情けないなぁとか思わなかった?」
朝比奈(佐々木)智美「全然!好みが合ってよかったなーって思っていたよ!」
朝比奈翔太「あのー、ボクはこのあとジェットコースターに乗りたいんだけど」
朝比奈健一「お、おぅ。お父さんと乗ろうじゃないか!」
朝比奈(佐々木)智美「健一さんも翔太のお陰でジェットコースターに乗れるようになったわね~!」
朝比奈理沙「あたしは怖いからジェットコースターには乗らなーい」
朝比奈(佐々木)智美「あたしもー。男同士で乗ってらっしゃい!」
朝比奈健一「他人事だと思って・・・(泣)。まぁいい!翔太、このあとジェットコースターに行くぞ!」
朝比奈翔太「オッケーなのだ!」
朝比奈(佐々木)智美(健一さん、でももしあたしがジェットコースターとか好きなら絶対一緒に乗ってくれたでしょ?)
朝比奈(佐々木)智美(いつだって自分よりあたしや家族のことを考えて、優先させてくれる・・・。そういうところが良くて結婚したのかも・・・)
朝比奈(佐々木)智美(でもあまり健一さんの優しさに甘えてたら、嫌われちゃうかもしれないから気をつけなきゃ!)
朝比奈(佐々木)智美(これからも仲良くしていけるよう頑張らなくちゃね・・・)
〇車内
朝比奈健一「子供たちは、寝ちゃったみたいだね」
帰り道──。子供たちは後ろの座席で寝てしまっている。
朝比奈(佐々木)智美「はしゃぎすぎて疲れたんでしょ。・・・今日は楽しかったわね」
朝比奈健一「そうだね~」
朝比奈(佐々木)智美「健一さん・・・、どうぞこれからもよろしくおねがいします!」
朝比奈健一「エーッ、いきなりどうしたの?」
朝比奈(佐々木)智美「うぅん、健一さん、仕事もあるのに家庭を大事にしてくれるからとっても助かる。子供たちもお父さん大好きだし」
朝比奈健一「なーんだ、家族が好きだから一緒にいるだけだよ。こちらこそよろしくおねがいしますね!」
朝比奈(佐々木)智美「ありがとう!」
朝比奈健一「ふぅ・・・、明日は月曜日か〜。仕事ダルいなぁー」
朝比奈(佐々木)智美「最近、忙しいの?」
朝比奈健一「ノルマがキツくてね~。未達で課長にドヤサれるのが苦痛だわ~」
朝比奈(佐々木)智美「あら大変。でもいいじゃない。一生懸命やれば」
朝比奈健一「智美さん、オレが出世した方がいい?」
朝比奈(佐々木)智美「別に・・・?元気に会社に行ってくれて、あたし達に優しいいつもの健一さんなら何も言うことはないわよ」
朝比奈(佐々木)智美「健一さんって、いつも仕事の話あんまりしてくれないから・・・、もしかしてツラいことでもあったの?」
朝比奈(佐々木)智美「上司にいじめられてるとか(笑)」
朝比奈健一「そんなことはないけど・・・、でも自分の成績が悪くて上司に怒られたら落ち込むよな~」
朝比奈健一「同期や後輩が先に昇進して追い抜かれていくのもなぁ・・・」
朝比奈(佐々木)智美「えッ意外。健一さんってそういうのあんまり気にしない人だと思ってた!」
朝比奈健一「30代も半ばになるとどんどん差も付いて来るしね~」
朝比奈(佐々木)智美「いいじゃない、そんなの!元気がイチバンよ!」
朝比奈健一「・・・そうだよね。ごめんね、つまんない話しちゃって」
朝比奈(佐々木)智美「何言ってんのよ!夫婦なんだから何でも話してよ。グチくらいならいくらでも聞いてあげるから!」
朝比奈健一「ありがとう。会社じゃあんまり偉くなりそうにないけどこれからもよろしく!」
朝比奈(佐々木)智美「さっきも言ったけど、こちらこそよろしくおねがいします!子供たちが大きくなったらあたしが働くことだって出来るんだから!」
朝比奈健一「銀行辞めちゃったことは後悔してないの?」
朝比奈(佐々木)智美「10年前は・・・、結婚したら寿退社するっていう風潮もあったしね~。でも辞めたのはあたしの意志よ」
朝比奈(佐々木)智美「あたし、仕事と家庭、どっちもちゃんと出来るとは思えなかったし、家庭に全力投球しようと決めたのよ」
朝比奈(佐々木)智美「辞めずに仕事を続けるって選択肢もあったけど・・・」
朝比奈健一「上司たちからも「辞めない方がいい」って言われてたしねぇ」
朝比奈(佐々木)智美「健一さんが「キミの好きにしていいよ」って言ってくれた時はうれしかったなぁ」
「辞めない方がいいと思うけどなぁ」「待遇とか育休産休とか今は女性に働きやすい環境になってるし」
「もし夫婦どっちかが病気とかになっても二馬力なら安心だし」「何よりキミ、仕事好きでしょ?」「将来管理職目指せるよ」
辞めるって伝えた時、上司や支店長、人事担当者から色々言われたなぁ・・・
まぁ確かに仕事は嫌いじゃなかったけどね・・・
別に後悔してる訳じゃないけど・・・、将来また働くのもいいかもね。
こんな30代のオバサンを雇ってくれるところがあるかは疑問だけどね・・・