初恋

深都 英二

疑惑の夜(脚本)

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〇オフィスのフロア
楪原 茗「キャンペーンサイトのデザイン、来週の火曜出しでいけそう?」
黄坂 千夏「はい、大丈夫です!」
黄坂 千夏「スケジュール調整してくれて助かりました!」
楪原 茗「気にしないで」
楪原 茗「クライアントの無茶な要望を調整するのもディレクターの仕事だから」
黄坂 千夏「メイさん、神対応すぎ!」
楪原 茗「あと、音楽フェスの特設サイトだけど、デザインA案で決定したよ」
黄坂 千夏「わあ!よかったです」
楪原 茗「ちょこっと赤字が来てたから、それ修正して再提出しよっか」
黄坂 千夏「了解です!」
楪原 茗「じゃあ、よろしくね」
楪原 茗「さてと、企画書まとめておこうかな」
麻布 翔「楪原さん。テストアップしたので、チェックお願いします」
楪原 茗「え?もうできたの?」
楪原 茗「前倒しにやってくれて助かる!ありがと」
麻布 翔「・・・」
楪原 茗「ん?どうかした?」
麻布 翔「いえ、別に」
楪原 茗「そういえばコーポレートサイトのリニューアルの話が来てたから、あとで演出の相談させて」
麻布 翔「了解です!」

〇休憩スペース
楪原 茗(あの写真・・・何なの、あれ)
楪原 茗(風磨が浮気・・・?)
楪原 茗(ダメだ!今は仕事に集中しなきゃ)
麻布 翔「楪原さん・・・?」
楪原 茗「わ!びっくりした!」
楪原 茗「麻布君、どうしたの?」
麻布 翔「・・・大丈夫ですか?」
楪原 茗「え?」
麻布 翔「またクライアントから無茶ぶりされたんですか?」
楪原 茗「ううん、大丈夫」
楪原 茗「無茶ぶりされても、みんなには無理させないように調整するから安心して」
麻布 翔「・・・」
楪原 茗「どうしたの?何か案件の相談?」
麻布 翔「これ、あげます」
楪原 茗「え?いいの?」
麻布 翔「疲れてる時には、甘いものっすよ」
楪原 茗「うれしい!ありがとう」
楪原 茗「これ、好きなんだよね」
麻布 翔「知ってます」
楪原 茗「え?」
麻布 翔「あ、いや・・・」
麻布 翔「俺にできることあったら言ってくださいね」
楪原 茗「ありがとう」
楪原 茗「今のところ大丈夫だけど、また急ぎ案件が来たら相談させてね」
麻布 翔「あ・・・はい・・・」
麻布 翔(そういうことじゃないんだけどな)
黄坂 千夏「二人で何話してるんですか〜?」
麻布 翔「っ・・・!」
麻布 翔「じゃあ俺、仕事戻ります」
楪原 茗「あ、うん・・・」
黄坂 千夏「前から思ってたんですけど・・・」
黄坂 千夏「麻布って、メイさんのこと好きですよね」
楪原 茗「え!?」
楪原 茗「麻布君、私より7歳も年下だよ?」
楪原 茗「先輩として慕ってくれてるだけだと思うけど」
黄坂 千夏「まあ、メイさんには彼氏いますもんね」
楪原 茗「え?うん・・・」
黄坂 千夏「メイさんって優しいから、周りが勘違いしちゃうんですよね〜」
黄坂 千夏「彼氏いるんだから、あんまり他の男に気を持たせない方がいいですよ」
楪原 茗「え?私は別にそんなつもりは・・・」
黄坂 千夏「あ!ちょっと相談があるんですけど」
黄坂 千夏「私がデザインしたやつ、麻布にコーディングを担当してほしいんです」
楪原 茗「え?あれは安西さんが担当でしょ?」
黄坂 千夏「そうですけど・・・」
楪原 茗「麻布君は、他の案件で詰まってるからちょっと難しいかな」
楪原 茗「どうして?安西さんと何か揉めた?」
黄坂 千夏「いえ、そういうわけじゃないんですけど」
黄坂 千夏「今の忘れてください!」
黄坂 千夏「じゃあ、私も仕事に戻ります」
楪原 茗「あ・・・」

〇シックなバー
楪原 茗「ふぅー!」
楪原 茗「やっぱここは落ち着くわ」
三琴 恭弥「はい、どうぞ」
楪原 茗「ありがとう!」
楪原 茗「いいお店が近くにあって本当によかった!」
三琴 恭弥「実は俺に会いに来てたりして」
楪原 茗「ここ、元々私の行きつけのバーなんだけど」
楪原 茗「三琴さんいなくても、十分ステキなお店だから」
三琴 恭弥「相変わらず冷たいね〜」
楪原 茗「でも、三琴さんのお酒は好きだよ」
三琴 恭弥「え?」
三琴 恭弥「じゃあ、付き合って・・・」
楪原 茗「ムリ!彼氏いるし」
三琴 恭弥「だよねー」
三琴 恭弥「彼氏と仲良しでいいね〜」
楪原 茗「うん・・・」
三琴 恭弥「・・・」
三琴 恭弥「仕事、忙しい?」
楪原 茗「え?ああ、後輩の女の子に嫉妬されたり、色々大変よ!」
楪原 茗「まあ、別に気にしてないけどね」
三琴 恭弥「美人で仕事もできれば、そりゃあ妬まれるよな」
三琴 恭弥「気にしないことが一番だな」
楪原 茗「何?今日はやけに優しくない?」
三琴 恭弥「なんか元気なさそうだからさ」
楪原 茗「え?」
三琴 恭弥「・・・何かあった?」
三琴 恭弥「俺でよければ、話聞くよ」
楪原 茗「っ・・・」
楪原 茗「三琴さんは、もし彼女が浮気してたらどうする?」
三琴 恭弥「え?浮気?」
三琴 恭弥「俺だったら・・・」
三琴 恭弥「許しちゃうな」
楪原 茗「え?許すの?」
三琴 恭弥「俺、好きな人には甘いから」
三琴 恭弥「一度好きになったら、何があっても愛しちゃうね」
楪原 茗「意外だわ・・・」
三琴 恭弥「意外って!失礼な」
楪原 茗「ごめん、ごめん」
三琴 恭弥「俺、こう見えてめちゃくちゃ一途だからね」
楪原 茗「私はそんな寛大にはなれないな」
三琴 恭弥「彼氏、浮気してるの?」
楪原 茗「してる・・・かも」
三琴 恭弥「かも?」
楪原 茗「彼氏が、女の人と一緒に写ってる写真を見ちゃって・・・」
三琴 恭弥「うーん、それだけだと浮気とは言えないんじゃない?」
楪原 茗「あれは・・・浮気だよ」
三琴 恭弥「じゃあ、彼氏に聞いてみたら?」
楪原 茗「え?直接?」
三琴 恭弥「それとなく聞いてみるんだよ」
三琴 恭弥「そこで嘘をついたら、何か隠したいことがあるのは確実だから」
楪原 茗「そう・・だね・・・」
三琴 恭弥「これは俺の持論だけど・・・」
三琴 恭弥「相手を信じられなくなったら、もう終わりだよ」

〇電脳空間
  上手くいったでしょ。
  ああ、完璧だよ。順調に進んでる。
  次はどうする?
  とにかくお前は指示通りやってくれればいい。
  まだ何かやるつもり?
  もちろん。
  あの女に、地獄を味わせてやる。
  あの、人殺しに──

〇休憩スペース
黄坂 千夏「お!何だろう?」
  SNSのDMにメッセージが届いた。
黄坂 千夏「案件の依頼かな〜?」

〇SNSの画面
  楪原茗は、人殺し。
  世田谷の圷津夫婦殺傷事件に関わっている。
  警察に通報してください。

〇休憩スペース
黄坂 千夏「は?何これ!」
黄坂 千夏「事件!?てか、人殺しって・・・」
黄坂 千夏「そもそも何で私に?」
麻布 翔「ねぇ、ちょっといい?」
黄坂 千夏「わ!びっくりした!」
黄坂 千夏「麻布!どうしたの?」
麻布 翔「楪原さんが探してた」
黄坂 千夏「え?」
麻布 翔「デザイン、今日の午前中に上げるって言ってただろ?」
黄坂 千夏「あ、やば!そうだった・・・」
麻布 翔「あんまり楪原さんを困らせるなよ」
麻布 翔「ただでさえディレクターは大変なんだから」
黄坂 千夏「っ・・・」
黄坂 千夏「何なの、あの人のことばっかり気にして」
黄坂 千夏「あんたの好きな楪原は、人殺しかもしれないんだよ」

〇オフィスビル
楪原 茗「今日こそ、風磨に聞いてみようかな・・・」
刑事「ちょっとすみません」
楪原 茗「何ですか?」
刑事「警察です」
楪原 茗「警察!?」
刑事「楪原茗さんですね?」
楪原 茗「そうですけど・・・」
刑事「この男に見覚えはありますか?」
楪原 茗「これは・・・!」
刑事「やはり知り合いなんですね」
刑事「ちょっとお話を聞かせてもらえますか?」
楪原 茗「私、何も知りません!」
麻布 翔「楪原さん?」
楪原 茗「麻布君・・・!」
刑事「彼氏か?」
麻布 翔「違います。楪原さんは職場の先輩です」
麻布 翔「あんたこそ、何なんですか?」
刑事「ははっ!最近の若者にしては、ずいぶん威勢がいいな」
刑事「警察だよ」
麻布 翔「警察!?」
刑事「ちょっと彼女に話があってね」
刑事「楪原さん。ここだと色々と都合が悪いでしょう」
刑事「場所を変えましょう。そんなお時間は取らせませんよ」
楪原 茗「・・・わかりました」
楪原 茗「麻布君。このこと、みんなには黙っててくれる?」
麻布 翔「それはいいですけど・・・」
麻布 翔「なんか事情があるみたいですけど、俺も一緒に行きましょうか?」
楪原 茗「ううん、一人で大丈夫。ちょっと話をするだけだから」
楪原 茗「心配しないで。じゃあ、また明日」
麻布 翔「楪原さん・・・」

次のエピソード:仕組まれた罠

コメント

  • 裏切り者は誰だろうって、自然と引き込まれてます。ストーリーの力って、こういうことだなぁと、改めて感じます。感謝。

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