母の性

Nazuna

第一話:彩と彩人(脚本)

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〇狭い畳部屋
  人口は1万人ほどの小さな島
  私はここで、息子と共に暮らしている
彩人「お母さん、ただいまー!」
吉田彩「お帰り、彩人・・・」
吉田彩「うっ!?」

〇病院の廊下
???「・・・・・・」

〇狭い畳部屋
吉田彩人「お母さん、大丈夫!?」
吉田彩「触るな!!」
吉田彩人「ご、ごめん・・・」
吉田彩人「お薬取ってくるから、待ってて」
吉田彩人「はい、これ」
吉田彩「はあ、はあ」
吉田彩「はあ・・・」
吉田彩人「治った?」
吉田彩「・・・うん」
吉田彩「ありがとう、彩人」
吉田彩「ごめんね、触るなとか言って」
吉田彩人「いいよ。いつものことだし」
吉田彩「・・・ありがとう」
吉田彩「さあ、こっちおいで」
吉田彩「ぎゅーってしてあげる」
吉田彩人「うん」
吉田彩「はい、ぎゅー」
吉田彩「学校は楽しかった?」
吉田彩人「うん!」
吉田彩人「佐藤くんがね・・・」
吉田彩人「あ、そうだ!」
吉田彩人「学校でサッカーする約束してたんだった」
吉田彩人「ね、行ってきてもいい?」
吉田彩「・・・わかった、いいよ」
吉田彩人「やった!」
吉田彩人「いってきます!」
吉田彩「いってらっしゃい」
吉田彩「五時までには帰ってくるのよー」
吉田彩人「はーい!」
吉田彩「・・・・・・」
吉田彩「さ、夕飯の準備しなくちゃ」
  この島に来てから10年間
  平穏な暮らしは、これからも続くと思っていた

〇安アパートの台所
吉田彩(あとはご飯炊いて・・・)
吉田彩(インターフォン?)
吉田彩(彩人かしら)
吉田彩(帰ってくるには早いと思うけど・・・)

〇シックな玄関
吉田彩「どなたですか?」
???「・・・あの」
吉田彩(知らない女性の声だ)
???「桜井彩さん、ですね」
吉田彩「────!」
吉田彩「・・・・・・」
吉田彩「・・・いえ、違います」
???「・・・そうでしたね」
???「今は、吉田彩さんでしたか」
吉田彩「・・・あなたは?」
???「・・・・・・」
???「岩崎正弘、という名前に聞き覚えはありませんか」
吉田彩「・・・お入りください」
  10年前の記憶が、フラッシュバックした

〇病院の廊下
  ──10年前
同僚1「それでさあ、結構いい感じだったのに」
同僚1「仕事が忙しくてあまり会えないって言ったら嫌な顔されちゃってさー」
同僚2「あ、それ私も」
同僚2「ホント、看護師って損な仕事だよね」
同僚2「でも、その点・・・」
同僚1「あ、にやにやしてる人がいる~」
桜井彩「にやにやなんかしてないって」
同僚2「彩ちゃんは彼氏とラブラブ、と」
桜井彩「そんなんじゃないって!」
桜井彩「普通だよ、普通」
同僚1「ねえねえ、彩ちゃんの彼氏は、彩ちゃんが看護師だってことどう思ってるの?」
桜井彩「実は・・・」
桜井彩「看護師ってこと、彼氏には内緒にしてるんだ」
同僚1「そうなんだ」
桜井彩「うん」
桜井彩「相手も忙しいみたいで、会う機会は少ないんだけど」
桜井彩「私にはそれくらいがちょうどいいかな」
同僚2「良い彼氏さんみたいだね」
同僚1「羨ましい~」
同僚1「私もそろそろ彼氏が欲しいよ」
同僚2「まだ若いから大丈夫って心の中では思っていても」
同僚2「産婦人科にくる人はみんな結婚してるんだって考えると焦っちゃうよね」
同僚1「それは言わない約束でしょ~!?」
同僚2「あはは、ごめんごめん」
同僚2「あ、ねえ、あっち見て」
同僚2「あの人、かっこよくない?」

〇病院の廊下
医師「あとは、しばらくここにいてもらって──」
医師「この度はご出産、まことに──」
男「ありがとうございます──」
男「妻の方も──」

〇病院の廊下
桜井彩(え、あれって・・・)
桜井彩(いや、そんなわけ、ないよね)
同僚1「確かにイケメンだけど~」
同僚1「ここにいるってことはもうノーチャンスだよ~」
同僚2「良い人はすぐに掴まっちゃうからね」
同僚2「さ、私たちは仕事仕事」
同僚2「ほら、行くよ」
同僚1「は~い」
桜井彩「・・・・・・」
同僚2「彩ちゃん? ほら、行くよ」
同僚2「どうかした?」
桜井彩「ううん。なんでもない」
桜井彩「行こ」

〇病院の待合室
桜井彩「受付の履歴を見れば、来た人の名前がわかるはず・・・」
桜井彩(そんなわけない、と思う)
桜井彩(でも一応、念のため・・・)
桜井彩(これって・・・)
  『岩崎 正弘』
桜井彩「嘘」
桜井彩「そんなはずない・・・」
桜井彩(偶然同姓同名なだけに決まってる)
桜井彩(そうよ、あの人がここに来るわけない)

〇渋谷駅前
  深夜
桜井彩「ごめんなさい、遅くなって」
岩崎正弘「構わないよ、彩」
桜井彩「いつも、あまり時間取れなくてごめん」
桜井彩「今日は、どうする?」
岩崎正弘「そうだな」
岩崎正弘「実はもう、飯は済ませてきたんだ」
岩崎正弘「だから、さ」
岩崎正弘「直接、行ってもいいかい?」
桜井彩「・・・うん、わかった」
桜井彩「いいよ、行こう」
岩崎正弘「ありがとう」

〇ラブホテルの部屋
岩崎正弘「・・・ふう」
岩崎正弘「・・・良かったよ、彩」
岩崎正弘「先にシャワー浴びてくる」
桜井彩「うん、わかった」
桜井彩「・・・・・・」
桜井彩「・・・あ」
桜井彩(あの人の携帯)
桜井彩(びっくりした・・・)
桜井彩(メッセージ? こんな時間に?)
桜井彩「・・・・・・!!」
  そこに映っていたのは、あの人と
  ベッドに横たわり、胸に赤ちゃんを抱いた女性の姿だった
桜井彩「この病室、私が勤めている病院の・・・」
桜井彩「・・・・・・」

〇ラブホテル
桜井彩「はあ、はあ」
  疑いが、確信に変わった
  あの人には妻がいて、子供もいるんだ
桜井彩「私なんて・・・」
桜井彩「私のことなんて、最初からただの遊び相手としか思っていなかったんだ・・・」
桜井彩「なんで・・・」
桜井彩「なんでなんでなんで・・・」

〇病院の廊下
  ──子供を持つのが、私の夢だった
  産婦人科に勤めたのも、子供を授かった人のサポートをしたいと思ったからだった

〇ナースセンター
桜井彩「・・・これだ」
桜井彩「岩崎、美也子」
  それが、あの人の結婚相手の名前だった

〇近未来の病室
  新生児室
桜井彩(・・・寝てる)
桜井彩「この子が、あの人の・・・」
桜井彩「ふふっ」
桜井彩「本当に、よく寝てる・・・」
  ──子供を持つのが、夢だった

〇病院の廊下
  私は赤ん坊を抱えて逃げた

〇マンション前の大通り
  この子と一緒に、どこか遠い所へ

〇海岸線の道路
???「・・・う」
桜井彩「大丈夫、大丈夫だからね・・・」
  逃げる中で、自分を吉田と名乗ることに決めた

〇草原
  そして半年間、逃げて逃げて
  辿り着いたのは、小さな島だった
桜井彩(・・・ここで生きていこう)
桜井彩(本当に、可愛い子)
桜井彩「・・・あなたの名前は、彩人」
桜井彩「私は吉田彩」
桜井彩「あなたは私の子ども、吉田彩人」
桜井彩「大事な大事な、私の子ども・・・」

〇狭い畳部屋
  ──そして、現在
西條美也子「・・・・・・」
吉田彩「・・・・・・」
西條美也子「・・・私の名前は、西條美也子と言います」
西條美也子「岩崎正弘の、妻でした」
吉田彩(美也子・・・)
  その名前は、記憶に鮮明に残っていた
吉田彩「西條・・・岩崎ではないのですね」
西條美也子「あの人は、五年前に亡くなりました」
西條美也子「自殺でした」
吉田彩「自殺?」
西條美也子「そうです」
西條美也子「不倫が発覚したのです」
西條美也子「あなたとの不倫ではありません」

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コメント

  • こちらも拝読させて頂きました
    いや〜息子を誘拐してしかも逃走劇
    凄くこのコンテストに相応しいアイデアでした

  • こういう子供誘拐ストーリー、良くないのですが好きなんです笑
    今更やってきた実の母親も一癖、二癖ありそうですし、良い感じにドロドロしてくれそうですね✨
    次回も楽しみにしております👍

  • 子どもをめぐる愛憎劇…。
    なかなか書けるものではないですね。
    彩が逃げ出した事は、美也子にとって誤算だったのでしょうか…。
    続きを楽しみにしています。

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