エピソード3(脚本)
〇ゴシップボックス_ゴシップボックス・内(ライティング白)
青木谷さち「・・・あなた、いつから起きてたの?」
田中あい「薬師寺さんが『ここは・・・』って言った頃からです」
室井秀明「ほとんど最初からじゃねえか」
田中あい「私・・・しばらく、寝たふりで様子を見ることにしたんです・・・その方が、犯人は困るはずだから」
薬師寺透「犯人って・・・」
青木谷さち「あなたさっき、この部屋の目的が分かったとか言ってたよね?」
田中あい「・・・はい、たぶん」
室井秀明「なんだ、この部屋の目的って」
田中あい「みなさんは・・・共通点探しゲームって、聞いたことありますか」
青木谷さち「何、そのゲーム」
室井秀明「企業の研修なんかでよくやるアイスブレイクだ」
室井秀明「ペアを組んで、お互いの共通点を三つ探してくださいとか指示する」
室井秀明「そうすると、ペアになった社員同士は共通点を探すために、お互いのプロフィールどんどんしゃべって、結果的に仲良くなる」
室井秀明「・・・あ、そうか」
田中あい「そうです。私も、以前グループでやらされたことがあるんですけど・・・この部屋がやってることは、あのゲームに近いんです」
薬師寺透「じゃあ・・・犯人の目的は、僕たちにもっと仲良くなってもらうってコト・・・?」
田中あい「それは絶対違うと思います」
薬師寺透「絶対って・・・そこまで言わなくても」
室井秀明「企業やうちのグループの大人があのゲームをやるのは、参加者の仲を良くすることにメリットがあるからだ」
室井秀明「でも、この部屋で俺たちが仲良くなったところで、犯人側にメリットがあるとは思えない。だから・・・」
田中あい「目的は別にある。 たぶん犯人の狙いは、私たちの個人情報」
薬師寺透「個人情報?」
田中あい「薬師寺透さん。二十八歳。 長野県出身で、血液型はB型」
田中あい「都内の広告制作会社で働いていて、趣味はソーシャルゲーム」
田中あい「住んでいるのは神奈川県川崎市で、最寄りは東急田園都市線」
薬師寺透「ど、どうして僕のことそんなに・・・」
田中あい「全部、薬師寺さんがこの部屋でしゃべったことですよ」
薬師寺透「・・・そういえば」
田中あい「三軒茶屋在住の室井秀明さんも、南青山在住の青木谷さちさんも・・・」
田中あい「この部屋に来てから、どんどんどんどん、自分から個人情報を晒してるんです」
室井秀明「つまり『共通項』の話は・・・俺たちから個人情報を引き出すための餌ってことか」
田中あい「ええ、おそらくは」
青木谷さち「ちょっと待って。急に起きたと思ったら、突然目的が分かったとか言い出して・・・あなた何者? 名探偵?」
田中あい「私は・・・ただの女子高生です」
田中あい「父が推理小説が好きだったので、その影響を受けてはいますけど・・・」
青木谷さち「お父さんは、何をされてる方?」
田中あい「世田谷で、美容外科クリニックの院長をしてます」
薬師寺透「もしかして、田中クリニック? あの、ワイズマンの傍にあるガラス張りの・・・」
田中あい「はい、ガラス張りなんて恥ずかしいからやめたほうがいいって言ったんですけど・・・」
青木谷さち「じゃあ、だいぶ立派なお宅ね」
田中あい「・・・こういう話になるから、起きたくなかったんです」
薬師寺透「あ、なんかごめんなさい」
室井秀明「あんたさっき、『誰にも知られたくないような秘密が共通項に設定されてる』とか言ったよな」
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