#4 お局だって、恋がしたいっ!(脚本)
〇音楽スタジオ
綾香「カヲリ先輩、奥さんにバレたって・・・?」
カヲリ「うん・・・部長がもう会わないって・・・多分、奥さんにバレちゃったからって・・・」
綾香「多分って・・・そんな・・・」
ひかる「でも、不倫を止めるいい機会よ。下手したら奥さんから慰謝料請求されちゃうのよ? アンタ、貯金ないんでし」
カヲリ「・・・でも、それでも好きなんだもん~!」
綾香「あの、部長って営業部長の事ですよね? カヲリ先輩なら、もっと素敵な人がいると思うんですけど・・・」
カヲリ「何よお! 部長がハゲでデブって言いたいわけ~?」
綾香「そ、そういうわけでは・・・」
ひかる「実際その通りじゃない」
綾香(でも、それ以上に部内では嫌な噂があるんだよね・・・)
綾香(でも、これ言ったらさらにカヲリ先輩を傷つけそうだし・・・)
カヲリ「ハゲでデブで加齢臭がしても、アタシにとってはカッコいい部長なの~!!」
ひかる「はあ・・・まさに恋は盲目ってやつね」
綾香(・・・どうしよう。言った方がいいのかな・・・。でも・・・)
〇音楽スタジオ
日曜日
ひかる「うん。今のとこいい感じ。綾香もだいぶ音を外さなくなってきたわね」
綾香「えへへ。コンテストまでまだまだ時間はありますけど、優勝のためにも早めにコンディション整えときたくて」
ひかる「綾香はボーカルも兼ねてるからね。 大変だけど、頑張って!」
綾香「はい! 明るい未来のためにも、三百万円のためにも頑張ります!」
ひかる「ふふ、その意気よ!」
綾香「・・・それにしても、カヲリ先輩、遅いですね」
ひかる「うん。電話にも出ないのよね。 まったく・・・やる気あるのかしら?」
ひかる「この間は結局練習できなかったから、今日はみっちりするって言ったのに・・・」
その時、おぼつかない足取りで、カヲリがスタジオに入ってきた。
綾香「カヲリ先輩!」
ひかる「遅いわよ・・・」
ひかる「って酒臭っ! アンタ、こんな時間から飲んでたの!?」
カヲリ「違うも~ん。昨日の~夜から~飲んでるんだも~ん」
ひかる「アンタ、またホストクラブに・・・!?」
カヲリ「だって~寂しかったんだもん~」
ひかる「あーもう! 泣かないの!」
ひかる「って言うかアンタ、本当にやる気あるの!? 不倫もホストも辞められないんなら 、待ってるのは借金地獄よ!?」
カヲリ「だって~だって~死んじゃいたいくらい、寂しいんだもん~!!」
綾香「そんな事言わないでください・・・!」
綾香「カヲリ先輩は、とても魅力的で素敵な女性なんですから、もっと良い人が・・・」
カヲリ「部長以上に素敵な人、いないわよ~!」
綾香(そ、そうでもないと思うけど・・・)
綾香(やっぱり、『あの噂』言った方がいいのかな・・・)
綾香「あの、カヲリ先輩・・・」
カヲリ「すー・・・すー・・・」
綾香「あ、寝ちゃってる・・・」
ひかる「はあ・・・今日も練習にならなさそうね」
〇オフィスのフロア
翌日
綾香(はあ・・・カヲリ先輩、大丈夫かなあ・・・。 今日もあまり元気なかったけど・・・)
営業部長「水森君、契約書できた?」
綾香「はい。あとは印刷かけるだけです」
営業部長「そうか。遅くまですまなかったね」
綾香(よりによって営業部長とふたりきりで残業なんて・・・)
綾香(哲也とも全然連絡つかないし、私も最近、男運ないなあ・・・)
綾香(今日も練習あるのに、こんなに遅くなっちゃったし・・・)
綾香(それに、部長の『あの噂』・・・)
綾香が机で作業をしていると、背後から営業部長が近づいてきた。
綾香「あ、もう終わりますから・・・」
営業部長「水森君は、本当に働き者だね」
そう言うと、営業部長が綾香を背中から抱きしめた。
綾香「ひっ・・・!?」
営業部長「今日のお礼に、この後ホテルのディナーでもどうかな?」
営業部長はさらに綾香を強く抱きしめる。
綾香(・・・こ、怖い・・・声が出ない・・・)
綾香(やっぱり、あの噂、本当だったんだ。部長とふたりきりで残業するとセクハラされるって・・・!)
綾香(やっぱりこんな人、カヲリ先輩には・・・!)
営業部長「ねえ、どうだい?」
綾香(と、とりあえず、早く部長から逃げなくちゃ・・・でも・・・体が震えて・・・っ)
カヲリ「そこのデブジジイ! 綾香ちゃんから手を離しなっ!」
突如、フロア中に咆哮のような声が響いた。
綾香と部長が声の方へ視線を向けると、鬼の形相で仁王立ちするカヲリの姿がそこにはあった。
営業部長「ふ、福山君!?」
綾香「カ、カヲリ先輩!?」
カヲリ「おぅらあああああ!!」
営業部長「ひいっっ!?」
戸惑う部長に、カヲリは思い切り前蹴りを食らわせる。
無様に床に転がる部長を、カヲリはさらに追い詰めた。
カヲリ「てめえ、歯ぁ食いしばれっ!」
営業部長「ひいっ!?」
カヲリ「これは、綾香ちゃんの分だっ!」
カヲリは部長の右頬を強く叩いた。
営業部長「ぎゃ、ぎゃあ!?」
カヲリ「これは、奥さんの分!」
今度は部長の左頬をカヲリは叩く。
営業部長「ふ、福山君、止め・・・ぐあっ!!」
カヲリ「これは、私の・・・とは言わないわ。だって、私もアンタの不倫の片棒担いでたんだもん!」
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