お局バンド、結成!

阿左見柚奈

#5 TUBONE(脚本)

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〇開けた交差点
綾香「・・・哲也?」
哲也「あ、綾香!?」
ひかる「え、哲也って、確か綾香の・・・」
カヲリ「しっ! 今それ言っちゃダメ!」
優美「えっと・・・哲也、こちらの方は?」
哲也「・・・優美、こちら大学の同期の水森さん」
綾香(えっ!? 大学の同期って、彼女なのに、そんな紹介の仕方ある!?)
優美「初めまして、水森さん。私、哲也くん・・・じゃない、宮野の婚約者の金子優美です」
綾香「・・・!?」

〇音楽スタジオ
綾香(そんな・・・哲也は私と結婚するんじゃなかったの・・・!?)
カヲリ「えっと・・・大丈夫? 綾香ちゃん」
ひかる「大丈夫なわけないでしょ!? 彼氏に二股された上に、婚約者だなんて・・・!」
綾香「二股ですよね、やっぱり・・・」
ひかる「あ、ごめん・・・」
綾香「いえ・・・ひかる先輩のおかげで、やっとわかりました」
綾香「私・・・振られたんですね」
カヲリ「大丈夫だよ~! 男なんて星の数ほどいるんだから~!」
ひかる「そ、そうよ! そうだ、バンドで見返してやりましょうよ!」
カヲリ「うんうん! こんなイイ女振ったって後悔させてやるのよ~!」
綾香「ひかる先輩、カヲリ先輩・・・ありがとうございます」
綾香「おふたりが私の先輩で良かったです・・・」
「・・・・・・」

〇オフィスのフロア
  翌日、営業部長は出社してこなかった。
  とうとうクビになったのではと後輩たちは騒いでいたが、今の綾香には、そんな噂も耳には届かなかった
綾香(もうお昼か・・・あれ・・・LAIN来てる・・・哲也からだ!)
綾香(『会社の近くまで来てるから会える?』・・・久しぶりにきたLAINがこれかあ)

〇川沿いの公園
哲也「よう、久しぶり・・・でもないか」
綾香「・・・話って?」
哲也「はあ? 別れ話に決まってんだろ? 俺、優美と結婚するから」
綾香「そう・・・わかった」
哲也「はあ? そんだけ? ったく、本当、お前ってつまんねー女だよな」
綾香(・・・そんなの、私が一番よく知ってる)
哲也「趣味もなくて、俺ばっかに依存してさ。 いい歳して恥ずかしくねーの?」
綾香(・・・そこまで言うんだ)
綾香(でも、全部本当の事。だけど、どうして裏切ってた哲也にそこまで馬鹿にされなきゃいけないの?)
綾香(私も、ひかる先輩やカヲリ先輩みたいに、強くなりたいっ・・・!)
哲也「おい、黙ってないで何か・・・」
綾香「言いたいことは、それだけ?」
哲也「はあ?」
  綾香は右腕を思い切り振り上げ、哲也の頬を思い切り殴りつけた。
哲也「・・・っ! おい、何す・・・」
綾香「今ので、結婚の約束を反故にした慰謝料はナシにしといてあげる!」
哲也「・・・っ!」
綾香「それから私、今度バンドコンテストに出るの。彼女と絶対に見に来なさいよね! 来なかったら、全部ばらすから!」
  そう言い放つと、綾香は呆然と立ち尽くす哲也に背を向け、その場を後にした。

〇警察署の食堂
カヲリ「あ、綾香ちゃん・・・!」
ひかる「・・・目、赤いけど何かあったの?」
綾香「ひかる先輩、カヲリ先輩・・・!」
綾香「コンテスト、絶対に優勝しましょうね!」
「・・・!」
ひかる「もちろん! スパルタでいくわよ!」
カヲリ「アタシも頑張る~!」
綾香(つまらない女だなんて、これからは絶対に言わせないっ!)
綾香(それに、私にはこんなに頼りになる先輩達が、ついているんだもん・・・!)

〇ライブハウスの控室
  コンテスト当日
綾香「そろそろ出番ですね・・・。ちょっと緊張してきちゃいました・・・」
ひかる「・・・綾香、ありがとう」
綾香「え?」
ひかる「アンタが誘ってくれたおかげで、音楽の楽しさ、久々に感じることができたわ」
カヲリ「アタシも、ありがとう綾香ちゃん♪ 恋愛以外に夢中になれること、久しぶりに見つけたかも☆」
綾香「ひかる先輩、カヲリ先輩・・・私も・・・ありがとうございます」
綾香「ふたりがいてくれて、本当に良かったです・・・!」
綾香「それじゃ、行きましょう!」

〇ライブハウスのステージ
綾香(結構人が来てるな・・・あ、経理部の子も来てる!)
綾香(あれ、あのイケメンって、もしかしてホストの人!?)
綾香(あ・・・哲也と、優美さんもいた・・・)
綾香(どうしよう・・・みんなの前で上手く弾けるかな・・・)
ひかる(綾香・・・! 大丈夫よ!)
カヲリ(アタシ達がついてるって~!)
綾香(ふたりとも・・・! はいっ!)
  綾香はマイクを持ち、観客を見た。
綾香「はじめまして、TUBONEです。どうしてTUBONEかと言うと、私達、みんなアラサーで会社ではお局さまだからです」
綾香「でも、そんなお局でも、こんな風に演奏ができるってとこ、今日は見て行ってください」
  綾香達の演奏が始まった。

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