エピソード1(脚本)
〇渋谷駅前
「すみません、ちょっとインタビュー、いいですか?」
「はい?」
「よく「主婦の鏡」という言葉を耳にすると思うんですが、あなたにとって、主婦の鏡の必須条件は、何ですか?」
「そうだな~、いつも身ぎれいにしているおしゃれなヒトじゃないですかね」
「ちなみに、ご結婚は?」
「ええ、してます」
「ではご主人、あなたの奥様はいつも身ぎれいにされていますか?」
「まさか! ウチのはいつもだらしがない恰好をしていて、主婦の鏡からは一番遠い存在なんじゃないですかね」
〇おしゃれな居間
香我美時枝「・・・ということだから!」
香我美聡子「えっ?」
香我美時枝「返事は「はい」でしょ!」
香我美聡子「あ・・・はい」
香我美時枝「はいだけ!」
香我美聡子「でもその土曜日は同窓会だって、前々から・・・」
香我美時枝「そうだったかしら? でもそれ、今からでも欠席にできるんでしょう?」
香我美聡子「でも・・・。 お義母さまの弟さんってことは、真一さんや怜子さんにとって叔父さまなんですよね?」
香我美聡子「私より怜子さんがいた方が、叔父さまもきっと嬉しいんじゃないですか?」
香我美時枝「弟にとってはそうでしょうよ。 他人の聡子さんより、姪の怜子と過ごしたいに決まってるわよ」
「はあ? こっちだってイヤなんですけど」
香我美時枝「でもねぇ~、あの子、仕事が忙しいから」
香我美聡子「って土曜の夜ですよね? 仕事は・・・」
香我美時枝「そうよね、お休みよね! 貴重な休みの日を、わがままな弟の相手なんてさせちゃ可哀想でしょ!」
「私の方が可哀そうだと思うんですけど・・・」
香我美聡子「でも・・・わたしだって」
香我美時枝「あらいいのよ、聡子さんは」
「なんだよいいって! 私がよくないって言ってんだろーが」
香我美聡子「いい・・・って?」
香我美時枝「だって聡子さんならいつも身ぎれいにしていて、弟も気に入っているみたいだしね、あなたのこと」
「ふざけんなっつ~の! 同居している姑小姑だけで手、いっぱいだっていうのに、この上、独身糖尿病予備軍
わがまま全開のあんたの弟のめんどうまで見れるわけないでしょうが!」
香我美時枝「ね! お願いよ! 一生のお願い!!」
香我美聡子「でも・・・やっと真一さんの許可を取り付けたのに・・・」
〇渋谷駅前
「主婦の鏡とは、どんなヒトだと思いますか?」
「やっぱりなにかにつけて夫をたててくれる奥さんですね。三つ指ついて、とまではいかなくても」
〇豪華なベッドルーム
香我美真一「ダメだ!」
香我美聡子「どうしてダメなの? 久しぶりの同窓会に行くくらいいいでしょ?」
香我美真一「逆に聞くが、なんで同窓会なんかに行きたいんだ? 浮気だろう?」
香我美聡子「幹事なのよ私! それなのに場所決めや、連絡、他のヒトに頼んでやってもらって」
香我美聡子「当日の受付だけで勘弁してもらったのよ!!!」
香我美真一「・・・バカバカしい!」
香我美聡子「里奈はお泊り会でいないし、お義母さんと怜子さんの夕食は用意していく!迷惑はかけないからお願い・・・」
香我美真一「勝手にしろ!!!」
〇おしゃれな居間
香我美聡子「わかりました。同窓会に行くのはやめます・・・」
〇渋谷駅前
「あなたにとって主婦の鏡とは?」
「料理の上手な女性だと思います」
〇おしゃれな居間
香我美聡子「わかりました。同窓会はキャンセルします」
香我美時枝「そう? 良かったわ、そうしてくれて」
「ママ~!」
香我美里奈「ママ、泣いてるの? またおばあちゃんにいじめられたの?」
香我美時枝「ふん! 母親も母親なら、子も子だね! ちっとも可愛くないんだから」
香我美怜子「そうよ~。専業主婦なんて外で働かなくていいんだから泣く理由なんかあるわけないじゃない」
香我美聡子「れ、怜子さん。 今日は随分、早いんですね」
香我美怜子「北海道に出張だって言ったじゃない。それも覚えられないなんてホント、頭が悪いのね」
香我美聡子「・・・・・・」
香我美怜子「あ、これ。お土産」
香我美聡子「え~と、これは?」
香我美怜子「鮭とば! 高いのよ~、これ」
「はあ・・・。乾きものって絶対にあまる上に、匂いがけっこう強烈なのよね~」
香我美里奈「ママ・・・?」
香我美聡子「ああ~、そうね。お昼寝の時間ね」
〇後宮の一室
「昔、昔、あるところに、意地悪な継母と、意地悪な娘が住んでいました」
香我美時枝「さあ、とっととお掃除してちょうだい!」
香我美怜子「ちょっと~! 私の下着、洗っておいてって言ったでしょ!」
「な、なんなのこれ? 私、もしかして童話の世界に入っちゃったの???」
香我美時枝「今日はお城で舞踏会があるんだからね。どうやっても王子さまに娘を見初めてもらうんだから!」
香我美怜子「あんたはもちろん、家で留守番よ」
香我美時枝「わかったらとっとと掃除をしな!」
香我美聡子「ど、どうしよう。・・・あれ?」
香我美聡子「良かった~♪ スマホは使えるみたい」
香我美聡子「即時配達してもらった家事ロボット、頼んだわよ!」
香我美聡子「レンジさえあればお料理だって・・・」
〇豪華なベッドルーム
香我美里奈「ママ~。 ママ、大丈夫!?」
香我美聡子「えっ?」
香我美里奈「ママね。お話を読んでいる途中で、白目をむいて倒れちゃったんだよ。里奈、すごく心配したんだから」
香我美聡子「大丈夫よ」
「私いったい、どうしちゃったのかしら?」
〇おしゃれな居間
「お待たせしました~♪」
香我美時枝「あら・・・」
香我美怜子「すごくいい香り」
香我美聡子「はい! お土産にいただいた鮭とばを使って、炊き込みごはんを作ってみました」
香我美聡子「最初に日本酒で鮭とばをやわらくしておいて、あとは普通に炊飯するだけですごくおいしい炊き込みごはんができるんです」
香我美聡子「お好みですけど、白ごまと青じそをたっぷり乗せるとおいしさ、アップ!」
〇渋谷駅前
「あなたにとって、主婦の鏡はどんな人ですか?」
「う~んストレスフルな毎日を、異世界に入り込むことで、なんとか現実との折り合いをつけて、毎日がんばっているヒト、ですかね」
「は? 異世界・・・ですか?」
「あ、もしかして私、勘違いしちゃったかしら」
香我美聡子「私、香我美って苗字なんです 主婦の香我美」
いじめられっぷりが面白い! いじめからの反撃……楽しみにしています。
こんにちは!とっても、とても面白かったです!
最初のイビリシーンにはイライラが溜まっていき、最後はすっきりとした感覚とインタビューの繋がり方がとても綺麗でした!あと、鮭とばの効率的な使用方法を知ったので家でやってみようと思います😂👍匂いがきついし余る、というワードとてもリアルで主婦の共感ポイントが沢山あると感じました!
見ていて陰鬱となりそうな、テンプレ通りの姑いびり、モラハラ、精神的DVが続いたのにもかかわらず、読了後は何故かスッキリ笑顔に。新感覚のステキな展開ですね!