お局バンド、結成!

阿左見柚奈

#1 私って、お局ですか?(脚本)

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阿左見柚奈

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〇オフィスのフロア
女性社員「本日付で寿退社させていただきます。今までお世話になりました」
営業部長「おめでとう! お幸せにね!」
綾香「・・・はぁ」
  部内が温かい拍手で包まれる中、水森綾香(みずもりあやか)はこっそりと溜息を吐いた。
  後ろの席では、後輩たちがヒソヒソと噂話をしていた。
後輩A「あの子、この間新卒で入った子だよね? 結婚早くない? 三十路ギリギリで結婚の気配ゼロの人もいるのに」
後輩B「あー・・・綾香先輩のこと?」
後輩A「ヤバいよね。アラサーでお局で地味な上に男っ気ゼロ。マジ反面教師だわー」
後輩B「優しくて良い人なんだけどねえ」
後輩A「あ、それよりもさあ、部長の不倫の噂聞いた!? これもかなりヤバくてー」
後輩B「知ってる! あの髪の長い受付の人だよね?」
綾香(・・・もう、噂話なら、人のいない所でしてよね)
綾香(それに、男っ気ゼロなんて、勝手に決めつけないでよ・・・。 私だって結婚間近の彼氏がいるんだから!)
綾香(・・・っていうか、私ってお局なの!?)

〇オフィスのフロア
綾香(さて、お昼になったし、経理部に行ってひかる先輩誘ってこよっと・・・)

〇オフィスのフロア
綾香「ひかる先ぱ──」
ひかる「ちょっと、何回言ったら分かるの!?」
綾香(ひえっ!?)
恵奈「す、すみません・・・!」
ひかる「ここの計算は気をつけて って、いつも言ってるわよね!? しっかり見直して!」
綾香(ビックリした・・・ひかる先輩ってば、また後輩の子、叱ってたんだ)
綾香(それにしても、相変わらず言い方キツイな~)
綾香(あの子泣きそうだし、もっと優しく言ってあげた方がいいんじゃないかな)
ひかる「あ、綾香。今日も社食よね。ちょっと待ってて。すぐに準備するから」
綾香「あ、はい・・・」
  ひかるはデスクを後にして、更衣室へ向かった。
真希「なにあのお局。超最悪じゃん。 恵奈、あんなの気にすることないよ!」
恵奈「う、うん・・・」
綾香(・・・ひかる先輩、やっぱり経理部の後輩達からかなり嫌われてるみたい)
綾香(言い方キツイけど、頼りになるし悪い人じゃないんだけどなあ・・・)
綾香(ひかる先輩の良さ、あの子達にも伝わればいいんだけど・・・)
綾香(でも、あんなキツイ態度じゃなあ・・・)

〇警察署の食堂
ひかる「ふう・・・ごちそうさま」
綾香「ひかる先輩のお弁当って、いつも美味しそうですよね。 朝起きるの大変じゃないです?」
ひかる「そうねえ。大変だけど、お金貯めたいからね。老後とか・・・やっぱり不安だもの」
綾香「私も・・・早く結婚資金を貯めたいから、お弁当にしようかなあ・・・」
綾香「哲也・・・彼氏も頑張ってはくれてるみたいなんですけど・・・」
綾香(・・・そう言えば、哲也からLAINの返事来たかな?)
綾香(・・・って、また既読無視。最近多いなあ)
ひかる「そう言えば、また営業部の子、辞めたんだって?」
綾香「あ、はい。この間入社した子だったんですけど、大学時代の彼と結婚するそうで」
ひかる「そう・・・まあ、それなら引継ぎも少なくて済むし、良いんじゃない?」
綾香「ふふ。先輩らしい合理的な考えですね」
ひかる「経理部もさあ、最近多いのよね、寿退社や産休に育休」
ひかる「別に結婚願望あるわけじゃないけど、さすがに年下の子ばかりそうなっちゃうとさあ・・・」
綾香「分かります・・・。結局、私達みたいに長く働いてる人間がどんどん残っていって・・・なんか、気まずいですよね」
ひかる「そういう空気あるわよね。 古参は去れ・・・みたいな」
ひかる「まあ、そんな空気、とっくに慣れちゃったけど」
綾香「あはは・・・」
ひかる「あーあ。宝くじでも当たらないかしら。 少しでも貯金増やしたいわ」
ひかる「なんかもう、見えない霧の中にいるって言うか・・・はっきりしないけど、毎日不安なのよね。うまく言えないけどさ・・・」
綾香「・・・私もです」
ひかる「綾香はまだいいわよ。結婚前提の彼氏いるんでしょ?」
綾香「でも・・・なんだか最近、既読無視が多いんですよね」
綾香「マンネリな上に・・・なんか避けられてて・・・」
綾香「もしかして・・・もうダメなのかも・・・」
ひかる「ちょ、大丈夫だって! 彼氏も頑張って、結婚資金を貯めてくれてるんでしょ?」
綾香「でも・・・」
ひかる「あ、そうだ! この占いのサイト、すっごく当たるんだって。ちょっと占ってみたら?」
  そう言って、ひかるは自分のスマホの画面を綾香に見せた。
  スマホの画面には可愛らしい配色の占いサイトが表示されている。
  しかし、綾香の目に留まったのは──
綾香「・・・賞金300万円!?」
ひかる「・・・は?」
綾香「ひかる先輩! これ見てくださいっ!」
ひかる「これって・・・ああ、サイトに表示されてる広告のバナーね」
ひかる「えーっと『アマチュアバンドコンテスト参加者募集中! 賞金300万円』・・・?」
ひかる「・・・これがどうかしたわけ?」
綾香「ですから、これに参加しましょうよ!」
ひかる「はあ!?」
綾香「だって、賞金300万円ですよ!」
綾香「それに、ひかる先輩、大学時代は有名なドラマーだったんでしょ!?」
ひかる「ちょ、それ会社で言わないでって!」
綾香「あ、すみません・・・」
ひかる「そんなの昔の話よ。いまさら、コンテストで優勝なんて・・・」
綾香「そんなこと・・・!」
ひかる「大体、綾香は何か楽器できるの?」
綾香「ふふふ。実は、昔の彼氏の影響でちょっとギターをかじってるんです」
綾香「今から練習もしますし、バッチリ 決めてみせますよ!」
ひかる「そうは言っても──」
綾香「それに、丁度趣味とか始めたいって、思ってたんですよね」
綾香「ひかる先輩と一緒なら、絶対に楽しいと思いますし♪」
ひかる「・・・そ、そう?」
綾香「はい! コンテストだってひかる先輩がいたら鬼に金棒! 獅子にひれ! 優勝だって夢じゃないはずです!」
ひかる「もう・・・」
ひかる「まあ、優勝できるかどうかは分からないけど、バンド自体は面白いかも・・・ね」
綾香「・・・! それじゃあ!」
ひかる「普段はあんま主張しない綾香が珍しく粘ったわけだし、まあ、付き合ってあげるわ」
綾香「やった! バンド結成ですね!」
カヲリ「面白そう~♪ アタシもまーぜて☆」
綾香「え・・・?」
ひかる「あら、カヲリじゃない。あんたが社食に来るなんて、珍しいわね」
カヲリ「ちょっとウザイ社員がいてね~。巻いてきちゃった☆」
綾香(わあ・・・綺麗な人・・・! 髪も綺麗なウェーブで素敵・・・)
ひかる「綾香、この子、私の同期で受付してる福山カヲリ(ふくやまかをり)」
カヲリ「よっろしく~♪」
綾香(受付・・・え、もしかしてこの人・・・!?)

〇オフィスのフロア
後輩A「あ、それよりもさあ、部長の不倫の噂聞いた!? これもかなりヤバくてー」
後輩B「知ってる! あの髪の長い受付の人だよね?」

〇警察署の食堂
綾香(この人が、営業部長と不倫してるって噂の・・・!?)

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