第6話(脚本)
〇ファミリーレストランの店内
愛川菜々美「レズビアン・・・?」
愛城しずく「はい、私女の人が好きなんです」
愛城しずく「・・・これで私も愛川さんに弱みを握られました」
愛川菜々美「え?」
愛城しずく「これでお互い秘密を口外できなくなっちゃいましたね」
愛川菜々美「愛城さん・・・どうして?」
愛城しずく「私、愛川さんを支えたいんです」
愛川菜々美「!」
愛城しずく「でも、そのためには私を全部さらけ出さないといけなかったから」
愛城しずく「嫌われることも覚悟で、話したんです」
愛城しずく「キャバクラの件は勿論誰にも話しません そしてストーカー紛いの行為をしてしまった件も本当にすみませんでした」
愛城しずく「もう金輪際話しかけるなと言うならそれでも構いません でも、私愛川さんの支えになってあげたいんです!」
愛城しずく「だから、怖くてもこの気持ちを絶対伝えなくちゃって思ってて・・・」
愛城しずく「だから、だから・・・えっと・・・」
愛川菜々美「十分伝わりましたよ、愛城さんの気持ち」
愛城しずく「じゃあ・・・!」
愛川菜々美「でもいいんですか? 愛城さんに苦労を掛けさせてしまうかもしれないのに・・・」
愛城しずく「何言ってるんですか! 苦労を掛けさせてほしいんです」
愛川菜々美「苦労を掛けさせてほしい?」
愛城しずく「はい、正直私、キャバクラの件がなかったらここまでの気持ちにはなってなかったと思います」
愛川菜々美「それはどうゆう・・・」
愛城しずく「あの時、愛川さんは私を無視することだって出来たはずです」
愛城しずく「むしろキャバクラの仕事を隠したいなら、私を助けないのが当たり前だった」
愛川菜々美「それは・・・」
愛城しずく「でも、私の無事を選んでくれたんですよね 例えリスクを冒しても」
愛城しずく「だからあの後思ったんです そこまでされて気持ちを伝えない理由がないって」
愛城しずく「あの時の愛川さん、最高にカッコよかったから」
愛川菜々美「愛城さん・・・」
愛川菜々美「・・・わかりました 支えてほしいだなんてそこまで贅沢なことをお願いするつもりはありませんが」
愛川菜々美「寄り添っていただけると、助かります」
愛城しずく「やった!」
愛川菜々美「でも、愛城さんの気持ちに応えられるかはわかりません 私は、人を愛せないのかもしれないから」
愛城しずく「それは分かってます それでも、私が愛川さんを支えたいんです」
愛城しずく「これはただの私のワガママなので」
愛川菜々美「ワガママ・・・」
愛城しずく「はい、もっと自分にワガママに生きましょう愛城さん! 私はそれで最近気持ちが明るくなった気がします」
愛川菜々美「自分の我儘を? 私にはそんなこと・・・」
愛城しずく「私には言ってください! 支えるっていうのはそうゆうことです」
愛川菜々美「いいんですか? そんな・・・」
愛城しずく「私がそうしたいんです」
愛城しずく「私は本気ですよ だから・・・」
愛城しずく「今度のお休み、私と過ごす時間をいただけますか? 今週はお料理ではなく、私とお出かけしましょう」
愛川菜々美「おでかけ?」
〇水族館前
週末
愛城しずく「あ、愛川さん こっちです!」
愛川菜々美「愛城さん、こんにちは 時間が欲しいということでしたが、水族館でしたか」
愛城しずく「はい、偶に来るんですよ」
愛城しずく「入りましょ チケット買ってあるので」
愛川菜々美「あ、そうしたらチケット代を」
愛城しずく「大丈夫です 私年パスを持ってて無料なので自分の分のチケットを買ったってことで」
愛川菜々美「いえ、そうゆうわけには」
愛城しずく「ほら、早く早く」
愛川菜々美「あ、ちょっと愛城さんっ」
〇水中トンネル
愛川菜々美(結局チケット代の件はうやむやにされて連れてこられてしまったが)
愛城しずく「どうですか、愛城さん?」
愛川菜々美「とても・・・綺麗ですね」
愛城しずく「ですよねっ このトンネルを通ってると海の中にいるみたいな気分になれて心がスッと軽くなるんです」
愛川菜々美「確かに・・・そんな気がしてきます」
愛城しずく「はい、だから気分が落ち込んだときとかによくここに来るんです 自分も魚になった気になれるから」
愛城しずく「でもお気に入りの場所はここじゃないんです 向こうに行きましょう」
〇大水槽の前
愛城しずく「ここが私のお気に入りの場所です」
愛川菜々美「わぁ、とても大きな水槽ですね」
愛城しずく「はい、クジラやエイが見れます でも私がここがお気に入りな理由は別にあって・・・」
愛城しずく「ここはベンチがあるからゆっくり座って水槽を見られるんですよ」
愛川菜々美「なるほど、そうゆう」
愛城しずく「というわけで座りましょう、愛川さん」
愛川菜々美「はい」
愛城しずく「何もかもが嫌だ―ってなって落ち込んだときはここで一日中ボーっとするんです」
愛城しずく「この中で泳いでいる魚たちと一緒に心を泳がせて何も考えずにいる」
愛城しずく「そうすると心が穏やかになって嫌な気持ちもどこかに飛んでいくんです」
愛城しずく「愛川さん、いつも気を張っているかと思うのでそうゆう時間も必要かなって」
愛川菜々美「愛城さん・・・」
愛城しずく「だから、ボーっとしましょう ここで」
愛川菜々美「それはいいかもしれませんが、愛城さんは退屈になりませんか?」
愛城しずく「いえ、私も一緒にボーっとします それに──」
愛城しずく「手を握ってますから、急にいなくなることもありませんよ」
愛川菜々美「な、なるほど」
愛城しずく「ごめんなさい、急に手を繋ぐのは嫌でしたか?」
愛川菜々美「いえ、ちょっと驚いただけで」
愛川菜々美「むしろ少し安心します」
愛城しずく「なら、よかったです」
愛城しずく(私は胸の鼓動が早くなるのが止められない)
愛城しずく(愛川さんの手は細くて、しなやかで、でも触っていると傷だらけなのがわかる)
愛城しずく(カッコよくて、強く見えるのに・・・きっとこの手は愛川さんの内側なんだ 誰にも弱音を吐けずに強がってきた、愛川さんの)
愛城しずく(だから、私が守ってあげなくちゃ)
愛城しずく(せめて今だけは癒されてください ゆっくりとたゆたう揺り籠のような水槽を眺めながら)
それから私たちはどれくらい手を握りながら座っていただろう
時間にしてみれば大したことなかったかもしれない
でも、時折見る愛川さんの顔は確かに穏やかだった
いつものクールな愛川さんとは違う、柔らかな、表情
次はあの場所へ連れて行ってあげよう
そうしたらまた愛川さんの新しい一面を引き出せるかもしれない
そうワクワクしていたんだ
あの瞬間までは
愛川菜々美「あっ・・・」
しずくさんが一歩前に踏み出したことで、2人の関係性が大きく動きましたね。こうして素敵な関係性を構築かと思いきや、またまたお話が動きそうですね