男爵令嬢モブリーナ・モブリンの受難

はやまさくら

公子ロランス君(脚本)

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〇華やかな裏庭
  長旅の疲れもあって、
  どうやら私は
  少し眠ってしまったようです。
モブリーナ「Zzz・・・Zzz・・・」
  そのぼやけた頭を現実に引き戻したのは、小さな子供の楽しげな笑い声でした。
ロランス「お姉さんは今、おしごと中?」
モブリーナ「いいえ、ここで少し休憩しているところよ」
ロランス「だったら、ぼくと遊ぼうよ。 みんな遊んでくれなくて、つまんないんだ」
モブリーナ(あら、可愛い子ね。 舌っ足らずな口調からすると、 年は3~4歳くらいかしら)
モブリーナ「いいわよ、お姉さんが遊んであげる。 何しようか?」
ロランス「かくれんぼがいい!」
モブリーナ「では、私が鬼をするから、 坊やは隠れてね」
ロランス「分かった!」
  男の子にとっては
  文字どおり自分の庭ですが、
  私には馴染みのない場所です。
  彼を見失ったらどうしましょう?
  少々危惧しましたが、所詮は子供の足。
  男の子はそう遠くへは行きませんでした。
モブリーナ「見つけましたわ」
ロランス「うう、見つかっちゃった。 じゃあ、次の場所に隠れるね」
  そう言いながら
  勢いよく飛び出していった彼は、
  東屋の前で誰かとぶつかり、
  尻餅をついてしまいました。
ロランス「いたたた・・・。 もう、アシュリー! 何でそんなところに突っ立ってるの!」
アシュリー「それはわたしの台詞です」
アシュリー「ロランス様、何故このような所に いらっしゃるのですか。 今はまだお勉強の時間でしょう?」
ロランス「もう飽きたよ~」
ロランス「それよりもさ、 アシュリーも一緒にかくれんぼしようよ! ぼく、アシュリーと遊びたい」
アシュリー「・・・申し訳ありません、ロランス様。 勤務時間中ですので、 わたしはお相手できません」
ロランス「つまんない~! じゃあ、さっきのお姉さんに 遊んでもらうね」
アシュリー「もしかして、モブリーナ様が ロランス様のお相手を してくださったのですか?」
モブリーナ「ええ、大したことはしておりませんが」
モブリーナ「それよりもすみません。 まさかお勉強の時間だとは 知らなくて・・・」
アシュリー「いえいえ、 モブリーナ様は何も悪くありません。 悪いのはこのイタズラ坊主です」
アシュリー「ロランス様が脱走することで、 これだけの人間が振り回されるのです。 もっとご自分の立場をよくお考えください」
ロランス「・・・ごめんなさい」
アシュリー「仕事が片付いたら、遊んで差し上げます。ですから、いい子にして 待っていてください」
ロランス「本当? 約束だよ?」
使用人「・・・では、ぼっちゃま。 屋敷に戻りましょう」
ロランス「はーい」
モブリーナ「利発で可愛らしい男の子ですね」
アシュリー「ありがとうございます。 そう言って頂けて、 公爵殿下もお喜びになると思います」
モブリーナ「・・・あの、公爵様とロランス君は 一体どのようなご関係なのですか?」
アシュリー「ロランス様は公爵殿下のお子様です」
アシュリー「・・・もしかして ご存じなかったのですか?」
モブリーナ「私、何も聞いておりませんが・・・」
アシュリー「そうなのですね・・・」
アシュリー「ロランス様は婚外子ですが 正式に認知されており、 後継者として目されております」
アシュリー「・・・ですから 殿下とご結婚される方には、 彼の母親になって頂きたいのです」
モブリーナ(なるほど、そういうことでしたか)
  上級貴族の家に生まれた
  深窓の令嬢たちにとって、
  突然一児の母になるという状況は
  耐えがたいものでしょう。
  それで上級貴族の令嬢たちは皆、
  この縁談を断ったのですね。
  それでもアルファの妻となるのは、
  オメガと決まっております。
  上級貴族たちから縁談を断られた結果、
  本来は王族と婚姻を結べるような
  立場ではない私にまで
  お声が掛かったのですね。
アシュリー「モブリーナ様はいかがでしょうか。 あの子の母親になる覚悟はおありですか?」
モブリーナ「ロランス君は可愛いし、 弟たちの世話をしてきたから 子供の世話には慣れているつもりです」
モブリーナ「母親になる、ということ自体には そこまで抵抗感はないかしら?」
モブリーナ「でも、私は公爵様のことを 何も知らないし、 公爵様だって私のことを知りません」
モブリーナ「だから現段階で「母親になる」とは 安直に答えられませんわ」
アシュリー「ロランス様を受け入れてくだって、 ありがとうございます」

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