男爵令嬢モブリーナ・モブリンの受難

はやまさくら

公爵家の家令(脚本)

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〇ヨーロッパの街並み
  王都を出発し、馬車に揺られること5日。
  ようやく私たちは公爵領へと
  足を踏み入れることができました。
モブリン男爵「すっかり復興しているな。 住民の表情も明るいし、 あの戦乱があったとは思えない」
モブリーナ「公爵領は7年前に勃発した内乱により、 領土は荒廃し、多数の領民が流出したと 聞き及んでおりましたが・・・」
モブリン男爵「ああ、そのとおり」
モブリン男爵「レイノルズ公爵領は元々国王陛下の弟君、 つまりウィレム殿下の叔父にあたる人物が 治めていた土地なんだ」
モブリン男爵「温暖な気候と資源に恵まれた 豊かな土地で、 大変な権勢を誇っていたんだが・・・」
モブリン男爵「七年前、その絶大な権力と財力に奢った 王弟殿下が突如王国からの独立を宣言し、 内乱が勃発したんだよ」
モブリン男爵「そして二年に渡る戦争の後、 国王軍が勝利し、 王弟殿下は処刑された、というわけだ」
モブリーナ「街並みや人々の表情からは、 そのような気配は 微塵も感じられないわね」
モブリン男爵「新たに統治者となったウィレム殿下が、 復興のために尽力した結果なんだろうね」

〇立派な洋館
  6日目にようやく私たちは、
  公爵様が住むお屋敷へと
  到着いたしました。
  戦乱によって焼け落ちた居城を
  再建したもので、
  優雅さと堅牢さを兼ね揃えた
  実用的な造りになっております。
  王都に立ち並ぶ貴族の屋敷とは違い、
  質実剛健という言葉が似合う佇まいです。
アシュリー「お待ちしておりました。 遠路はるばるお越しくださいまして、 誠にありがとうございます」
モブリーナ「あら、公爵様はいずこに・・・?」
  キョロキョロと周囲を見回しましたが、
  玄関ホールに魔法絵で垣間見た
  殿下の姿はございません。
モブリーナ「あなたは、どちら様でしょうか?」
アシュリー「失礼いたしました。 わたしはアシュリーと申します。 レイノルズ公にお仕えする家令です」
モブリーナ「よろしくお願いいたします、アシュリー様」
アシュリー「わたしのことは気軽に『アシュリー』と 呼んでください」
アシュリー「滞在中はわたしがお世話をさせて 頂きますので、 よろしくお願いいたします」
アシュリー「では、早速お部屋にご案内いたします」
  彼が一礼すると、
  側に控えていた使用人たちが
  私たちの荷物を手に取りました。
  どうやら部屋まで
  運んでくださるようです。

〇貴族の応接間
アシュリー「どうぞお入りください」
アシュリー「この部屋は、お二人共通のリビングと なっておりまして、 左右に寝室がございます」
アシュリー「浴室もございますので、 ご自由にお使いください」
モブリーナ「なんて素敵なお部屋・・・」
モブリーナ「こんなお部屋に滞在してもよいのかしら? 私たちは貴族とは名ばかりの 貧乏貴族なのに」
アシュリー「モブリン男爵閣下、そしてモブリーナ様は公爵殿下のご家族に なられるかもしれない方々です」
アシュリー「どうかご謙遜なさらず」
モブリーナ「あ、ありがとうございます」
  今までのお見合い相手は、
  下級貴族の私たちのことを見下し、
  それを隠そうともしませんでした。
  王族であるレイノルズ公も同様だろう、
  と内心考えていた私は
  その考えを恥じました。
アシュリー「公爵殿下は領地視察に出ており、 明日お戻りになる予定です」
アシュリー「長い馬車旅でお疲れでしょうから、 本日はよくお休みください」
アシュリー「もし、何かご用命がありましたら、 遠慮なくわたしや屋敷の者に お声掛けください」
アシュリー「では、ごゆるりと」
モブリーナ「あ、あのっ・・・」
アシュリー「はい?」
モブリーナ「お屋敷の庭園が見事だったので、 もっと近くで見てみたいのですが。 よろしいでしょうか?」
アシュリー「かなり広大な庭園ですから、お一人では 迷子になってしまうかもしれません」
アシュリー「もし、よろしければ ご案内いたしましょうか?」
モブリーナ「よいのですか?」
アシュリー「もちろんです」
  家令という立場上、
  アシュリー様も忙しいとは思うのですが、
  その好意に甘えさせていただくことに
  しました。

〇華やかな広場
モブリーナ「これらは何という名のお花ですか?」
アシュリー「こちらの鮮やかな花はキンギョソウで、 その隣の釣り鐘型の花はカンパニュラです」
モブリーナ「では、その奥にある背の高い花は?」

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