サマーデイズ・イリュージョン

篠也マシン

地味な彼女が美少女に変わる時、僕の夏がはじまる(脚本)

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〇空

〇路面電車のホーム

〇路面電車の車内
姫野アキ「ふー、朝から暑うなってきたな」
姫野アキ「ん?」
姫野アキ(あれは──)
姫野アキ(とんでもない美少女がおる)
姫野アキ(同じ制服やけんど、見たことない子やな)
???「姫野くん」
???「おはよ」
姫野アキ(なんで僕の名前を)
姫野アキ「お、おはよ」
???「今日はええ天気やね」
姫野アキ「ほーやな」
姫野アキ(うーん・・・)
姫野アキ(どう考えても初対面や)

〇路面電車
車掌「本町一丁目──」
車掌「本町一丁目です──」

〇路面電車の車内
嶋ユウスケ「おーっす」
???「嶋くん、おはよ」
嶋ユウスケ「おお」
姫野アキ「おい、ユースケ!」
姫野アキ「この美少女を知っとるんか?」
嶋ユウスケ「美少女・・・?」
嶋ユウスケ「何を言うとる」
嶋ユウスケ「クラスメイトの上地やないか」
姫野アキ「は?」

〇教室
  上地ミコ。
  教室では、僕の隣の席に座っている女の子や。
  特徴のない女の子で、陰では『地味子』なんて呼ばれとる。

〇路面電車の車内
姫野アキ(どう見ても上地に見えやんけど──)
姫野アキ「上地・・・?」
???「なによ?」
姫野アキ(な)

〇空
姫野アキ(何がどうなっとるんやー!!)
  夏が始まったばかりのその日。
  隣の席の地味な女の子が──
  とんでもない美少女に変わっていた。

〇田舎の学校

〇学校の屋上
姫野アキ「あれは本当に上地なん?」
嶋ユウスケ「ほーよ」
姫野アキ「とんでもない美少女転校生やなくて?」
嶋ユウスケ「ああ」
嶋ユウスケ「なんや知らんけど、お前にだけ美少女に見えとるようやな」
姫野アキ「一体、どうなっとるんや・・・」
嶋ユウスケ「いつも小説ばっか読んどるけん、頭おかしくなったんと違うか」
姫野アキ「というと?」
嶋ユウスケ「ほら」
嶋ユウスケ「小説とかやと、地味な子が急に美少女に変身したりするやん」
姫野アキ「髪型変えたり、メガネを外したとかでか?」
嶋ユウスケ「そうそう」
姫野アキ「・・・お前から見て、上地に何か変化はあるか?」
嶋ユウスケ「・・・」
嶋ユウスケ「まったくないな」
姫野アキ「おどれ」
姫野アキ「的外れな推理やないか!」
嶋ユウスケ「そんで──」
嶋ユウスケ「いつから美少女に見えるようになったんよ?」
姫野アキ「今朝会った時や」
嶋ユウスケ「今日は月曜やけん──前回会ったのは金曜日か」
嶋ユウスケ「その時は、何の変わりもなかったんよな?」
姫野アキ「ああ、普通やったよ」
嶋ユウスケ「土日の間に何かあったのか・・・」
姫野アキ「そういや──」
嶋ユウスケ「お、心当たりがあるんか?」
姫野アキ「土曜日、偶然上地に会ったんよ」
嶋ユウスケ「おお!」
嶋ユウスケ「そこで何かあったん違うか」
姫野アキ「いや」
姫野アキ「大したことはなかったで」
姫野アキ「その日、本を借りようと図書館に行ったんやけんど──」

〇児童養護施設

〇綺麗な図書館
  僕がとある本に手を伸ばした時やった。
  同じ本に手を伸ばす子がおったんよ。
姫野アキ「あ、上地」
上地ミコ「姫野くん」
姫野アキ「・・・」
姫野アキ「ほれ」
姫野アキ「僕は他に読みたい本があるから」
上地ミコ「え!」
上地ミコ「けんど・・・」
姫野アキ「気にせんでええよ」
上地ミコ「ほやけど・・・」
姫野アキ「かまんかまん」
上地ミコ「・・・」
上地ミコ「姫野くんは甘い物は好きやっけ?」
姫野アキ「まあ」

〇公園のベンチ
上地ミコ「どうぞ、召し上がれ」
姫野アキ「いただきまーす」
姫野アキ「おお! めっちゃうまい」
上地ミコ「それなら良かった」
上地ミコ「私、本が好きやけん、休日は図書館で過ごすことが多いんよ」
上地ミコ「お腹空いた時に備え、よくお菓子を作るんよね」
姫野アキ「ほーなん」
姫野アキ(何だか、本借りるより得した気分や)
上地ミコ「上地くんもこのシリーズが好きなん?」
姫野アキ「そうなんよ!」
姫野アキ「最近異世界モノが流行ってるけんど、元を辿ればこのシリーズが──」

〇学校の屋上
姫野アキ「──で、上地と本談義で盛り上がってな」
嶋ユウスケ「しばらく話して、解散したと?」
姫野アキ「いや、まだ終わりやないんよ」
姫野アキ「その後──」

〇公園のベンチ
姫野アキ「お、野良猫や」
上地ミコ「こっちきー」
上地ミコ「あれ?」
上地ミコ「この子、首輪ついとうよ」
姫野アキ「ほんまや」
姫野アキ「でも飼い主は──」
姫野アキ「見当たらんな」
(もしかして・・・)
「迷子!?」
姫野アキ「首輪に住所とかは書いてないな」
上地ミコ「・・・」
上地ミコ「私、飼い主を探してくる!」
姫野アキ「え」
姫野アキ「でも、何の情報もないよ」
上地ミコ「毛並みは綺麗やし、お腹も空いてなさそうやし──」
上地ミコ「きっと近くの家の子よ」
姫野アキ「よし──」
姫野アキ「僕も手伝うよ」
上地ミコ「・・・」
上地ミコ「ありがとう」

〇線路沿いの道

〇ゆるやかな坂道

〇公園のベンチ
姫野アキ「全然見つからんな」
上地ミコ「うん・・・」
姫野アキ「交番にでも行ってみよか」
姫野アキ「迷子の届が出とるかもしれんし」
上地ミコ「ほーやね」
姫野アキ「・・・ん?」
姫野アキ「なあ、よー見たら首輪になんかついとるな」
上地ミコ「それ、もしかして!」
  カプセルを割ると中から出てきたのは──
姫野アキ「飼い主の連絡先・・・」
「ぷ」
「あははは!」
姫野アキ「おっと、笑っとる場合やないな」
姫野アキ「早く連絡しんと!」
上地ミコ「うん!」

〇路面電車のホーム

〇高級住宅街

〇川沿いの道
姫野アキ「今日は面白かったな」
上地ミコ「ほーやね」
上地ミコ「なんだか、本を読んでる時みたいにドキドキやった」
姫野アキ「言えとる」
上地ミコ「・・・」
上地ミコ「姫野くん」
上地ミコ「今日はありがとう」
上地ミコ「私の家はこっちやけん」
上地ミコ「また学校でな」
姫野アキ「おう、気をつけてな」
  その時、僕の目には──
  上地ミコが、これまでと別の女の子に見えた気がした。

〇田舎の学校

〇学校の屋上
姫野アキ「──ってことがあったんよ」
嶋ユウスケ「・・・」
姫野アキ「上地のやつ、料理はうまいし優しい性格でな」
姫野アキ「話してみると、めっちゃええ子やったわ」
嶋ユウスケ「ふうん」
嶋ユウスケ「それで──」
嶋ユウスケ「アキには、上地がどれくらい美少女に見えとるん?」
姫野アキ「というと?」
嶋ユウスケ「例えば──」
嶋ユウスケ「ここから見える女子と上地を比べたら、どっちが可愛いんや?」

〇グラウンドのトラック

〇学校の駐輪場

〇学校の屋上
姫野アキ「──上地の方が可愛いな」
嶋ユウスケ「じゃあ──」
嶋ユウスケ「このアイドルと比べてどうや?」
姫野アキ「上地やな」
嶋ユウスケ「この女優とは?」
姫野アキ「上地」
嶋ユウスケ「・・・そういうことか」
姫野アキ「お!」
姫野アキ「なんか分かったんか!?」
嶋ユウスケ「ああ」
嶋ユウスケ「アキには、上地ミコが誰よりも可愛く見えるようやな」
姫野アキ「そうかもしれん」
嶋ユウスケ「とある女の子が、誰よりも可愛く見える理由──」
嶋ユウスケ「それは、ひとつしかないやろ」
姫野アキ「・・・」
姫野アキ「いやいや!」
姫野アキ「そんなわけないって!」
姫野アキ「僕は地味な子より、可愛い子が好みやし」
嶋ユウスケ「へえ」
嶋ユウスケ「でも──」
嶋ユウスケ「可愛く見えとるんやろ?」
姫野アキ「・・・」
姫野アキ「そうや!」
姫野アキ「これはきっと幻に違いない!」
嶋ユウスケ「幻・・・?」
姫野アキ「最近、急に暑くなってきたけん」
姫野アキ「頭がぼーっとして、おかしなものを見せとるんよ」
嶋ユウスケ「そうかもしれんな」
姫野アキ「ほーやろ?」
姫野アキ「こんな幻・・・暑さと一緒にすぐ消えてしまうわ」
嶋ユウスケ「そうかもしれんな」
嶋ユウスケ「・・・」
嶋ユウスケ「ただ、ひとつ言えることがあるで」

〇空
嶋ユウスケ「夏は──」
嶋ユウスケ「まだ、はじまったばかりや」

〇空

〇路面電車のホーム

〇路面電車の車内
姫野アキ「ふー、さらに暑うなったな」
上地ミコ(?)「姫野くん、おはよ」
姫野アキ(上地・・・?)
姫野アキ「お、おはよ」
  僕はまだ──
  彼女が上地ミコだと確信できていない。
上地ミコ(?)「あの本、読み終わったけん」
上地ミコ(?)「次、貸したげるよー」
姫野アキ「ああ」
姫野アキ「ありがとう」
  けど・・・
  ひとつだけ確かなことがある。
  僕の隣に座っている女の子は──

コメント

  • 夏の眩い光で青春の1ページを印画紙に焼き付けたかのような鮮やかさ…!😆美少女に見える理由ズバリを明言しないのも爽やかですね✨
    松山ですか…路面電車があるのは高知か愛媛かな?と思いながら読んでました
    一時期なぜか友人が四国出身者だらけだったので、「ほうよ」や「やけん」など懐かしい響きでした 笑
    さすがのシングルコラボ、エンドロールの圧倒的同名率はドラえもんの「アニメーカー」の回を思い出しました 笑

  • うわあ、甘酸っぱいですね。
    エンドロールに入るタイミングとBGMが鳥肌ものでした。こういうスチルの使い方もあるのですね。
    図書館での異世界転移の原典はゼ○の使い魔かなとか小ネタも楽しめました。

  • 甘酸っぱい青春!
    こんなんときめきが止まらない🥰
    さわやかな青春の1ページの映画を観ているような気分になりました。
    いや、まじでこれ実写化できそうなのでは?🤔

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