DAY4:好きな人(脚本)
〇学校の校舎
――昼休み
〇教室
吉沢美森「梨々花、お昼食べよ! うわ~今日もお弁当おいしそう」
吉沢美森「すごいなぁ、毎日自分で作ってるなんて しかもお姉さんの分も」
吉沢美森「家事もぜーんぶやってるんでしょ? あたしには絶対ムリ! うちのママによく言われるよ 少しはアンタも見習いなさい!って」
吉沢美森「自分だって家事得意じゃないのにサ 今日だってごはんの水加減間違えて コンビニ弁当だし」
三澤梨々花「そんなことないよ だいたい夕飯の残り詰めてるだけだもん」
三澤梨々花「それにうちは両親いないから なるべく節約しないと、と思って」
貴島里見「わ、三澤ちゃんのお弁当うまそー ねえ、その卵焼き一つもらっていい?」
三澤梨々花「これでよかったらどうぞ」
貴島里見「うまーー! しかもチーズ入ってて濃厚!」
三澤梨々花「そう? よかった! コンソメ風味にしてみたんだ」
貴島里見「今まで甘い卵焼きしか食べたことなかったけど、しょっぱいのもいいね! 三澤ちゃん、いいお嫁さんになるよ~」
三澤梨々花「卵焼きで大げさだなぁ」
貴島里見「そんなことない! オレは嫁さんに欲しいもん! わりとマジメに」
三澤梨々花「へっ?」
貴島里見「ま、そういうことだから♪ 頭の片隅にとめといてね じゃ、食堂行ってくるわ~」
吉沢美森「何、あいつ 軽く告っていったわね」
三澤梨々花「あはは、あんなの冗談だよ だって里見くんだよ?」
吉沢美森「・・・梨々花 あんた本当に気づいてないの?」
吉沢美森「・・・いや、なんでもないわ 梨々花はそういう感覚おこちゃまだしな~」
三澤梨々花「ええ? なんの話?」
吉沢美森「恋愛オンチってこと! あんた、ほんとに今まで誰も好きになったことないの?」
吉沢美森「モテるじゃん、たまに告されてるし・・・ 全部断ってるのって、好きな人いるからじゃないの?」
三澤梨々花「い、いないよ💦 みんなで一緒にいるほうが私は楽しいし」
吉沢美森「え~カレシいたほうが楽しいでしょ! あたしたちコ―コーセーだよ!? 誰かの『特別」になりたい、とか 思ったりしないの?」
三澤梨々花「よくわからないから・・・そういうのはいいかな」
三澤梨々花「今のままが私には一番楽しいし、何も変わらないほうが安心する」
三澤梨々花「それより 美森は好きな人がいるの? そういえば聞いたことないけど」
吉沢美森「あ、あたしは・・・別に 今はテニスに集中したいし」
三澤梨々花「そうなんだ」
吉沢美森「そうそう! アホの里見とか、練習しない一年とか 問題だらけでそんなヒマないしね!」
三澤梨々花「私は里見くんと美森、お似合いだと思う 『ケンカするほど仲がいい』って 二人にはぴったりだよね」
吉沢美森「なななな何言ってるのよ! あんなテキトーなヤツ、冗談じゃない! アレだったら上杉のほうがマシよ!」
三澤梨々花「マシって・・・睦くんもファン多いのに💦 ていうか美森、声大きい! みんな見てるよ」
吉沢美森「おっと! ご、ごめん 里見の顔思い浮かべたら ムカッときてつい・・・・・・」
吉沢美森「そういえば例のホラー作家はどうなの? イケメンなんでしょ? 彼女とかいるわけ?」
三澤梨々花「えっ? うーん、業務連絡だけでほとんど話はしないからわからないなぁ」
三澤梨々花(そういえば先生って恋人いないのかな? 顔だけならモテそうな気がするけど)
吉沢美森「もしかしたら、忘れられない元カノとかいたりしてね はるか様の小説みたいに♪」
三澤梨々花(は、はるか様!?)
吉沢美森「『カーディナル(情熱)』はね 主人公の男子大学生と自由奔放な幼なじみの女の子の話なの」
吉沢美森「彼女のせいで二人はつきあったり別れたりを繰り返してて、主人公は毎回うんざりして離れようとするんだけど」
吉沢美森「彼女のピンチには颯爽と現れて救うの! で、またすれ違って別れてってループなんだけど」
吉沢美森「二人には共通の辛い過去があって だからほんとに分かり合えるのはお互いだけ・・・離れたくても離れられないのー♡」
吉沢美森「そういうの、運命の相手っていうのよね きっと!!」
三澤梨々花「み、美森、どハマリしてるね・・・」
吉沢美森「そのくらい面白いの! それにお互い離れられないっ!みたいな 情熱的な恋してみたいじゃない~♡」
吉沢美森「もしかしたらダイゴロウにも そういう忘れられない恋があったかもよ 今度聞いてみてよ!」
三澤梨々花「う、うん、そうだね・・・ 機会があったら」
三澤梨々花(情熱的な恋・・・ 美森はそういうのに憧れてるんだ)
三澤梨々花(好きになるって、どういう気持ちなんだろう・・・・・・)
三澤梨々花(私も・・・・・・知ること、できるのかな・・・)
〇体育館の裏
里見センパーイ♡
あのっ、帰る前にフォーム見てもらってもいいですか??
貴島里見「お~~いいよ じゃあ、ちょっと待ってて コレ、片してきちゃうから」
やった~~っ♡
ありがとうございます~♡♡
吉沢美森「ーーおっほん」
吉沢美森「あらぁ~~あなたたち 後片付けもせず何してるのかしら~」
あっ! み、美森センパイ!
吉沢美森「後片付けや掃除も大事なトレーニングの一部だって、部長に教わったわよね?」
吉沢美森「わかったら早く持ち場に戻る!!」
吉沢美森「だぁいじょうぶよ♡ フォームの確認ならあたしが後で じっくりたっぷりしてあげるから♡」
は、は~~い💦
吉沢美森「ふんっ!!!」
上杉睦「・・・相変わらずだな、そっちの一年は」
三澤梨々花「はは・・・ 悪い子たちじゃないんだけどね💦」
上杉睦「女子はあんなんだし 男子は男子で、レギュラーの3年は練習サボりがちだし・・・」
上杉睦「もうすぐインターハイ予選もあるってのに 集中できねー」
三澤梨々花「里見くんと睦くんは 一年からレギュラー入りして、去年はインターハイ出場したもんね」
上杉睦「初戦敗退だったけどな 今年はもう少し粘りたいよな」
三澤梨々花「十分すごいけどね! ウチのテニス部では二度目の偉業だったって話だし」
三澤梨々花「今年も行けるよ! 努力してるし、強豪校との練習試合でも負けなしだもん」
三澤梨々花「先輩たちは・・・ ちょっと結果が出ない状態が続いて、やる気低下してるけど・・・」
三澤梨々花「でも今年はユニフォームも新調したし、 私も全力でサポートするから! 頑張ろうね!」
上杉睦「サンキュー」
上杉睦「しっかし暑くなってきたな もう夏か・・・」
三澤梨々花「そうだね。もうすぐ夏服だね」
上杉睦「そういえば三澤は一年中長袖だよな 寒がりなのか?」
三澤梨々花「えっ? あー・・・うん、そうなの けっこう冷え性で・・・💦」
上杉睦「そっか、大変だな」
梨々花センパイ、お疲れ様でーす!
あっ!上杉センパイ〜〜♡♡
また明日〜〜!!
三澤梨々花「お疲れ様 気をつけてね」
上杉睦「あ、ああ・・・おつかれ」
三澤梨々花「ふふ、モテモテだね、睦くん」
上杉睦「ああいうの、マジで苦手・・・ 顔がひきつる」
三澤梨々花「あははっ 里見くんのようにはいかないね!」
上杉睦「あいつのは才能だろ」
上杉睦「毎日、好き好き言われて よくのほほんとしてられるよな 俺なら胸焼け起こす」
三澤梨々花「・・・ねえ、睦くんは好きな人いる?」
上杉睦「え、何いきなり」
三澤梨々花「なんとなく・・・みんないるものなのかなって」
上杉睦「・・・・・・いる、かな。一応」
三澤梨々花「そうなんだ! 好きな人がいるって、毎日楽しい?」
上杉睦「・・・・・・変な質問だな。 まあ、楽しいかな。 三澤は・・・いないの?」
三澤梨々花「うん、そういうの一度もなくて💦 高校生にもなって変だよね」
上杉睦「別に変じゃないだろ 俺だって・・・今回みたいに、いいなって思ったの初めてだし」
上杉睦「みんな貴島みたいに経験豊富じゃねえよ」
三澤梨々花「里見くんはそんなに恋愛経験が!?」
上杉睦「あるだろ 中学の時もとっかえひっかえ女とつきあってたし」
上杉睦「あー・・・じゃあ、三澤は今いないんだ 好きな人」
三澤梨々花「うん、そうだね」
上杉睦「ふーん・・・じゃあさ──」
貴島里見「あっれー? イチジョたちは? 帰っちゃった? なんか言ったんだろ、美森!」
吉沢美森「帰っちゃった? じゃないわよ! ウチの子たちに、手ぇ出さないでくれる? 風紀が乱れるでしょ!」
吉沢美森「こちらにも教育方針があるんですから 邪魔しないで頂きたいわ」
貴島里見「おーコワコワ!」
貴島里見「そんな顔ばっかりしてるから、一年に怖がられるんだよ 鬼軍曹ってさ~!」
吉沢美森「な、なんですってー!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
三澤梨々花「・・・・・・私たちも帰ろっか」
上杉睦「・・・・・・だな」
すごい甘酸っぱい青春回ですね。奥手とか鈍感とか照れが入り乱れる、いかにも高校生という空気で!前回以前の、イケメンにサカるハイジとか、イケメンにサカる乃梨子さんの様子と対照的で、一層ピュアに映りますねw