あなたの特別

羽遊ゆん

4.再会(脚本)

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〇黒
  ― 9年後 ―

〇おしゃれなレストラン
  ― カフェ『ヴェール』 ―
  ― 3月上旬 ―
  ― 琴美 30歳 ―
  琴美は、閉店作業を終わらせて、ドアに鍵をかけた
前嶋琴美「今日も無事に営業終了~!」
前嶋琴美「明日は、いよいよデートかぁ」

〇おしゃれなレストラン
雑誌編集者「──では、ランチ特集の取材はこのくらいで」
前嶋琴美「はい」
雑誌編集者「今日は取材を受けていただいて ありがとうございました」
前嶋琴美「いいえ! こちらこそ ありがとうございました」
雑誌編集者「このカフェは、緑が多くて 癒されるんですよ」
前嶋琴美「そうですか♪」
前嶋琴美「緑に囲まれた空間がコンセプトなので・・・」
前嶋琴美「店名の『ヴェール』は、フランス語で『緑』っていう意味なんです」
雑誌編集者「へぇ、そうでしたか」
前嶋琴美「店長の叔父が観葉植物のレンタル会社を経営していて」
前嶋琴美「そこでレンタルされなくなった植物を、こちらで引き取っているんです」
雑誌編集者「なるほど、それは無駄がなくていいですね」
雑誌編集者「それで、実は・・・ ランチの常連なんですよね、私」
前嶋琴美「え! そうだったんですか!?」
前嶋琴美「私、ランチ時は厨房にいるので 常連さんなのに、気づかずスミマセン」
雑誌編集者「あ! いえ、そんな顔をしないでください」
雑誌編集者「あなたの作る料理が美味しくて、ぜひ取材したいと思ったんです」
前嶋琴美「そうですか、良かった♪」
雑誌編集者「・・・その笑顔」
前嶋琴美「え!?」
雑誌編集者「あ、いや! どんな方が作ってるのか気になって、厨房のほうを見た時に」
雑誌編集者「あなたが笑顔で料理を出しているのを見かけて」
雑誌編集者「ずっと気になっていたんです」
雑誌編集者「・・・えっと、その」
雑誌編集者「よかったら今度、晩御飯でも食べに行きませんか?」
雑誌編集者「これ、私の名刺です」

〇おしゃれなレストラン
前嶋琴美(うふふ♪)
前嶋琴美「ん?」
前嶋琴美「・・・え、嘘」
前嶋琴美(この人もまた・・・ドタキャン)
前嶋琴美「もー・・・なんでだろ?」
熊代真樹(旧姓竜崎)「琴ちゃん、ど~したの~? ため息ついちゃって」
前嶋琴美「・・・真樹さん」
前嶋琴美「・・・デート、ドタキャンです」
熊代真樹(旧姓竜崎)「え、また!?」
熊代真樹(旧姓竜崎)「前に取材で来て、名刺渡してきた常連さんだよね?」
前嶋琴美「はい。 何度かやり取りして・・・」
前嶋琴美「常連さんだし、悪い人じゃなさそうだから、お誘いを受けたんですけど」
前嶋琴美「私、なんにもしてないのに~!」
前嶋琴美「誘ってきて断られる理由がわかんないっ」
熊代真樹(旧姓竜崎)「う~む」
前嶋琴美「真樹さん、ごめんなさい。 もしかしたら、ひとり常連さん減るかも」
熊代真樹(旧姓竜崎)「ああ~! まぁ、今までの経験からだと来なくなるね」
熊代真樹(旧姓竜崎)「でも、大丈夫よ。 最近、取材も増えてるし」
熊代真樹(旧姓竜崎)「新規のお客さんを増やせばいいのよ! 気にしない気にしない♪」
前嶋琴美「・・・はい。頑張りますね、私」
熊代真樹(旧姓竜崎)「琴ちゃんの考えたランチメニュー どれも評判いいよね~♪」
熊代真樹(旧姓竜崎)「琴ちゃんを選んだ私の目に狂いはなかった!」
前嶋琴美「あはは! ありがとう真樹さん」
前嶋琴美「そーだ、4月からのランチ こんな感じにしようと思ってるんですけど」
熊代真樹(旧姓竜崎)「うん♪ いいじゃん! 琴ちゃんって、センスいいよね~♪」
前嶋琴美「良かった! じゃあ、これで進めますね♪」
熊代真樹(旧姓竜崎)「うん、任せた♪」
熊代真樹(旧姓竜崎)「あ、そうそう!」
熊代真樹(旧姓竜崎)「4月からうちの子が保育園に入るから、お迎えで夕方、私いなくなるじゃない?」
前嶋琴美「ええ、そのつもりでいますよ?」
熊代真樹(旧姓竜崎)「ランチ時以外は、忙しくないとはいえ、やっぱ心配でね・・・」
熊代真樹(旧姓竜崎)「ひとりバイトを雇うことにしたから!」
前嶋琴美「ええ!? なにも聞いてませんよ?」
熊代真樹(旧姓竜崎)「その子ね、カフェでバイトの経験もあるし、即戦力になると思うの」
熊代真樹(旧姓竜崎)「早速、明日から来てくれるって!」
熊代真樹(旧姓竜崎)「あ~! もうこんな時間! 琴ちゃん、戸締まりとかお願いね!」
前嶋琴美「あ、はい」
熊代真樹(旧姓竜崎)「お疲れ! また明日ね♪」
前嶋琴美「お疲れさま、です」
前嶋琴美(真樹さん帰るの、はやっ)
前嶋琴美「あ! 明日からのバイトさんの詳細、なんにも聞いてない!」
前嶋琴美「ま、明日聞けばいっか」

〇黒
  ― 翌日 ―

〇おしゃれなレストラン
前嶋琴美(そろそろお客さん、落ち着いてきたなぁ)
前嶋琴美「ん? え、雨!?」

〇古本屋
  琴美はドアを開けて、外の様子を確認した
前嶋琴美「あー、降ってるけど、小雨かぁ もうすぐ止むかな?」
???「きゃぁ~~! 濡れちゃう濡れちゃう!」

〇おしゃれなレストラン
前嶋琴美「どうぞ、中にお入りください」
???「あ、すみません」
前嶋琴美「急に降ってきたんですか?」
???「はい、そうなんです! もう参っちゃう!」
前嶋琴美「そうですか。あ、空いてる席にどうぞ」
???「あ、私バイトの──」
前嶋琴美「あ! 今日からバイトの?」
???「南! ひとりで先に行くんじゃない!」
南「むー! だってしょうがないでしょ! 雨が降ってきちゃったんだから!」
???「あのなぁ、そもそも南は関係ないだろ」
南「関係なくないもーん! 拓(たく)の新しいバイト先、見ときたいもん」
前嶋琴美「あ、あの・・・」
???「あ! すみません! 今日からバイトでお世話になる──」
前嶋琴美「あ! あれ? えっと、バイトさんは、そちらのお嬢さんじゃなくて──」
???「すみません。この子は、勝手についてきてしまって、雨が止んだら帰しますから」
南「ちょっとぉ!」
???「あのさ、こっちは仕事で来てんだから、雨が止むまで、あっちで座ってなよ」
南「むー!」
???「本当に、すみません」
前嶋琴美「いいえ」

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次のエピソード:5.大好きですよ

コメント

  • ドタキャン、どう考えても変ですね。一体どんなからくりが……
    拓海くんとの再会嬉しいですが、この年月で何があったかわからないので少年時のように手放しでテンション上げられない自分がいます。彼もストーカーと紙一重な気がして😂お願い、素敵に育ってて……!

  • たくみくんと再会だぁ〜!💕
    せっかくいい感じだったのに、ドアを叩く邪魔者はもしや……?😂

  • 更新が待ち遠しい〜❣️

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