いじめられっこ、魔王軍に転生する

坂井とーが

15話 トゥルカナの賭け(脚本)

いじめられっこ、魔王軍に転生する

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〇けもの道
トゥルカナ「気づかなければいいものを」
トゥルカナ「きゃっ」
宿利ユウ「どういうつもり? 君はアマデウスさんの友達じゃないの?」
トゥルカナ「・・・キミは何も知らなくていいよ」
宿利ユウ「アマデウスさんは君と敵対することを望んでない!」
宿利ユウ「この森に光を供給できるって、言ってたじゃないか」
宿利ユウ「この魔石をあげる。 だから協力してくれないか?」
トゥルカナ「これはキミの魔石だろう? 簡単にあげるなんて言うものじゃない」
トゥルカナ「それとも魔王軍の者たちは、キミに魔石の意味を教えてくれなかったの?」
宿利ユウ「魔石の、意味?」
トゥルカナ「やっぱり知らないんだね」
トゥルカナ「それはボクたち魔族の通過儀礼だよ」
トゥルカナ「力のある魔族は、幼い頃に魔石の魔獣を倒して、奪った魔石を飲み込むんだ」
トゥルカナ「そうすることで、ステータスは大きく延びる」
宿利ユウ「ステータスが!?」
トゥルカナ「でも、魔石の取り込みに失敗すると、自我を失って魔獣化するんだよね」
トゥルカナ「だから、賭け」
トゥルカナ「誰も教えてくれなかったってことは、キミにはできないって思われたんだろうね」
トゥルカナ「キミは弱そうだし、勇気がなさそうだから」
宿利ユウ「・・・」
  落ち着け。
  僕を動揺させようとしてるんだ・・・

〇大樹の下
リーナ「ユウ、その魔石は大事に持ってて。 いつか、必要になる時が来るまで──」

〇けもの道
宿利ユウ「いつか必要な日が来るって、聞いてた。 僕が弱いからじゃない」
トゥルカナ「ふうん。じゃあ、ボクと賭けをしようよ」
宿利ユウ「賭け?」
トゥルカナ「もしキミが魔石を飲み込んでも自我を保っていられたら、ボクは魔王と同盟を組む」
トゥルカナ「でも、もしダメだったら、ボクの好きにさせてもらうよ」
  人を惑わす森の主(あるじ)・・・
  何をたくらんでいるのだろう?
トゥルカナ「あ、やっぱり怖い?」
トゥルカナ「そうだよねー。キミなんかにできるわけないか」
宿利ユウ「――わかった」
宿利ユウ「賭けに乗る。 僕が勝ったら、味方になってもらうからな」
トゥルカナ「もちろん。約束は必ず守るよ」
トゥルカナ「・・・飲んだね」
宿利ユウ「うっ──」
宿利ユウ「これが、魔石の力・・・?」
トゥルカナ「違うよ。だって魔石はここにあるもん」
宿利ユウ「え!?」
トゥルカナ「キミが飲んだのは、こっち」
トゥルカナ「ゴースト族は眠らないっていうけど、ちゃんと効いてくれてよかったよ」
トゥルカナ「『魔石を飲み込んでも自我を保っていられたら、キミの勝ち』」
トゥルカナ「でも、魔石を飲み込まなかったときのことは、決めてなかったね」
宿利ユウ「く、そ・・・」
トゥルカナ「素直な子を騙すのは心が痛いよ。 でも、無防備なキミが悪いんだからね」

〇雲の上
宿利ユウ「ここはッ──」
トゥルカナ「あ、起きちゃった」
トゥルカナ「暴れないでね。落ちたら死ぬよ」
宿利ユウ「最初から騙すつもりだったんだな!?」
トゥルカナ「当たり前だろう。 ボクの森で魔獣化されたら迷惑だ」
  あっさり信じるなんて、迂闊だった。
  どこへ向かってるんだ・・・?
トゥルカナ「ところでキミ、同じ世界の人間と仲悪いの?」
トゥルカナ「シラサキって勇者が、キミを生贄にできることを喜んでるみたいでさ」
宿利ユウ「白崎が!?」
宿利ユウ「まさか、僕をあいつのところに連れて行くつもりか!?」
トゥルカナ「無駄だよ。もう一度眠らされたい?」
宿利ユウ「くっ」
トゥルカナ「えっと、この辺にアマデウスの転移陣があるはずだから──」
  転移魔法を使われたら、僕の力では戻れなくなる・・・!
トゥルカナ「わっ」
トゥルカナ「・・・バカのひとつ覚えみたいに」
トゥルカナ「そのスキル、攻撃にしか効かないんでしょ?」
  そうだ。反撃レベル6の上昇効果は、『対応可能威力の上昇』だった。
  でも、毎回とは限らないけど、スキルは僕が必要としている能力を与えてくれる。
  信じるんだ。僕の唯一の特技──
  来た・・・!
  『反撃のスキルレベルが上がりました。スキルレベルの上昇効果は、補助技への対応です』
トゥルカナ「きゃあっ」
トゥルカナ「ちょっと、どうするつもり!?」

〇アマゾンの森
  地面に激突すれば死ぬ──
  その直前で、反撃を発動するんだ。
  タイミングを計れ!
  ・・・この高さで、本当にできるのか?
  もし失敗したら・・・
宿利ユウ「うわあっ!」

〇アマゾン川のほとり

〇城壁
ヴィオ「いったい何があったら、ユウが空から落ちてくるのだ?」
ヴィオ「まったく、私が気づかなければどうするつもりだったのか・・・」
ヴィオ「ん? あれは、トゥルカナか?」

〇アマゾンの森
ヴィオ「トゥルカナ」
ヴィオ「貴様、なぜユウの近くにいた? 返答次第では、敵とみなすぞ」
トゥルカナ「ヴィオか。めんどくさいのに見つかったなぁ」
アマデウス「これには理由があるんだ。 お前は城へ帰っていろ」
ヴィオ「・・・」
「わっ!?」
トゥルカナ「危ないな! 本物のアマデウスだったらどうするつもり!?」
ヴィオ「本物の魔王様なら、私の刃など届くはずがなかろう」
トゥルカナ「たいした家臣だ──」
トゥルカナ「あーっ!!」
トゥルカナ「大変! ユウがワニに食べられてる!」
ヴィオ「何!?」
トゥルカナ「隙ありっ!」
ヴィオ「ぬわあああ!」

〇アマゾン川のほとり
宿利ユウ「ヴィオ!?」

〇アマゾンの森
トゥルカナ「やっぱりヴィオって騙されやすいなぁ」
トゥルカナ「・・・あれ?」

〇アマゾンの森
アマデウス「見つけたぞ、トゥルカナ」
トゥルカナ「あ──」
トゥルカナ「あれー、早かったね」
アマデウス「夜が明ければ、幻影の精度は落ちる。 ここまでだ、トゥルカナ」
トゥルカナ「うまくいくと思ったのに・・・」
トゥルカナ「え!?」
トゥルカナ「待って。ボクたち、幼馴染だよね」
トゥルカナ「それにボク、一応幻影の森のお姫様なんだけど──」

〇黒
トゥルカナ「わああああ!」

〇アマゾン川のほとり
宿利ユウ「今のって、トゥルカナ!?」
ヴィオ「そのようだが・・・」
トゥルカナ「ぷはっ」
トゥルカナ「イタタ・・・ あー。アマデウス、怒ってるなぁ」
宿利ユウ「だ、大丈夫なの?」
トゥルカナ「まさか。一撃でHP半分持っていかれた」
トゥルカナ「手加減してこれかぁ。アマデウスが本気出したら、ボクが何人死ぬんだろう?」
アマデウス「ユウ、怪我はないか?」
宿利ユウ「はい、なんとか」

〇湖畔
トゥルカナ「さて」
トゥルカナ「魔王アマデウス。 キミに敵対したボクをどう裁く?」
トゥルカナ「命で償えというなら、受け入れるよ」
アマデウス「トゥルカナ。お前に改めて頼もう」
アマデウス「魔王軍に力を貸してほしい」
アマデウス「人間の方には行かないでくれ。 俺はお前と戦いたくないんだ」
トゥルカナ「・・・それでいいの?」
トゥルカナ「まったく、キミは甘いなぁ」
ヴィオ「その通りですぞ、魔王様。こやつ、いつ裏切るかわかったものでは──」
アマデウス「共に行こう、トゥルカナ」
アマデウス「お前がいてくれれば、魔王軍はもっと賑やかになる」
トゥルカナ「・・・わかったよ」
トゥルカナ「もう。誘いに来るのが遅いんだから・・・」
トゥルカナ「ユウ、騙してごめんね」
宿利ユウ「いや、僕は別に・・・」
宿利ユウ「あ、でも、僕がここにいることは絶対に内緒だよ」
トゥルカナ「あー・・・」
宿利ユウ「ん?」
トゥルカナ「いやー、人間って転移陣は作れないくせに、おもしろい魔導具を作るんだよね」
トゥルカナ「たとえば、遠く離れたところでも話ができる魔導具とか」
トゥルカナ「これを使って、勇者に報告しちゃった」

〇黒
  『宿利ユウを見つけた』って

〇モヤモヤ
ヴィオ「どうした、ユウ。顔が真っ青だぞ」
  白崎が僕の居場所をつかんだ。
  あいつは必ず、
  僕を捕らえにやってくる──

次のエピソード:100tapでこれまでのあらすじ(読み飛ばしOK)

コメント

  • いやぁ、盛り上がって参りましたね✨
    どう出る…白崎…?

    話は変わりまして、大変申し上げにくいのですが、トゥルカナの台詞で"それでいの?"となっている所がございましたので、ご確認のほどよろしくお願いいたします!

  • トゥルカナ、面白い姫でした✨でも最後に~💦💦
    そしてヴィオ、人が良すぎますね😁みんな優しくてあったかい✨
    魔王さまの活躍を期待しながら、次話をお待ちしてます😆

  • 魔石…ユウ覚醒の大事な伏線になりそうです…!?😆
    ついに白崎との邂逅…?ユウは現実世界でのトラウマを乗り越えられるのか…楽しみです!

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