第11章 交錯する想い(脚本)
〇森の中
仮面の戦士「・・・滅びよ」
研究員「土精よ! わが手に堅き守りの力を!」
仮面の戦士「土精術の使い手か ・・・分が悪いな」
研究員「待て! おまえはなぜこんなことをする!」
仮面の戦士「・・・・・・」
研究員「<虹>を架けることは世界を救うことでもある なぜ妨害をするのだ!?」
仮面の戦士「なぜ・・・?」
仮面の戦士「わたし・・・は なんのため・・・に・・・」
仮面の戦士「ぐっ・・・!」
研究員「・・・!?」
仮面の戦士「キープレートの野望の阻止 それこそがわが使命だ」
研究員「野望だと!? 学園長は世界の行く先を・・・」
研究員「・・・くっ!」
仮面の戦士「次に遭うときがきさまの命日だ 覚えておけ」
研究員「はあ、はあ・・・ 助かった・・・のか」
研究員(学園長の野望・・・か あの男の言うことを信じるわけではないが・・・気になるな)
研究員「とにかく、一度学園へ戻らなければ・・・」
〇建物の裏手
ミモザ・クラリティ「ど、どういうことですか・・・!?」
〇教会
ノエル・エンジェライト「・・・ぼくは捨て子です 教会の前に捨てられていたところを神父様に拾われました」
ノエル・エンジェライト「孤児であることへの陰口はありましたが 数年間はそれなりに平穏に過ごしていました」
〇建物の裏手
ミモザ・クラリティ「それがどうして・・・?」
ノエル・エンジェライト「・・・・・・」
〇可愛らしいホテルの一室
ヴィオラ・コーディエ「・・・ってことなんだけどさ」
デアネイ・フォン・スペサルト「火山を・・・!? そんなことがほんとにできるの?」
ヴィオラ・コーディエ「魔力の使いすぎで倒れちゃったけどね」
ヴィオラ・コーディエ「それでえーと・・・ ミモザに助けられたんだ」
デアネイ・フォン・スペサルト「そうなんだ・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・ほんとにそれだけ?」
ヴィオラ・コーディエ「う、うん」
ヴィオラ・コーディエ(さすがにあのことは言わないほうがいいよな・・・)
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・・・・」
〇建物の裏手
ノエル・エンジェライト「・・・9年前の夏 山の中で魔物と遭遇しました」
〇山の中
ノエル・エンジェライト「死を覚悟したそのとき・・・」
ノエル・エンジェライト「頭の芯が冷えて、指先に熱が集まるような感覚があって・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・気がつけば、魔物は目の前で倒れていました」
〇建物の裏手
ミモザ・クラリティ「魔法・・・ですね」
ノエル・エンジェライト「初めは喜ばれました 辺境のクルラナから魔道士が輩出されるのだと」
ノエル・エンジェライト「数日後、ぼくの魔力を調べるために王都ディアから魔道士が来て・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・状況は一変しました」
〇可愛らしいホテルの一室
シグバート・フォン・ブラッドショット「うーん・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・はっ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「いつのまにか寝ていたのか・・・ ・・・ん?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・ノエルがいない?」
〇建物の裏手
ノエル・エンジェライト「検出されたぼくの魔力は・・・ 直系の王族を遥かに上回る量でした」
ノエル・エンジェライト「王家の血を引いているのではないか・・・ そんなふうに言われ始めました」
ミモザ・クラリティ「ノエルさんも・・・ 王族の庶子・・・なのですか?」
ノエル・エンジェライト「・・・わかりません 両親の記憶はありませんから」
ノエル・エンジェライト「・・・それから少しして ぼくは処刑を言い渡されました」
ミモザ・クラリティ「えっ・・・! ど、どうして・・・!?」
〇可愛らしいホテルの一室
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・ヴィオラさん ボク・・・」
ヴィオラ・コーディエ「ん、誰だ?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「夜分にすまないな ノエルはいるか?」
デアネイ・フォン・スペサルト「あ、義兄上・・・ ノエルさんは・・・えっと」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・ミモザはどうした?」
ヴィオラ・コーディエ「ふたりで外に行ったよ なんか話があるんだって」
デアネイ・フォン・スペサルト「ちょ、ちょっとヴィオラさん・・・!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「そうか ふたりが一緒なら心配は無用だな」
シグバート・フォン・ブラッドショット「深夜に邪魔して悪かった ではオレは部屋へ戻る」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・義兄上!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「どうした?」
デアネイ・フォン・スペサルト「義兄上は・・・ ・・・姉上のこと、どう思ってるの?」
〇建物の裏手
ノエル・エンジェライト「王の血を引くと噂されるぼくを、プレーンに知られる前に処分しようとしました」
ノエル・エンジェライト「ディアマンテ王が迎えた王妃は、プレーンの王女でしたから・・・」
ノエル・エンジェライト「力を付け始めたプレーンの機嫌を損ねるわけにはいかなかったのです」
ミモザ・クラリティ「で、でも・・・ 処刑だなんて・・・!」
ミモザ・クラリティ「ノエルさんが王の庶子だと決まったわけではないのに・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・そうですね」
ノエル・エンジェライト「ですが、時として噂は真実よりも重視されます」
ノエル・エンジェライト「・・・貴方も、そのことはよくご存じでしょう」
〇貴族の応接間
ミモザ・クラリティ「・・・・・・」
〇炎
ノエル・エンジェライト「縛り付けられて、火を放たれたとき・・・思いました」
ノエル・エンジェライト「・・・死にたくない、と」
ノエル・エンジェライト「そのとき、自分の内側で・・・ 激しい感情が膨れ上がりました」
〇可愛らしいホテルの一室
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・なぜそんなことを訊く?」
デアネイ・フォン・スペサルト「だって・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「義兄上は・・・ 学園を卒業したら王になるでしょ?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ああ そのつもりだ」
デアネイ・フォン・スペサルト「ボクも成人と同時に即位する」
デアネイ・フォン・スペサルト「義兄上はブラッドショット王 ボクはスペサルト王」
デアネイ・フォン・スペサルト「そして姉上は・・・ ・・・ブラッドショットの王妃に」
ヴィオラ・コーディエ「それはわかるけど さっきの質問と、なんの関係があるんだ?」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・・・・ 義兄上・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「姉上のこと・・・ ・・・好き?」
〇山間の集落
〇山間の集落
ノエル・エンジェライト「気がついたとき・・・ 村は氷に閉ざされていました」
ノエル・エンジェライト「・・・ぼくがやったのです」
〇雪山
ノエル・エンジェライト「・・・村から逃げ出したぼくに、王都から追っ手がかかりました」
ノエル・エンジェライト「逃げるためにぼくは・・・ 追っ手を・・・殺しました」
ミモザ・クラリティ「・・・ノエルさん」
〇血しぶき
ノエル・エンジェライト「おびただしい血を浴びながら・・・ 夢中で逃げました」
ミモザ・クラリティ「ノエルさん」
ノエル・エンジェライト「多くの人間を殺したぼくを、彼らは悪魔と・・・」
ミモザ・クラリティ「ノエルさん!」
〇建物の裏手
ミモザ・クラリティ「・・・ごめんなさい」
ノエル・エンジェライト「・・・なぜ、貴方が謝るのです」
ミモザ・クラリティ「わたしが聞き出したせいで、つらいことをお話しさせてしまって・・・」
ノエル・エンジェライト「ぼくは・・・つらくなどありません つらいのは・・・」
ミモザ・クラリティ「・・・わたしの」
ノエル・エンジェライト「・・・?」
ミモザ・クラリティ「わたしの光精術が、心の傷も癒やすことができればよかったのに・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・・・・」
〇可愛らしいホテルの一室
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・デアネイ 先ほどからなにを言いたい?」
デアネイ・フォン・スペサルト「姉上のことがほんとに好きだったら・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「男の人とふたりでいるなんて許せないでしょ!? それも、こんな夜中に!」
ヴィオラ・コーディエ「お、落ち着けよデアネイ」
デアネイ・フォン・スペサルト「姉上と義兄上の結婚は、プレーンに対抗するための同盟でしょ?」
デアネイ・フォン・スペサルト「オペラ様と父上は仲が悪い けど・・・ボクと義兄上なら、結婚による同盟は必要ない」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・それで?」
デアネイ・フォン・スペサルト「姉上のことが好きじゃないなら・・・ 婚約は解消して!」
〇豪華な部屋
キープレート学園長「ノエルくんが? ・・・まさか」
キープレート学園長「彼のことは幼い頃から知っています そんなことをする子だとは思えません」
バーバラ先生「ああ 9年前、ディアマンテでさまよっていたノエルを保護したのは学園長でしたね」
キープレート学園長「ええ わたしが学園長に就任してすぐのことです」
〇雪山
キープレート学園長「可哀想に、血まみれで怯えていました」
〇豪華な部屋
キープレート学園長「ノエルくんを連れ帰り、入学までの面倒を見たのはわたしです」
〇豪華な部屋
キープレート学園長「横恋慕をするような子に育てた覚えはないのですが・・・」
バーバラ先生「ですが・・・ ミスルト曰く、ただならぬ雰囲気だったとか」
キープレート学園長「・・・バーバラくん きみはどう見ますか?」
キープレート学園長「恥ずかしながら、恋愛の機微には疎いものでして」
バーバラ先生「ええ・・・ ノエルは感情が希薄で、人形のようだと噂されることもありました」
キープレート学園長「そうですね 集団生活の中で感情豊かになってほしいと願っていたのですが」
バーバラ先生「ノエルに恋愛感情が芽生えたのなら、担任としては喜ばしいことです」
バーバラ先生「しかし相手が相手です シグバートとミモザの婚姻は大陸の運命を左右する・・・」
バーバラ先生「プレーン王ヘンリーの後を継ぐウーウァ王子は、父親に似て大変な野心家ですから」
キープレート学園長「ええ 世界の平和のためにも、プレーンの台頭を許すわけにはいきません」
キープレート学園長「わたしからも注意しましょう 報告、ご苦労でした」
バーバラ先生「はい 失礼いたします」
キープレート学園長「ノエルが・・・ まさか・・・」
〇可愛らしいホテルの一室
ヴィオラ・コーディエ「デ、デアネイ!?」
デアネイ・フォン・スペサルト「父上は姉上を政略結婚の道具としか思ってないけど、ボクは違う!」
デアネイ・フォン・スペサルト「姉上のことを好きじゃない人に、姉上を任せたくない!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・くだらんな」
デアネイ・フォン・スペサルト「義兄上!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「オレは部屋へ戻る おまえたちも早く寝ろ」
ヴィオラ・コーディエ「おい、シグバート・・・!」
ヴィオラ・コーディエ「デアネイ・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「あいつもさ・・・ いろいろ考えてるんじゃないかな・・・たぶん」
デアネイ・フォン・スペサルト「それは・・・ わかってるけど・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「ボクは父上とは違う ボクなら姉上を守れる・・・」
ヴィオラ・コーディエ「・・・・・・」
〇建物の裏手
ノエル・エンジェライト「・・・そろそろ戻りましょう」
ミモザ・クラリティ「ええ・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・ミモザさん」
ノエル・エンジェライト「・・・ありがとう 話を聞いてくれて」
ミモザ・クラリティ「・・・!」
ノエル・エンジェライト「シグバートさんやヴィオラさんには話せないことでも、貴方になら打ち明けられる」
ノエル・エンジェライト「・・・なぜでしょうか・・・」
ミモザ・クラリティ「ノ、ノエル・・・さん それって・・・その・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・戻りましょう ヴィオラさんやデアネイさんが貴方を心配しているでしょうから」
ミモザ・クラリティ「は、はいっ・・・」
〇豪華な部屋
キープレート学園長(・・・ミモザの同行を許したのは失敗だったか)
キープレート学園長(シグバートとヴィオラの衝突を懸念していたのだが・・・)
キープレート学園長「まさか別の問題が起こるとは・・・」
キープレート学園長「スペサルト王ナギットの後を継ぐのはデアネイ王女・・・」
キープレート学園長(ミモザがいなくても、ブラッドショットとスペサルトの結束を促すことは可能だ)
キープレート学園長(・・・ミモザを退場させることも視野に入れなければな)