第七話 郭子の誤算(脚本)
〇タクシーの後部座席
史也(ふみや)「あなたは誰?ね。 俺は見た目が変わったからな・・・」
郭子(かっこ)「まさかッ・・・史也なの!?」
史也(ふみや)「髪は真っ白。 肌もボロボロ」
史也(ふみや)「掛け持ちしている日雇いバイトでは、ガイコツジジイってあだ名だよ」
史也(ふみや)「これでもまだ30代だぜ?」
史也(ふみや)「変わらないオマエが羨ましいよ」
史也(ふみや)「当時の婚約者と百寿へのW慰謝料はキツかった」
史也(ふみや)「両親には勘当され、芸能事務所も退職。 なのにオマエはすぐに、若い金持ちに鞍替えしやがった・・・」
史也(ふみや)「オマエと不倫したせいで、俺の人生がメチャクチャになったよ」
郭子(かっこ)「わ、私を・・・どこに連れて行くつもり?」
史也(ふみや)「久しぶりのドライブだ〜。 山か海か、どっちにする?」
史也(ふみや)「オマエは山の上のホテルが好きだったよな」
郭子(かっこ)「・・・!」
〇オフィスのフロア
百寿(もず)(郭子からだ!)
百寿(もず)(いや、興信所からの報告を受けてから、 折り返した方がいいな)
その時俺は、それきり郭子と
連絡が取れなくなるとは思っていなかったんだ──
〇古いアパートの一室
百寿(もず)「エエッ! また妊娠したの!?」
百寿(もず)「良かった! 本当に良かった!!」
四十雀(しじゅうから)「一度妊娠すると、妊娠しやすくなるみたいなんです!」
四十雀(しじゅうから)「これで私たち、晴れて本物の夫婦ですよね!」
百寿(もず)「赤ちゃんが出来たのは嬉しい。 でも、そうじゃなくても俺は四十雀さんを一生守るって決めたんだ」
百寿(もず)「もうすでに、俺たち本物の夫婦なんだよ」
四十雀(しじゅうから)「優しいなあ、室長は〜! 私も室長が、誰よりも大好きです!!」
四十雀(しじゅうから)「だから今度こそ元気な赤ちゃん産みますね!」
四十雀(しじゅうから)(どんなことをしてでも・・・)
〇病院の診察室
産婦人科医の証言
女医「四十雀さんは稽留流産だったの」
女医「妊娠3ヶ月だったけど、超音波検査したら心音が聞こえなくてね」
女医「いわゆる出血やお腹の異常も無いから、妊婦さんには分からないわね」
女医「特に彼女の場合は妊娠とともに、稽留流産を自覚したのが来院した時だから、」
女医「頭のネジが飛ぶくらいショックだったでしょうね」
〇街中の階段
通行人の証言
通行人「私がこの階段を登っていたら、上の方で女性2人が言い争いをしていたの」
通行人「1人は自分は妊婦だと言ったわ。 もう1人は赤ちゃんを返してと詰めよっていて、ただならぬ雰囲気だったの」
通行人「私が仲介に入ると、すぐに1人は立ち去ったんだけど、妊婦さんはブツブツ独り言を言い出してね」
通行人「『赤ちゃんが居ないと困る、赤ちゃん赤ちゃん』って聞こえたわ」
通行人「その人がちょっと異常な感じがして、私もすぐに立ち去りました」
通行人「その後、誰かがこの階段から落ちたって聞いた時は、やっぱりな、って」
興信所の男「そういうことだったのか」
興信所の男(百寿さん、貴方はとことん女運が無いようだね)
興信所の男(逆に行方不明の郭子さんのせいにしておいたほうが、幸せなのかもなあ)
この仕事を長くやっていると、
果たして真実を伝えることが
本当に正しいのか
いつも疑問に感じるんだよねえ
〇タワーマンション
〇シックなリビング
雛(ひな)「私たちは、ここでママを待っているから、パパは気にしないで新しい家庭を作って!」
雛(ひな)「葦雀さんも、愛人さんたちも私たちに同情してくれて、何かと気にかけてくれているわ」
雛(ひな)「血は繋がっていなくても、 パパみたいに親身になってくれる人って、意外と居るんだね!」
雛(ひな)「私も高校卒業したら介護士として働く準備が出来ているから、安心して!」
百寿(もず)「いつの間にか、ずいぶん逞しくなったな」
百寿(もず)(もう、雛は立派に1人の人間として育っている。 子離れしていないのは、俺だけだったのか)
百寿(もず)「分かったよ雛」
百寿(もず)「別々に住んでいても、俺がお前たちのパパなのは変わらない」
百寿(もず)「何かあったらすぐに飛んでくるから」
雛(ひな)「私たちなんかより、四十雀さんは大丈夫? その・・・流産してメンタルとか」
百寿(もず)「それが、またすぐに妊娠したんだよ!」
百寿(もず)「一度妊娠すると また妊娠しやすくなるらしいな!」
雛(ひな)「そうなんだ! 良かった!!」
雛(ひな)(あの日、たまたま学校帰りに四十雀さんを見かけた気がしたけど・・・)
〇ラブホテル
〇シックなリビング
雛(ひな)(パパには言わない方が良いよね・・・)
百寿(もず)「それより雛ッ! 彼氏ができたのに、パパに言わないとは何ごとだッ!?」
百寿(もず)「そいつはどんなヤツなんだ? 今度紹介しなさい!」
雛(ひな)「パパが見たら腰抜かすくらい、イケメンよ!見ない方が良いんじゃない〜?」
雛(ひな)(やっぱり、パパ大好き!!)
〇一戸建て
10年後
四十雀(しじゅうから)「忘れ物は無い!? ハンカチ・ティッシュは入ってる? 水筒は?お菓子は?お弁当は?」
百寿(もず)「一泊二日の宿泊学習なのに、大袈裟だなママは」
雀(すずめ)「そうだよ! 1個くらい忘れても、死なないよ〜!」
四十雀(しじゅうから)「だって、何も無い山でキャンプするのよ? 備えはあって当然じゃない!」
「ヘーキヘーキ!」
四十雀(しじゅうから)「んもう! いい加減な性格は 誰に似たのかしら・・・!」
雀(すずめ)「パパとママのハーフなんだからどっちかじゃない? じゃ、行ってきま~す!」
〇原っぱ
雀(すずめ)「だいしぜ〜ん! クウキが美味しい!!」
小学生「スズはチョロ助だから、迷子になるなよ!」
雀(すずめ)「わーったわーった!」
雀(すずめ)「とりま、あの木まで競争しよ! レディー☆ゴー!!」
小学生「待てよ! ズルいぞ!!」
雀(すずめ)「ヘヘッ! スズがいーちばん!」
雀(すずめ)「ッ!?」
〇黒背景
「キャアアアア!!!!」
〇けもの道
雀「イタタタ・・・ 何が起きたの!?」
???「あれ・・・? ココは何処だろう」
雀「おーい。 みんなーっ!」
雀(すずめ)「どうしよ・・・本当にハグれちゃった!?」
雀(すずめ)「パパ・・・ ママ・・・ 怖いよう」
雀(すずめ)「フェーン!」
???「どうして泣いているの?」
雀(すずめ)「スズ、みんなとハグれたから・・・」
???「アタシも、みんなとハグれちゃったの。 ──もうずっとココに居るのよ」
雀(すずめ)「お姉さん、こんなに暗い森に1人で、 怖くないの?」
???「もう慣れたわ。 スズ、元気を出して。 そうだ歌を歌いましょう」
???「♪♬♬〜」
雀(すずめ)「スズ、この歌知ってる!」
雀(すずめ)「♪♬♬〜アハハハハ♬♬」
雀(すずめ)「パパがねえ、スズが赤ちゃんの時に歌っていたんだよ!」
???「そう・・・。 アタシの夫も、よく私の赤ちゃんに歌ってくれたわ」
雀(すずめ)「お姉さんの夫と子供は、 ココには居ないの?」
???「ええ。居ないわ」
雀(すずめ)「淋しいね・・・」
雀(すずめ)「じゃあ、スズが一緒に居てあげるね!」
???「ホントに? スズは優しい子ね 嬉しいわ」
???「でも、パパとママに会いたいでしょ?」
雀(すずめ)「会いたい!!」
???「じゃあ、頑張ってこの崖を登りなさい」
???「あなたはまだ、間に合うわ」
雀(すずめ)「お姉さんも一緒に行こうよ!」
???「そうねえ。スズちゃんが手を繋いで登ってくれたらアタシも登れるかも」
雀(すずめ)「分かった!」
〇けもの道
百寿(もず)「スズ〜! 返事してくれ〜!!」
四十雀(しじゅうから)「うちのスズが、 どうしてこんなことに・・・!」
先生「申し訳ありません! 僕がスズちゃんから、目を離したばっかりに」
小学生「スズと追いかけっこしていたら、スズが崖に気づかないで、滑り落ちたんだ」
小学生「ごめんなさい、ごめんなさい!」
「バパー! ママー!」
百寿(もず)「崖の下からスズの声がする!」
百寿(もず)「スズー! 俺の手につかま・・・」
〇手
雀(すずめ)「パパ! こわかったよ〜」
ちょ、ちょ、ちょ~!😱
後ろ後ろ~!
ええ~!?
え、ええー!!
最後、まさかのホラーに!
最終回では、四十雀さんの謎は明かされるのでしょうか!?楽しみにしています。
たくましくしたたかに生き抜いてきた郭子でしたがまさに因果応報…恐い展開でしたが、すずが無事でよかった。