Kn0t 刑事『昏木』の異事採録蒐・「悪食事件」

aza/あざ(筒示明日香)

序(脚本)

Kn0t 刑事『昏木』の異事採録蒐・「悪食事件」

aza/あざ(筒示明日香)

今すぐ読む

Kn0t 刑事『昏木』の異事採録蒐・「悪食事件」
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇荒れた倉庫
  ────どうしてこうなったのか。
  割れた窓から吹き込む風で砂が舞う、埃っぽい床。
  こちらを取り囲むのは、ニヤニヤと下卑た嗤いを浮かべる顔、顔、顔・・・・・・。
  やだっやめ────!
  悲痛な訴えも、顔はいっそう口の端を吊り上げ、笑みを深めただけ。
  そして四方八方から伸ばされる、手・・・・・・。
  やめっ・・・・・・触るな! 触るな────!
  必死の抵抗すら、嬲ろうとするヤツらには楽しみのスパイスでしか無いらしい。
  ────何でこんなことになったんだろう・・・・・・。
  回らない頭で考えて、不意に過ったのは・・・・・・“アイツ”。
  ────“アイツ”のせいだ。
  “アイツ”のせいだ・・・・・・!
  ぶちっ。
  噛み締めて、切れた唇。
  鉄の味は、口に入った砂埃か、口内で広がった血の味か。
  目の前が、湧き上がり過ぎた怒りに歪み、眩む。
  あのとき。
  関わりさえしなければ────!
  ・・・・・・

〇公園のベンチ
  都内のとある公園が、朝から賑わっている。
  ただし、爽やかさや長閑さからは程遠い賑わいだった。
  緊迫する公園内は黄色いテープが張られ、所属する課で異なる装いの制服警官が行ったり来たりを繰り返す。
昏木「お早うございまーす」
  青年が一人、黄色いテープの前ですでに集まっている報道陣や野次馬を掻き分け、
  群衆に立ち塞がる警察官へ声を掛け中に入ろうとする。
警官1「あ、ちょっと・・・・・・!」
  制止しようとした警察官に足を止め、青年が何かに気付いて振り返った。
昏木「ああ、すみません」
  青年はスーツのポケットから何か取り出すと、警察官へ見せる。
  警察手帳だ。
  青年の警察手帳を目にした途端、警察官は改まって敬礼した。
警官1「し、失礼致しましたっ!」
  警察官の態度に、報道陣も野次馬も不満そうな表情や懐疑的な視線を和らげる。
  警察手帳が見えなかった者も、青年が私服警官で、それなりの階級であることがわかったのだろう。
  ・・・・・・もっとも。
昏木「いえいえ、どーも。ご苦労様です」
  のんびりとした口調と、のほほんとした笑顔は、警察官が畏まる程の人物には見えないが。
「・・・・・・遅いぞ、昏木《くらき》」
  ビニールシートに囲まれた中心、作業を一通り終えて鑑識が去った現場では、担当の刑事たちが雁首揃えて周囲を見回していた。
  この内の一人、青年へ叱咤を飛ばした男へ
昏木「お早うございます、」
昏木「沙汰《さた》さん」
  青年、昏木は挨拶する。
沙汰「直行なら、現場には早く来いって言ったろ」
昏木「すみません。早く家は出たんですけど・・・・・・」
昏木「報道の人や車で、どこもかしこも渋滞が起きていたので・・・・・・」
  昏木が笑んで遅刻の理由を述べると、沙汰と呼ばれた男は
沙汰「はぁ・・・・・・」
  深く深く嘆息した。
沙汰「マスコミもお早いこった」
昏木「でしょうねぇ」
  昏木は自分の頭上を仰ぎ見た。
昏木「・・・・・・何せもう三件ですから」
  昏木の目線を沙汰も追う。

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:起 +1

コメント

  • 陰惨で謎が多い事件...どういう展開になるんだろう...😰思わず引き込まれてしまいました🙌

  • なにか今後もどんどん被害者が出てきそうな感じがするほど、現場の臨場感が伝わりました。犯人をなるべく早く特定できるように、コンビの二人に頑張ってもらいたいですね。

成分キーワード

ページTOPへ