DAY1: 無愛想な小説家(脚本)
〇裏通りの階段
学校の最寄り駅から、電車で2駅
バイト先の家は、
その駅から歩いて徒歩10分くらいの
住宅地のはずれにあるらしい
お姉ちゃんからスマホに送られてきた
地図を頼りに
私は急ぎ足で向かっていた
三澤梨々花「えーとナビアプリ通りなら そろそろ着くはずなんだけど・・・」
ナビ:『目的地に到着しました』
三澤梨々花「着いた!」
〇平屋の一戸建て
「ええ~~!ここ!?」
売れっ子作家が住むにしては
ずいぶんなボロ家だ・・・
でも、表札には
家主の苗字である『落合』という文字
ここで間違いないようだ
〇ボロい家の玄関
三澤梨々花「庭は草ボーボーだし なんだかオバケ屋敷みたい・・・ ほんとに人が住んでるのかな?」
三澤梨々花「と、とにかくチャイムを押してみよう! えいっ!」
ぴーんぽーん・・・
三澤梨々花「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ぴんぽーん
三澤梨々花「すみませ~ん! どなたかいらっしゃいますか~?」
三澤梨々花「・・・おかしいなぁ 聞こえないのかな??」
三澤梨々花「ごめんくださ~~い!」
ぴんぽーん
ぴんぽんぴんぽんぴんぽーん
うるせえな!!!!!!
三澤梨々花((あ・・・・・・なんかくたびれた人 出てきた・・・))
三澤梨々花「あ、あの もしかして落合さんですか・・・?」
三澤梨々花「はじめまして!! 私、三澤乃梨子の妹の──」
落合はるか「・・・・・・3分」
三澤梨々花「え?」
落合はるか「指定時間より3分過ぎてる 時間厳守って、アンタの姉さんには 言っといたはずだけど?」
三澤梨々花「あ、ご、ごめんなさい💦 途中で少し迷ってしまって あの、私・・・」
落合はるか「家政婦のバイトだろ? 話は聞いてる ・・・ま、とりあえず入ったら」
三澤梨々花「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
三澤梨々花「・・・はぁ お邪魔します・・・・・・」
〇部屋の前
ウーーーーーッ!!!!!
ウワワワワワワワワワワワンッ!!!!
三澤梨々花「えっ!? 犬!? きゃーーーっ!! いたいいたい、嚙まないで~!」
ハイジ「ウゥ~~ッ! ガルルルルルルル!!!」
落合はるか「ハイジ」
ハイジ「・・・・・・ガル?」
ハイジ「アウ~~アンッ♡」
三澤梨々花「ハ、ハイジ?」
ハイジ「クゥン、キューン♡ アン、アンッ!」
落合はるか「よしよし 散歩はもう少し待ってな」
ハイジ「アン♡」
三澤梨々花((な、なにこの態度の違い! さっきは極悪猛獣みたいだったのに・・・!))
三澤梨々花((あっ今見下すような目した! か、かわいくない~~!))
落合はるか「おい コイツはデリケートなんだ おどかすな」
三澤梨々花「ええっ!わ、私!?」
三澤梨々花「いきなり飛びかかってきたのは その子ですけど! 噛みつかれたし!」
三澤梨々花「こんな狂暴な犬を放し飼いにするなんて 非常識です! それに、さっきからなんなんですか その態度!」
三澤梨々花「こっちは頼まれてバイトに来たのに 挨拶すらないし、失礼ですっ!」
落合はるか「・・・バイトはオレが頼んだんじゃない 緑川のやつが勝手にやったことだ」
落合はるか「ただ、今〆切間際の原稿を2本抱えてる 大学のレポートもたまってるしな」
落合はるか「だからしばらくの間なら雇ってもいい ハイジの世話もおろそかに出来ないしな」
三澤梨々花「なっ!!! 何その言い方!!」
三澤梨々花「必要ないなら 雇ってもらわなくてけっこうです! 私帰ります!」
落合はるか「時給3000円」
落合はるか「働き次第ではもっと上乗せしてもいいぞ 金が欲しいんだろ?」
三澤梨々花「はあ〜? 別にお金に困ってるわけじゃ──」
三澤梨々花「・・・・・・3500」
三澤梨々花「3500円ならいいですよ い、一度引き受けたことだし お世話してあげます!」
落合はるか「は、欲がねえな 一万、とか言うと思った」
三澤梨々花「そんなに図々しくないです! それに、報酬というものは ちゃんと成果を示して頂くものですし」
三澤梨々花「そのあとで時給アップの交渉は させてもらいますので!」
落合はるか「マジメか イマドキのJKらしくない発想だな まあいいや、じゃあそれで」
落合はるか「落合はるか、大学2年で物書きだ ま、よろしく」
三澤梨々花「み、三澤梨々花、高2です よろしくお願いします・・・」
落合はるか「じゃあ、さっそくだけど これがアンタの仕事のスケジュール」
三澤梨々花「ス、スケジュール?」
16:30 ハイジの散歩
17:00 掃除&夕食準備
18:00 ハイジの夕飯
18:30 ハイジのブラッシング
19:00 夕食
フロ&夜食準備
落合はるか「頼みたいことは 毎回当日スケジュールを渡す」
落合はるか「タイムスケジュール通りに頼む くれぐれも時間には気を遣ってくれ 余計な音で仕事の邪魔されたくない」
落合はるか「掃除はこの順番で書斎付近の部屋を優先。書斎の掃除はいい。というか絶対入るな 来客は緑川以外は取り次がない」
落合はるか「大きな声や音を立てない あと、用がない時はオレを呼ぶな」
落合はるか「勤務は水、土でいいんだよな 玄関は開けておくから勝手に入って始めろ 帰る時も声掛け不要」
落合はるか「万が一不在にする時は連絡するから NINEのID書いて置いてけ」
落合はるか「ああ、それとハイジの世話は慎重に 繊細だからな まあ、女同士だし仲良くやってくれ」
落合はるか「要望はそんなところだ まずは散歩だな ハイジ、リード持ってこい」
ハイジ「アンッ!!」
落合はるか「よし、じゃあ行ってこい」
ハイジ「アンーーッ!!!」
三澤梨々花「えっ!! いきなり渡されてもどうしたら・・・」
三澤梨々花「きゃーっ! は、走り出さないで〜〜!」
〇学校の校舎
ーー翌日
〇教室
吉沢美森「おっはよー梨々花!」
吉沢美森「うわ!! アンタどうしたの!?」
三澤梨々花「おはよ〜・・・ えへ・・・ちょっと疲れてて・・・」
三澤梨々花((うう・・・めちゃくちゃ筋肉痛・・・ 絶対の全力疾走散歩のせいだ・・・ あの生意気ワンコめ〜!))
吉沢美森「大丈夫~? もう朝から辛気くさいなぁ 元気だしなさいよ!」
ばしっ!!
三澤梨々花「いたぁっ!!」
三澤梨々花「み、美森、今体痛くて死にそうだから やさしく接して・・・・・・ き、昨日大変な目に遭って」
吉沢美森「大変な目? 昨日のバイトで? そんなにハードだったの?」
吉沢美森「あ、どうだった? 家主、イケメンだった!?」
三澤梨々花「イケメン・・・・・・といえば イケメンだったかも?」
三澤梨々花「でもすっごく感じ悪かった! 無愛想だし、上から目線だし自己中! 売れっ子作家だなんて信じられない! きっとデタラメだよ」
吉沢美森「ふうん。 やっぱ小説家とかって変わった人が 多いのかな」
吉沢美森「あ、でも小説家ならもしかして 『落合はるか』と知り合いだったりするかな!?」
三澤梨々花「・・・・・・お」
三澤梨々花「落合はるか・・・?」
吉沢美森「そう、今人気急上昇中の恋愛小説家! 普段本なんて読まないんだけど こないだお母さんに借りて読んだら すっごい面白かったの」
吉沢美森「『カーディナル(情熱)』っていうタイトルのシリーズなんだけど」
吉沢美森「胸がギューってなるような せつないストーリーだけど すっごいロマンチックなの~♡」
吉沢美森「もうすぐ最新刊が発売でさぁ 今からめっちゃ楽しみなんだ~♡♡」
三澤梨々花(えええええええええええええええええええええええええええええ~!!!)
吉沢美森「けどね、落合はるかって取材は一切受けないしプロフィールも未公開 男か女かもわからないんだよね」
吉沢美森「去年楽多川賞獲った時も 授賞式には出なかったんだって」
三澤梨々花「楽多川賞!?」
吉沢美森「梨々花は恋愛小説読まないから 知らないかー もったいないよ、すっごいオススメ!」
三澤梨々花「そ、そうなんだ〜」
三澤梨々花(う、うそでしょ!? あの人が恋愛小説家!? しかも大人気? ありえない・・・ありえないよ~!)
吉沢美森「で、どうだったのよ、その小説家! どんな本書いてるの? なんて名前?」
三澤梨々花「えっ!?」
三澤梨々花「ええとええと ホ、ホラーとか言ってたかな!? な、名前はねえ・・・・・・」
三澤梨々花「や、山田ダイゴロウっていうの!」
吉沢美森「ダイゴロウ? 変な名前 ホラーかあ、ちょっと苦手だなぁ 売れてるの?」
三澤梨々花「ね、ね~~! なんかマニアックな作品らしくて あんまり売れてないっぽいよ よくわかんないんだけど!」
三澤梨々花(とりあえず本当のことを言うのはやめよう・・・・・・大騒ぎになりそうだし)
ガラガラッ(教室のドアの開く音)
貴島里見「おっはよ~」
貴島里見「おっはよ~三澤ちゃん♪ 今日もカワイイね!」
貴島里見「あれ? なんか顔色悪いよ? 大丈夫?」
三澤梨々花「さ、里見くん、おはよう う、うん、大丈夫💦」
貴島里見「悩み事とか辛いことあったなら 相談に乗るよ? なんでも言って」
吉沢美森「・・・・・・おい」
吉沢美森「あたしは無視かよ!! アホ里見!!」
貴島里見「あ、美森いたんだ 気がつかなかった おはよう」
貴島里見「あ、昨日ゴチでしたー♪ これでオレの5連勝♪」
吉沢美森「ぐっ・・・・・・ き、昨日はほんとはあたしの勝利だったのよ!!」
吉沢美森「でもアンタのファンが騒ぐから 気が散って手元が狂ったの!!」
吉沢美森「ていうかいちいち梨々花にちょっかい出すのやめてよね! この女好き!!!」
貴島里見「え~オレ、好きなコにしか カワイイとか言わないよ? 案外マジメよ?」
吉沢美森「ウソつくな 誤解を招く言動ばっかりでしょーが 何度部内でももめ事に巻き込まれたか・・・・・・」
吉沢美森「梨々花は初恋もまだってくらい ピュアなんだから! 穢れた手で触らないでちょーだい!」
三澤梨々花「だ、大丈夫だよ美森 里見くんが誰にでもやさしいの知ってるもの 私、勘違いしたりしないから」
貴島里見「誰にでもじゃないよ 女の子限定♪」
貴島里見「でもショック 三澤ちゃんには本気にして欲しいんだけどなぁ」
三澤梨々花「はいはい」
三澤梨々花「でも里見くんのおかげで女子テニス部の 部員数も安定したし、感謝しないとね ねえ美森?」
三澤梨々花「今いる一年生、ほとんど里見くんが勧誘してくれた子たちだもん」
吉沢美森「・・・まーね! 欲を言えばもう少しやる気のある部員がし欲しかったけど」
吉沢美森「みんな里見目当てで、正直戦力外」
貴島里見「いやいや 男子のほうだって三澤ちゃん目当てのヤツけっこういるし、お互いサマだよ」
三澤梨々花「ええ? それはないと思うけど・・・」
三澤梨々花(里見くん、ほんと冗談好きなんだから たしかに思わせぶりな言葉は多いけど でも憎めない人なんだよね)
貴島里見「でも本当に大丈夫なの? 具合悪かったりしない?」
三澤梨々花「うん、大丈夫! 昨日ちょっと家事で疲れただけだから」
貴島里見「そか。 無理しないでね じゃ、席いくわ!」
三澤梨々花(あの人も里見くんみたいだったらな・・・ どう接していいかわからないし、この先不安・・・)
吉沢美森「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ハイジがとても可愛い!この子の存在が、はるか先生の家でのやり取りの中のいいアクセントになっていますね。表情も細かく設定されていてイイですね!
ワンコの人を見下すような目...祖父が飼っていた犬を思い出しました(何故か私にだけ冷たい🤣)
覆面作家さんとのアルバイト生活!?ドキドキの展開をお待ちしております🌟