夜の彼

星野栞

彼の日記より Ⅵ(脚本)

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〇古い洋館
  恐怖に震えながら、僕はこの日記を書いている
  森の奥へ行ってきた
  この前、森の奥で見つけた屋敷に行き、門に巻かれていた鎖をヤスリと強力なペンチで断ち切り、中へ入った
  雑草を掻き分けてたどり着いた大きな洋館は、月明かりの中でも黒々と闇に沈んで、不気味に鎮まり返っていた
  ふと、誰かの視線を感じた
  屋敷のどこかの窓から僕を見ている視線を感じた
  見上げてみてもどの窓も真っ暗だ
  玄関の扉に手をかけたら鍵が掛かっていなかった
  僕は扉を開けて建物の中に入った
  扉がギイっと大きな音を立てた
  その音が大きく虚ろに響いた
  カビと埃の匂いがツンと鼻を突いた
  そこは玄関ホールだった
  懐中電灯で照らしてみると、天井から落下したと思われるシャンデリアの残骸が散らばり、あたり一面埃だらけだった
  周囲は何だかわからないガラクタと瓦礫が散乱している
  この屋敷はやはり空家だ
  もう何年も前から廃墟なのだ
  とてもじゃないが人が住める状態じゃない
  そして僕は・・・僕は
  今日はもう疲れた
  疲れて怯えている
  あんな場所に行くんじゃなかった
  間もなく夜が明ける
  この続きは明日また書こう

次のエピソード:夜にさまよう Ⅵ

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