彼の日記より Ⅴ(脚本)
〇古い洋館
今宵の目的地は、以前にも行ったことのある森の、さらに奥だ
そこに何があるのかな
なにが僕を待ち構えているのかな
そう思ったら楽しみで仕方がなかった
僕はいつものように足を忍ばせ
闇の中を行く
真っ暗な森の中の
クネクネと折れ曲がった道を・・・
背を丸め
指を曲げた手を前に突き出し・・・
哀れな獲物に飛びかかる魔物のように
素早く滑るように歩く
森の奥に着いた
大きな、僕の背丈を遥かに超える大きな門があった
門は錆び付いて、同じく錆びた鉄の鎖がグルグルと巻かれていた
門の両側には高い高い塀がどこまでも続き、森の中へ消えていた
門の隙間から中を覗くと
月に照らされた広い庭が見えた
その向こうに大きな屋敷が見えた
庭は荒れていて、蔓延った雑草が伸び放題だ
屋敷も真っ暗で人の気配はない
窓のガラスも割れている
壁もところどころが崩れ落ちている
どうやら廃墟のようだった
きっと遥か昔に空き家になったのだろう
中に入りたいと思った
中に入って、あの大きな空き家を探索をするんだ
門の扉を力いっぱい引っ張ったり押してみたり、でもびくともしない
カンヌキはかかっていない
開かないのは、幾重にも巻かれている鎖のせいだ
塀を乗り越えようとしたけれど、取っ掛かりもなく無理だった
やはりどうにかして門から侵入するしかない
今度来る時は、固く門を閉ざしている鎖を切る道具を持ってこよう