夜の彼

星野栞

彼の日記より Ⅳ(脚本)

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〇閑静な住宅街
  何処かの道の途上・・・
  不気味な森の中・・・
  ある夜の目的地は青い光で照らされた歩道橋の上だった
  そのアプリは僕にとって夜の世界の道標となった
  街灯の無い道端では打ち捨てられた赤い自転車を見つけた
  森の中では、ささやきかけてくる声に出会った
  歩道橋の上では、僕と手を繋ごうとする少女の霊に出会った
  これはいい
  このアプリは素晴らしい
  僕は探索範囲をさらに広げてみた
  深夜の街・・・
  その一画の、ある家・・・
  門扉には鍵が掛かっていない
  僕はこっそり庭に回り、ぼんやり灯りが見える二階の窓を見上げる
  こんな時間なのに誰か起きているようだ
  庭に落ちていた木の実を拾い、その窓目がけて投げてみる
  
  こん、と小さな音がした
  三度目で窓が開いたので僕は素早く隠れた
  二階の住人はきっと不安気な顔をしているに違いない
  それを想像したら可笑しかった
  僕はくすくす笑いながらその家を後にする
  ああ、楽しいな

次のエピソード:夜にさまよう Ⅳ

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