【7話】嘘つきの子供たち(脚本)
〇研究施設の廊下(曲がり角)
スローアライブ体験の28年くらい前・・・
神田 矢真樹(かんだ やまき)「全然眠くならねぇ・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「皆、大人しく寝ちまったし・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「で、お前は何で俺に付いてきたんだ?」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私もなんか寝付けなくて・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「ベッドの中にいないと怒られるぞ」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「矢真樹くんだって・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「ねぇ・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「矢真樹くんはどうしてここに来たの?」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「俺は家出したんだ だから金が欲しかった」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「それだけだ」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「・・・・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「何だよ・・・聞いてほしいなら、話せよ」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私は・・・私がいるとお母さんに悪いからここに来たの・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「でも・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「寂しいんだろ!」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「そんな顔してれば誰でも分かる!」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「・・・でも矢真樹くんぐらいしか気づいてくれないよ」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「俺ぐらいしかって何だよ!」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「ケンカ売ってんのか?」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「あっ・・・ゴメンね そんなつもりじゃなかった・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私っていつも余計なこと言って友達から嫌われるんだ・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私、声も・・・なんか気持ち悪いみたいだし・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「矢真樹くんは・・・怒るかもしれないけど・・・私に似てる気がして・・・話しやすいの」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「似てるところはあんまり嬉しくない理由だろうな その顔は・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「ゴメン・・・正解」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「お前が嫌われるとこは、そういうところだろうな」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「・・・・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「ウソ泣きは止めろ!」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「何で分かるの?」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「俺も嘘が下手な嘘つきだからな」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「フフッ、そっか」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「お前・・・忠告するけど」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「そういうところ直さないと碌な人生にならないぞ」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「・・・あと、お前の声はアイドルみたいにキンキンだけど気持ち悪くはねぇよ」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「ア・・・アイドル!」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「例えだよ!」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「そう、怒らないでよ」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「でも・・・うん、ありがとう 矢真樹くん」
その3年後・・・
神田 矢真樹(かんだ やまき)「なんで・・・俺だけ・・・成長しちまうんだ・・・」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「神田君は睡眠状態が良くないからこの3年はそのまま成長したみたいだな」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「でもデータとしてはとても興味深い」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「あと二、三十年ここに居てくれないか?」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「・・・・・・」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「ここにいれば、これからも生きていけるよ」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「今更、元の場所に戻ったって苦労するだけだよ」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「・・・分かってる」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「じゃあ、俺時間だからそろそろ退室するね」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「クソが・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「・・・・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「優花、言いたいことあるならとっとと喋れ」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「矢真樹くんは帰れないの?」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「今更、俺が帰っても誰も喜ばねぇ」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「可哀そう・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「哀れむな!」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「矢真樹くんはお家帰ったほうがいいよ」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私は矢真樹くんがいなくてもそんなに寂しくないけど、矢真樹くんの親御さんならきっと寂しいよ」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「お前がそれ言える立場かよ」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「お前だって、これから先考えとけよ!」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「あの庭谷ってやつと何時までいるのか!」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「お前はまだ帰れるんだぜ」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私・・・もう・・・あそこに戻りたくない・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「お母さんは大好きだけど、私はあそこにいられないの・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「嘘つけ!」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「戻りたいんだろ!」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「違うよ!」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「これは私の本心だよ・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「ケッ、勝手にしろ!」
それから17年後・・・
神田 矢真樹(かんだ やまき)「この施設を出てけって・・・」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「うん、取りたいデータは大体とれたから」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「お金はある程度、渡すからそれで頑張ってね」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「じゃあ、バイバイ」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「チクショー!!」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「矢真樹くん・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「オイ、優花 庭谷はあんな奴だ!」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「お前だっていつか酷い思いをする・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「見切りをつけるなら早いほうがいいぜ」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「それなら・・・私・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「矢真樹くんについていっていい?」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「馬鹿かお前! 元の家に帰るんだよ!」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「こんな未来のねぇ俺についてったらますます後悔するぞ!」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「じゃあ、ここに残る・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「変な意地張ってんじゃねぇよ馬鹿!」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「意地なんて張ってない・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私が私でいられるのはココだけ・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「・・・俺はお前の本心が分からなくなっちまった」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「そうかよ・・・」
神田 矢真樹(かんだ やまき)「せいぜい、後悔するなよ・・・」
その日、神田 矢真樹は施設を去った
楽本 優花(らくもと ゆうか)「もう後悔してるよ・・・」