タワーディフェンス・レーヴァテイン dominate_ep8

R・グループ

第12話 世界の防衛戦(タワーディフェンス・レーヴァテイン)(脚本)

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〇実験ルーム
月島海斗「うわっ!?」
  基地内のあちこちから爆発音が聞こえる。
  それと同時に周囲が激しく振動し、衝撃が駆け巡る。
  既に基地の内部でなんらかの戦闘が起きているようだ。
月島海斗「マキアさん!! 戦況は!?」
マキア・ローザリア「海斗くん、シオンベース内に"敵"が侵入してきて戦闘中だ!!」
マキア・ローザリア「この映像を見てくれ」
  映像にはシオンベースに突き刺さる細長い黄色の隕石が映し出された。
月島海斗「なんだこれ!? 槍みたいな岩が刺さってる!!」
マキア・ローザリア「最初、正面から大量の隕石群が現れて迎撃部隊が出たのだけれど・・・」
マキア・ローザリア「その隙にこちらの探知の死角からあの細長いの岩が突入してきたんだよ!」
月島海斗「"敵"は探知されにくい形状の隕石を開発したってことか・・・」
マキア・ローザリア「その槍型隕石から多数の"スピナー"が基地内に侵入して施設を破壊しているんだ!」
  "敵"はどうやら、人類が行うレーダーの索敵方法を知り、"死角に回り込む"という戦法を学んだようである。
月島海斗「でも、あんな細い岩なら基地備え付けのコイルマシンガンでも簡単に折れるはずじゃ・・・」
マキア・ローザリア「あれはウラン238を用いた複合成分の隕石で出来ている。簡単には砕けない」
月島海斗「劣化ウラン・・・"敵"は冶金(やきん)技術も持っているのか・・・」
月島海斗「隕石の迎撃の方はどうですか?」
マキア・ローザリア「数は400ほど、直掩のカレイジャス隊とヴァルキリー隊が迎撃中なんだが・・・」
マキア・ローザリア「ドックが戦闘中で増援も送れないし補給ができない」
マキア・ローザリア「基地内に侵入した"敵"の数が多すぎて苦戦しているんだ」
マキア・ローザリア「このままでは・・・」
月島海斗「・・・」
月島海斗「状況はわかりました! 俺がカレイジャスで出撃して隕石を防ぎます!!」
月島海斗「侵入した"敵"は陽動だ。本体を叩かなくちゃならない!」
マキア・ローザリア「そうだろうな・・・ わかった。基地は私たちでなんとかする」
マキア・ローザリア「海斗くんは何としてでも出撃してくれ!!」
月島海斗「はい!! 行きます!!」

〇VR施設のロビー
月島海斗「あれが"スピナー"・・・」
  ロビーに出ると激しく燃え盛るダルマ落としのような岩柱が見える。
李維新「海斗!! 伏せろ!!」
月島海斗「うわっ!!」
月島海斗「危なかった・・・」
李維新「海斗、姿勢を低くするんだ 奴に目はついていない」
李維新「どうやら正確に位置を測ってこちらを狙っているわけじゃないみたいだ」
  よく観察すると、その岩の柱はゆっくりと引き摺るようにしか移動していない。
月島海斗「崩れた・・・」
  "スピナー"は周囲を回転する小岩がすべて燃え尽きると崩れ去った。
月島海斗「空気があると小石の高速回転を維持できない?」
李維新「そうみたいだな・・・」
李維新「また次が来やがった!」

〇VR施設のロビー
李維新「隔壁に穴が開いたぞ!!」
月島海斗「空気が・・・」
  次第にロビーから流出する空気が激しくなっていく。
月島海斗「"敵"は空気を奪うため隔壁を優先して破壊しているのか?」
李維新「そうかもな、そうすりゃ連中は自由に動けるんだろうよ!!」
月島海斗「クソッ!! 通路が塞がれてドックへ向かえない!!」
李維新「リスミー教官と俺の仲間が武器を取りに行ってる!! それまでまて!!」
月島海斗「わかった」
月島海斗「うわっ!! 身体が浮く!!」
李維新「疑似重力発生装置が切れたんだ!!」
月島海斗「飛ばされる!!」
  シオンベースのある準惑星は重力が地球の1000分の1しかない。
  そのため、伏せた反動ですら身体が浮いてしまう。
李維新「ま、まずいぞ!!」
月島海斗「やられる!!」
リスミー・マクマード「海斗くん!!」
林玉衡「維新!!」
白大鵬「武器を持ってきた!!」
月島海斗「リスミーさん!!」
李維新「危ない! 撃たれるぞ!!」
月島海斗「リスミー教官が"スピナー"の弾丸を弾いた!?」
リスミー・マクマード「今よ!!」
白大鵬「喰らえっ!!」
  作業用の射出型パイルバンカーを構える。
林玉衡「呀!」
李維新「やったか!?」
月島海斗「ダメだ!! 次々と新しい"スピナー"が侵入してくる!!」
林玉衡「これじゃあキリがない!!」
白大鵬「次弾装填する!!」
月島海斗「はやくドックに行かなくちゃいけないのに!!」
アルベルト・カザン「海斗くん、李くん。 この噴射機を使って、あの敵が開けた穴からドックへ行こう!!」
李維新「そっちは宇宙じゃないか!!」
アルベルト・カザン「"VAF"があれば真空でも少しは耐えられる。通路を突破するより成功しそうだよ!!」
月島海斗「もって3分・・・ギリギリか・・・」
李維新「けど、ここを突破されたら基地の中枢に"敵"が・・・」
リスミー・マクマード「・・・」
リスミー・マクマード「維新くん、海斗くんの判断は正しいわ。 "敵"の本命は隕石群よ」
リスミー・マクマード「アルベルト、海斗くんをドックへ連れて行ってあげて!!」
「えっ!?」
アルベルト・カザン「わかりました!」
白大鵬「李君、ここは我らで食い止めます!」
林玉衡「李君たちはカレイジャスへ!」
リスミー・マクマード「大丈夫、"VAF"は女の子の力。 私はあなた達よりちょっとだけ使い慣れているの」
リスミー・マクマード「ここは任せて頂戴」
月島海斗「わかりました。 維新、アルベルト、行こう!!」
李維新「わかった!!」
アルベルト・カザン「うん!!」
リスミー・マクマード「さて、次の弾が来るわよ!!」
白大鵬「教官、"VAF"で防げるんじゃないのですか?」
リスミー・マクマード「実は毎回うまくいくとは限らないの」
林玉衡「ならば刺し違えてでも反撃するのみ!!」
林玉衡「呀!」

〇宇宙戦艦の甲板
  海斗達は手を繋いで塊になりながら、アルベルトが持っていた噴射装置を使って外壁沿いを進む。
アルベルト・カザン(ドックはこっちだよ!)
  宇宙で声は伝わらない。なんの音もない世界である。
  外から見るとシオンベースに突き刺さる巨大な槍状の岩が見える。
  その岩の表面にはびっしりと"スピナー"が跋扈しているようだ。
  それが徐々に移動し、基地の外壁から侵入を試みている。
月島海斗(あれが宇宙のカビか・・・)
月島海斗(俺たちの"敵"・・・)
アルベルト・カザン(こっちのハッチから入れるよ!)
  アルベルトはハンドサインで合図し、ハッチを開けた。
  海斗たちも後に続く。

〇秘密基地のモニタールーム
  ドック内は銃撃戦の最中だった。
  格納庫を挟んで整備員のタイキ族と"スピナー"が激しい応酬をしている。
オペレーター「敵の弾が来るわ!!」
ユニックス「無反動砲を喰らいなさい!!」
オペレーター「きゃっ!!」
オペレーター「第5整備隊全滅!!」
ユニックス「怯むな!!」
ユニックス「第2整備隊前進! 横から周りこんで射線を確保するのよ!!」
ユニックス「とにかくカレイジャスの進路を確保するの!!」
  ドック内にはすでに各所に大穴が開いており、そこから猛烈な勢いで空気が流出している。
月島海斗「ユニックスさん!!」
ユニックス「海斗くん! 遅いわよ!!」
ユニックス「動くカレイジャスに乗ってとにかく出撃して頂戴!!」
ユニックス「進路は死守するわ」
月島海斗「"敵"が黄色い槍からどんどん侵入してきます!!」
月島海斗「それにまもなくドックは空気が無くなります!!」
ユニックス「タイキ族は空気が無くても死なないわ」
ユニックス「こっちは大丈夫だから早く外で働いて男の責任を果たしなさい!!」
月島海斗「男の責任?」
ユニックス「外で働いてくるのよ当たり前でしょう!!」
ユニックス「グダグダ語るな!! さっさと行けぇ!!」
月島海斗「わ、わかりました!!」
李維新「海斗、俺の0804機は動くみたいだ。これで出撃しよう」
月島海斗「わかった」
ユニックス「整備兵各員!! 0804機の出撃進路を確保せよ!!」
ユニックス「配置に付け!!」
月島海斗「・・・」
月島海斗「維新、アタッカーは俺に任せてくれ。 俺が"敵"を倒す」
李維新「わかってる。レーヴァテインを使うのはお前しかいない」
李維新「俺がソーサーとしてお前の足になる。必ずシオンベースを守るんだ」
月島海斗「任せてくれ」
アルベルト・カザン「僕がディーバーをやるよ 必ず守ろう!」
月島海斗「よし・・・」
月島海斗「発進する。カタパルト無しでいける?」
李維新「やったことはないが、やるしかねーだろ!!」
李維新「エンジン始動!!」
アルベルト・カザン「ユニックスさんが前方のゲートを吹き飛ばしたよ!!」
月島海斗「ギリギリの隙間だ・・・出られるか!?」
李維新「通り抜けてみせるぞ!! 発進!!」
ユニックス「海斗君がでるわ!! 一斉射撃開始!!」
ユニックス「敵に撃たせるな!!」

〇宇宙空間
アルベルト・カザン「宇宙に出たよ!!」
月島海斗「ドライブ始動!!」
李維新「行了!!」

〇宇宙空間
夕張万里「クソッ!! キリがねぇ!! 数が多すぎる!!」
夕張万里「こんなに硬くてデカいのばっかり揃えやがってよぉ!!」
夕張万里「もうタマがねぇぞ!! こんなキメ時に打ち止めとかシャレになんねぇ!!」
サクチャイ・ラオバン「こっちもだ!! レーヴァテイン残弾0!!」
サクチャイ・ラオバン「敵のウラン弾が固すぎる!! 正確にレーヴァテインを当てないと弾くこともできない!!」
伊達勇「攻撃が激しすぎるよ! いったん補給しないといけないのに・・・」
伊達勇「ドックが使えないなんて・・・」
シオンベースのクルー「ヴァルキリーの火力じゃウラン岩や鉄岩は破壊できない!」
八雲潤「固い敵には無力ブヒ!」
夕張万里「連中の作戦は背後からの奇襲で補給と増援を叩いて、物量で正面から押し潰そうってか!」
夕張万里「つくづくムカつくんだよ!」
日高晶「衝突コースのウラン岩がさらに5!!」
深川京「アニキ!! もう下がるしかないっスよ!!」
夕張万里「下がっても死ぬだけだ、クソがっ!!」
日高晶「アニキ、シオンベースからカレイジャスが一機でてきた!」
夕張万里「ドックは直ったのか?」
日高晶「無理やりこじ開けて出撃してきたみたいだ!!」
深川京「一機だけじゃどうしようも・・・」
夕張万里「いや・・・あれはレーヴァテインの坊やだ」
夕張万里「ずいぶん楽しませてくれるじゃねーか、あの童貞クンはよぉ!」

〇宇宙空間
アルベルト・カザン「味方は総崩れだよ!!」
月島海斗「敵は?」
アルベルト・カザン「シオンベースへ命中進路にあるものだけで・・・ウラン岩6、鉄岩24、石岩220!!」
李維新「多すぎる!! 俺たち1機だけで・・・どうする!?」
月島海斗「神は賽(サイ)を振らない。 賽を振るのはこの俺だ!!」
月島海斗「俺のレーヴァテインですべて叩き潰す!!」
月島海斗「いくぞッ!!」
アルベルト・カザン「ウラン岩3番に命中!」
李維新「だけど・・・破壊し損ねた? 固すぎるのか!!」
  海斗が狙ったウラン岩は破壊されなかった。
  しかし、その衝撃によって軌道が逸れる。
アルベルト・カザン「コースをずれた3番が隣のウラン岩2番と接触!!」
李維新「えっ!?」
アルベルト・カザン「2番3番破壊!! 衝撃で周辺の隕石も進路が逸れたよ!!」
李維新「まさか狙って弾いて巻き込ませたのか・・・」
  "敵"はウラン235を岩で包み、衝突による破孔で臨界に達するようにしていた。
  よってウラン岩同士が接触すると臨界量以上に達して爆発する。
月島海斗「──ッ!」
アルベルト・カザン「クリティカルヒット!! ウラン岩1番撃破!!」
李維新「左は全部潰したぞ!!」
アルベルト・カザン「石岩が接近してくるよ!!」
月島海斗「空いたスペースに移動、接近戦でチャージ間隔を短くする」
月島海斗「コイルマシンガンで周囲の石岩を迎撃!!」
月島海斗「ギリギリまで引き付けて敵を選別する!! モニターしてくれ!!」
アルベルト・カザン「わかったよ!」
李維新「懐に飛び込めってか!! 了解だ!!」
アルベルト・カザン「石岩多数接近!!」
李維新「この数なら何とか回避は・・・」
月島海斗「センサーすべてシャットダウン!」
アルベルト・カザン「えっ!?」
月島海斗「早く!!」
李維新「うわっ!? 閃光弾!?」
月島海斗「起動、チャージ開始!!」
月島海斗「読めてるんだよ!! お前らのパターンはッ!!」
月島海斗「人間を舐めるな──ッ!!」
月島海斗「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
李維新「ウラン岩を2つ同時に弾いて鉄岩を巻き込んだ・・・」
アルベルト・カザン「す、すごい・・・」
月島海斗「砕け散れ────ッ!!」
  海斗はコイルマシンガンの正確な連射で次々と隕石を破壊していく。
  怒りで感情的になっているのとは違う、脳内物質で興奮しているわけでもない。
  どれだけ科学が発達しても引き出すことはできない力(ちから)。
  ただ"敵を倒す"ことだけを全力で思考する。
  それが、人類が進化する時から繰り返される男のタワーディフェンスである。
アルベルト・カザン「ウラン岩残り1!」
アルベルト・カザン「だけど先行の石岩群がシオンベースに到達するよ!!」
李維新「まずいぞ!! この距離じゃ岩を壊しても基地に堕ちる!!」
月島海斗「やらせるかぁぁぁぁぁ!」
李維新「弾が石岩を逸れた!! 基地に当たるぞ!!」
アルベルト・カザン「!? シオンベースに刺さった黄色い槍に命中!!」
李維新「なんだって!!」
アルベルト・カザン「テコの反動で準惑星の進路が逸れた!! この軌道なら岩石群を避けられるよ!!」
李維新「狙ってこれを・・・」
月島海斗「これで俺の勝ちだ──ッ!!」
アルベルト・カザン「ウラン岩すべて撃破! レーヴァンテイン残弾1! 衝突コース、鉄岩残り1!」
李維新「あと1つだ!」
月島海斗「とどめだぁ──ッ!!」
アルベルト・カザン「衝突コース最後の鉄岩撃破! レーヴァテイン残弾なし!」
李維新「やったか!?」
アルベルト・カザン「あっ!!」
アルベルト・カザン「弾いた鉄岩が1つ軌道を変えてる!! 基地に衝突コースだよ!」
月島海斗「チッ!」
李維新「くそっ! まだ重力制御が残っていたのか!」
アルベルト・カザン「もう衝突まで時間がない!!」
月島海斗「ドライブ全開! 体当たりで弾きとばす!」
月島海斗「シオンベースへの衝突コースから軌道を少し外れるだけでいい」
李維新「そう・・・だな わかった、やろう」
アルベルト・カザン「体当たり角度確認、計算よし!」
月島海斗「いくぞッ!!」

〇秘密基地のモニタールーム
ユニックス「石岩の残骸が準惑星に衝突!!」
リスミー・マクマード「すごい衝撃ね・・・」
ユニックス「準惑星の軌道が変わるほど甚大なダメージを負ってしまったわ・・・」
マキア・ローザリア「だが基地の中枢への被害は免れたようだ」
ユニックス「0804機の破壊を確認・・・」
リスミー・マクマード「海斗くん・・・」
ユニックス「基地へ衝突コースにあった最後の鉄岩は軌道を逸れました」
マキア・ローザリア「槍型隕石の"スピナー"は海斗くんの放った振動弾で全滅」
マキア・ローザリア「"敵"の隕石群も海斗くんがすべて防いだ・・・」
マキア・ローザリア「私たちは海斗くんに守られた。人類の未来も・・・」
リスミー・マクマード「私たちは助かった・・・けど・・・」
マキア・ローザリア「失ったものは大きいね・・・」
リスミー・マクマード「・・・」
リスミー・マクマード「しかし酷い有様ね・・・」
マキア・ローザリア「基地壊滅という表現以外ないな・・・」
ユニックス「出撃した残存機の収容は諦めて、人員だけ収容するしかありません」
マキア・ローザリア「これでは航宙隊も壊滅だな・・・」
リスミー・マクマード「再建は容易じゃないわね・・・」
ユニックス「──?」
ユニックス「救難信号よ!?」
「えっ!?」
ユニックス「0804機のものです!!」
リスミー・マクマード「まさか!? 海斗くん!?」

〇宇宙空間
李維新「ふーギリギリで脱出ポッドに間に合ったな」
アルベルト・カザン「危なかったね!!」
月島海斗「簡単には死なないさ」
アルベルト・カザン「もちろんだよ!」
月島海斗「俺は生きて生きて生きて・・・」
月島海斗「平和を取り戻すまで戦い続けてやる・・・」
アルベルト・カザン「そうだね! 勝つまで一緒に頑張ろう!!」
月島海斗「・・・」
  シオンベースから見えるもっとも明るい星が太陽で、次に明るい星が"グリーゼ710"である。
  海斗はその"敵"の星の方をずっと眺めていた。
月島海斗「男の責任・・・か・・・」

〇謎の施設の中枢
ユニックス「今回の戦闘による損害は人員、機体、施設共に90%を越えています」
ユニックス「基地の機能回復には重点的な補給がある前提で半年はかかる見込みです」
アンセム・ヴォルチ「クルーのαラグナ族や整備員のタイキ族も大勢失った」
アンセム・ヴォルチ「そちらの回復は半年で済みそうにないな・・・」
リスミー・マクマード「地球に堕ちた隕石の損害はどう?」
ユニックス「北半球の世界12の都市で衝撃波による被害。 死傷者は200万人程度と予測されています」
ユニックス「人口過疎地の迎撃は放棄され、全滅した村も100以上」
ユニックス「海洋に落ちた隕石により発生した津波によって1000万棟以上の家屋被害が出ています」
ユニックス「過疎地や津波による人的被害は未だ確認中です」
アンセム・ヴォルチ「しかし、これで"グリーゼ710"の我々への敵意や力関係は明確になった」
アンセム・ヴォルチ「正体不明、理解不能という言葉は払拭され、今後、人類はこの"敵"と全力で戦う事になる」
ユニックス「人間が作った連邦も、管理者たちが作った同盟も、"グリーゼ710"との総力戦を支持しています」
リスミー・マクマード「『多数の力は、勇気がある1人が集める』」
リスミー・マクマード「アンセム あなたの計算通りなのかしら?」
アンセム・ヴォルチ「今までの戦いはあくまで地球から遠く離れた別の世界での戦争」
アンセム・ヴォルチ「地球の人々に当事者意識は無い。でも、これからはそうじゃなくなった」
アンセム・ヴォルチ「戦いっていうのはお互いが本気になってからが本番だよ」
リスミー・マクマード「そうね・・・」

〇国際会議場
マキア・ローザリア「以上が自由浮遊惑星アーリマンの現在の侵攻状況、そして第三次シオンベース防衛戦の顛末」
マキア・ローザリア「さらに地球への隕石群攻撃による最終的な被害報告です」
連邦職員「現状は理解できた」
連邦議員「過去、人類は度々戦争を繰り返してきた」
連邦議員「それらはすべて人と人の戦いだった。 故に勝者は常に人だ」
連邦職員「今回は違います。 グリーゼ710に存在する"敵"は明白な意図をもって私達を滅ぼそうとしている」
連邦職員「己の存亡を賭けて全力で戦う以外の選択肢はありません」
連邦職員「それでは、かねてからの草案通り・・・ 全世界に"敵"の存在と現状を告知」
連邦職員「世界総動員令を発令する」
「異議なし」
  この日、地球連邦政府は全世界総動員法を告示。
  軌道エレベータは稼働中の1基、完成間近の3基から、さらに12基の追加建設を開始。
  宇宙に配置される支援コロニーは3基体制から30倍の90基体制に。
  宇宙母艦は現在運用中の5隻から100隻以上に。
  そして連邦に所属する各国の兵力最低供出は現状の100人から1000倍増の10万人に。
  各国とも国力の限界まで人員、物質、資金を供出することが決定された。
  こうして人類は総力戦に突入する。

〇豪華な王宮
三藻「李維新、白大鵬、林玉衡」
三藻「今回の戦さ働き、見事であった」
三藻「我らの闘志と頑健さを世界に示し皇帝陛下もたいそうお喜びである」
三藻「褒美を取らせる。 今後は妃嬪として陛下に近侍せよ」
李維新「ははっ、ありがき幸せ」
李維新「今後とも忠勤に励みます」
耶律希賢「三藻様、我々はすでに連邦政府より要請のあった総動員の準備を終えています」
徐福春「東方七国に設置されている10か所の後宮より100万の兵と若い娘を供給可能です」
徐福春「我らの旺盛な戦意をさらに世界に誇示することができるでしょう」
三藻「それがのう・・・陛下は4000万人動員せよ、と言うておる」
耶律希賢「4000万人、でございますか・・・」
徐福春「過去にもそのような大動員の事例はございません」
耶律希賢「その数では市井の娘まで強引に動員することになりますが・・・」
徐福春「男はともかく、女子の動員には厳しい反発を招くことになるかと・・・」
徐福春「動員する側である我らの精神的肉体的負担も大きくなりましょう」
三藻「それをなんとかするのが我らの役目じゃ」
三藻「我らが反発を受け精神的な負担になるからという理由で動員を躊躇(ためら)ってはならぬ」
三藻「我らは怠惰と無責任でいることを許されている身分ではない」
三藻「それでは陛下の厳しいお叱りを受けよう」
三藻「陛下の意向は絶対。直ちに国内に勅令し、動員を開始せよ」
三藻「動員逃れは厳しく取り締まれ。我らタマモ族からも憲兵を出そう」
耶律希賢「畏まりました」
李維新「4000万人の動員・・・ですか」
三藻「うむ、戦力の小出しは兵法の愚策とするところ」
三藻「よって、最初から最大限の人員を投入する」
三藻「100年の平和に慣れた民には厳しいかもしれぬが、勝つために必要な策である」
李維新「知道了」
三藻「だが、いくら権力者とて目的の不明な戦いに民を駆り出す事はできぬ」
三藻「我らの憑依術を駆使したところで動員した市民の士気など保てないからのぅ」
三藻「つまり、維新らの前線での武勇が我らの決断を可能にしたのじゃ」
三藻「今後とも歴史に正道を歩め、さすれば他者は主らの拓いた道に続くであろう」
李維新「畏まりました!」

〇後宮の庭
李維新「俺たちが陛下の近侍とは・・・一度陛下にお会いしたいものだよ」
林玉衡「李君、私はいったん故郷のサンパウロに帰り主君に報告しようと思う」
林玉衡「南米でも動員が始まっている。 民は動揺しているだろうし、故郷の人々に少しでも現場の状況と敵の真実を伝えたい」
白大鵬「私もいったん平壌へ帰るよ」
白大鵬「陛下から賜った褒賞を一族に報告したい。家族は皆、喜ぶだろう」
李維新「ああ、いままでありがとう。 俺の意地に付き合わせて悪かった」
李維新「死ぬかもしれないのに・・・すまない」
林玉衡「不求同日生、只願同日死。三人同行同坐同眠、誓爲兄弟」
李維新「三国志?」
白大鵬「男子、戦場では戦友のために命を尽せ」
李維新「スヴォーロフ?」
林玉衡「我ら志を同じくする友、必要があれば地球の反対側からでもすぐに飛んでくるよ」
白大鵬「また戦場に行く時は呼んで欲しい」
李維新「ああ、またよろしく!」

〇大広間
メトネ・ヴォルチ「結局、壮行会に出席した男で、祝勝会に参加できたのはあなただけだったわね」
アルベルト・カザン「うん・・・アーリマンの戦いと、シオンベースの戦いでみんな・・・」
アルベルト・カザン「しかもアーリマンは攻略失敗。シオンベースは壊滅状態・・・」
アルベルト・カザン「みんな死んでこんな結果なんて・・・」
メトネ・ヴォルチ「どう? 心は折れた?」
アルベルト・カザン「大丈夫! 僕は勝つために戦うよ」
アルベルト・カザン「絶対にあきらめたりしない!」
アルベルト・カザン「メトネ様、応援ありがとう!!」
メトネ・ヴォルチ「あなたは今、本気でお礼を言っているわね」
アルベルト・カザン「そうだけど・・・」
メトネ・ヴォルチ「あなたが勝つために生き残ることを目指すなら他人に本気で感謝してはいけないわ」
メトネ・ヴォルチ「共感する暇があるなら自分が生き残って勝つことを考えなさい」
アルベルト・カザン「えっ、どうして?」
メトネ・ヴォルチ「あなたは死んだ先輩やお兄さんに感謝を言うの?」
メトネ・ヴォルチ「『僕が生き残る為に死んでくれてありがとう』」
メトネ・ヴォルチ「『僕は最後まで生き残って勝利の利益を全部いただきます、ありがとう』」
アルベルト・カザン「そんなことは・・・ないです・・・」
メトネ・ヴォルチ「生き残って勝つ道を選ぶというのはそういうことよ?」
メトネ・ヴォルチ「でも、それは正常な精神の人間には酷い苦痛だわ」
メトネ・ヴォルチ「貴方に与えられたのは応援ではなく呪いなの」
アルベルト・カザン「呪い・・・」
メトネ・ヴォルチ「女が産みの苦しみを背負うなら・・・」
メトネ・ヴォルチ「男は殺しの苦しみを背負うのよ」
メトネ・ヴォルチ「それは他人を犠牲にしてでも自分は生き残り続けて、勝つ方法を常に模索し続けさせる呪い」
メトネ・ヴォルチ「貴方は呪いに感謝するのかしら?」
アルベルト・カザン「・・・メトネ様」
アルベルト・カザン「僕は今わかったよ・・・ アンセム司令官は・・・」
アルベルト・カザン「メトネ様から呪いを貰っているんだね・・・」
メトネ・ヴォルチ「あらぁ? 気が付いた?」
アルベルト・カザン「アンセム司令官は生き残って勝つために、永遠に思考し続けなくてはならない」
アルベルト・カザン「どんなに他人を犠牲にしてでも、勝つために生き残り続けなければならない・・・」
アルベルト・カザン「だって・・・よく考えたらシオンベースの女の子達はみんなアンセム司令官の娘じゃないか」
アルベルト・カザン「部下を失って、娘を失って、アンセム司令官が辛くないはずないのに・・・」
メトネ・ヴォルチ「私は男を見る目は確かなの。 アンセムはちゃんとやるわ」
メトネ・ヴォルチ「で、あたしもアンセムに呪われてしまったのよ?」
アルベルト・カザン「メトネ様も?」
メトネ・ヴォルチ「そんなアンセムが大好きになってしまう呪い」
メトネ・ヴォルチ「あたしを恋の虜にしておいて、100年も放置プレイとか酷くない?」
アルベルト・カザン「アンセム司令官やメトネ様はいつ救われるの?」
メトネ・ヴォルチ「勝って帰ってきた時よ」
メトネ・ヴォルチ「あなたも、その呪いが解けるのはその時だけだわ」
アルベルト・カザン「わかったよ! 僕は勝つために戦い続ける!」
アルベルト・カザン「ローラシア帝国の名門カザン家の末裔として、世界に勇気の剣を掲げて人類の平和を守るんだ!」
メトネ・ヴォルチ「がんばってねぇ」

〇ラブホテル
夕張万里「あー気持ちよかったー」
夕張万里「またヨロシクねー」
ナンパ男「じゃあなー」
夕張万里「さて、また新しい男を呼ぶか」
夕張万里「若い女の身体があれば相手を誘うなんて楽勝だぜ」
日高晶「アニキ・・・まだイクんスか!」
深川京「ヤリすぎっス!」
夕張万里「なんだお前らか・・・」
日高晶「さすがにもう腰が痛いっス!」
深川京「アニキ、いったい何件ハシゴすんすか・・・」
夕張万里「ばっか、女に弾切れはねーんだよ」
夕張万里「もっと男を堕としまくってヤリまくるぜ!!」
夕張万里「金もたくさん稼げてすごく気持ちもいい、若い女はサイコーだな!!」
日高晶「闘志と性欲の塊っスね・・・」
深川京「むしろアニキのそのやる気が凄すぎっす」
夕張万里「うるせー お前らも付き合えっつーの!!」
夕張万里「あ、お前らが俺の相手してくれてもいいぞ」
夕張万里「中身は男だからたまには柔らかい女を抱くのもいいぜ」
日高晶「それ、いっスねー!!」
深川京「アニキ、やりましょう!!」
夕張万里「よっしゃー! 朝までガンガンイクぜー!」
幕別薫「やっと見つけたわ!」
富良野真木「ちょっと!! 夕張さん」
小樽櫂「今日は私達のCSh練習に付き合ってくれるって言ったでしょう!!」
夕張万里「あーお前らー」
富良野真木「今回の件で間違いなく大増員が行われるはず・・・」
富良野真木「ここが一番の頑張りどころなのよ!」
幕別薫「女の子に戻れるチャンスなんだから、お願いよっ!!」
小樽櫂「私達と朝までガンガン頑張りましょう!!」
夕張万里「そういえばそういう約束もしたなぁ・・・」
夕張万里「よし、いいじゃねーか!! プレイ再開だ」
夕張万里「あっちもそっちも朝までヤリまくりだぜー!!」

〇研究機関の会議室
マキア・ローザリア「アイザック博士」
アイザック博士「やぁマキア君、トロン君、久々に仕事が忙しくなって大変だよ」
アイザック博士「のんびり研究をしていたかったんじゃがなぁ・・・」
マキア・ローザリア「連邦政府と管理者同盟から動員計画について質問が来ています」
マキア・ローザリア「どう回答しましょうか?」
アイザック博士「ふむ・・・」
アイザック博士「今回の総動員により宇宙で戦う兵士が数千万人徴兵されるわけじゃが・・・」
アイザック博士「αラグナ族の身体、つまり優秀な"VAF"を持つアバターの数が足らん」
アイザック博士「人間は簡単に生産できるものではないからのぅ・・・」
トロン博士「αラグナ族の"VAF"は出力がケタ違いです」
トロン博士「他にも不老、恒常性維持、疾病耐性、飢餓渇水耐性など様々な能力を持っています」
トロン博士「ヴァルキリーやカレイジャスを正常に運用する為にはαラグナ族が必要です」
アイザック博士「物理的な供給の方にも問題じゃ」
アイザック博士「αラグナ族が使うような高性能な機体はすぐに増産はできん」
アイザック博士「現在、列強各国で微弱な"VAF"でも操縦できる廉価な量産型の機体生産を開始しておる」
アイザック博士「"VAF"があれば宇宙で戦う兵士にはなれる。だから処女の娘であれば身体は誰でも良い」
アイザック博士「そこで動員者と地球にいる娘たちの身体を入れ替えて兵士とする」
アイザック博士「火力や機動力的にスペックはかなり落ちるが隕石群の大半である岩石や氷石は破壊できるじゃろう」
アイザック博士「あとは"VAF"に拠らないミサイルを使って運用する」
マキア・ローザリア「つまり世界中の若い女の子は、兵士に合格した男に身体を取られるということですね」
アイザック博士「兵士希望者は女性もおる。もっとも全体の5%程度じゃがな」
トロン博士「世界は50年前の『イ=スの奇跡』並みの混乱になるわ」
アイザック博士「平和と自由に慣れた人々には厳しいじゃろうな」
アイザック博士「しかし他に選択肢はあるまい」
マキア・ローザリア「わかりました。連邦政府と管理者同盟にはその案で計画書を提出します」
アイザック博士「ああ、よろしく頼むよ」
アイザック博士「ふむ・・・」
アイザック博士「これが人類最後の戦争にしたいものじゃのう・・・」

〇渋谷の雑踏
女子高生「ねーねー昨日のトレンドみたー?」
女子高生「みたみたー」
女子高生「BBKのジュン君が実は結婚してたって話だろー?」
女子高生「そーそー不潔よねー」
女子高生「推しだったのに裏切られたー」
女子高生「わかるー」
女子高生「ひどいよねー」
女子高生「あーまたスマホのアラートが鳴ってるー」
女子高生「あの隕石アラートとか面倒なやつ?」
女子高生「これオフにできないのー?」
女子高生「戦争とかアタシたちに関係ないのにねー」
女子高生「こんなウザいのブロックしてーわ」
女子高生「どこかで勝手にやってほしいよねー」
女子高生「わかるー」
兵士「えっ!?」
兵士「ここどこ!?」
兵士「俺が女子高生の制服を着てる!?」
兵士「スカート履いてる!!」
「ないっ!!」

〇オフィスのフロア
OL「課長ったらほんとムカつくのよー」
OL「上から目線で生意気でさー」
OL「わかるー」
OL「禿げてるし」
OL「社用車をぶつけたぐらいであんなに怒らなくもいいじゃない!」
OL「パワハラよ!セクハラよ!」
OL「わかるー」
OL「口臭いし」
OL「相手が死んだからってまずは事故を起こして不安な私の気持ちに寄り添うべきよね!」
OL「私たちは存在するだけで褒めてもらえる存在だって意識をアップデートして欲しいわ」
OL「わかるー」
OL「フケツだし」
兵士「あれっ・・・俺・・・」
兵士「なんだここ!?」
兵士「みんなどこー?」
兵士「うわっ!おっぱいでかっ!」
兵士「俺がパンスト履いてる!」
兵士「俺の前の女だ!」
兵士「このスカートの中は・・・」
兵士「つーことはこのパンストの下は・・・」
兵士「このパンツの中は・・・」
「ないっ!!」

〇結婚式場の階段
新郎「一生幸せにするよ!!」
花嫁「あなた・・・」
兵士「えっ!? ここは!?」
新郎「ど、どうしたんだい?」
兵士「なんで俺がウェディングドレスを着てるんだ!?」
兵士「誰だお前!?」
新郎「これはいったい・・・」
兵士「はっ!? もしや・・・」
兵士「ないっ!!」

〇幼稚園の教室
女の子「わーい」
女の子「きゃっきゃっ!」
女の子「たのしー」
女の子「ねーねー、こんどは絵を描いてあそぼー」
女の子「はーい!!」
女の子「いいよー」
女の子「できたー」
女の子「この絵かわいー!」
女の子「かわいー」
女の子「えへへ・・・」
兵士「うわっ!!」
兵士「俺の手が小さい!!」
兵士「視線が低い!!」
兵士「どうなってるんだ!?」
兵士「えっ・・・スカート!?」
兵士「も、もしかして・・・」
「ないっ!!」

〇王妃謁見の間

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コメント

  • 非常看好,“夫妻就是把劳累和痛苦减半,把健康和幸福加倍。”这句话挺好的,不知道我以后有没有机会,作者加油

  • 愛と勇気と希望の物語!(本当)
    笑いありスケベあり熱血あり友情あり蘊蓄ありメッセージ性ありの作品でした。

    とても面白かったです!

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