白の都

アシア

王城編 女王即位記念式典(脚本)

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〇西洋の城

〇貴族の応接間
ルセラン「──!?」
ルセラン「それは、どういう事ですか?」
ルセラン「──まさか!?」
ルセラン「では、ルセランとは──」
ルセラン「いえ、本物のルセラン様とは・・・」

〇貴族の応接間
ルセラン「・・・ついにやってきましたか」
ルセラン「女王即位記念式典・・・」
ルセラン「今日ですべて・・・」
ルセラン「いえ、最後に一仕事残っていますか・・・」
ルセラン「ルセラン様・・・」
ルセラン「全てはあなた様の為に」

〇洋館の廊下
ルイス「失礼いたします、ルセラン様」

〇貴族の応接間
ルイス「本日はルセラン様の即位して一年の記念式典でございます」
ルイス「準備を──」
ルイス「──ルセラン様!?」
ルイス「何をなさっているのですか!?」
ルイス「こんな日まで冗談は──」
ルセラン「──ルイス」
ルイス「お止め、・・・ルセラン様?」
ルセラン「貴方と話さなければならないことがあります」
ルイス「え?」
ルイス「い、いえしかし式典が・・・」
ルセラン「レオフォルディーネ殿下から許可は頂いております」
ルセラン「多少送れても問題はありません」
ルイス「え、いや、えぇ!?」
ルセラン「大切な話なのです」
ルイス「・・・ルセラン様?」
ルセラン「・・・貴方にそのように呼ばれるようになって、もう何年が経つでしょうか?」
ルイス「・・・幼い頃はまだ礼儀がなっておりませんでしたので、不敬なもの言いをした事があったやも知れません」
ルセラン「そうではありません」
ルセラン「──いつから私がルセランと呼ばれるようになったかという話です」
ルイス「え?」
ルイス「・・・あの意味が?」
ルセラン「貴方も輸血療法はご存じてすよね?」
ルイス「え?」
ルイス「は、はい、存じていますが・・・」
ルセラン「では血液型という言葉は?」
ルイス「あの、ルセラン様? 何を?」
ルセラン「人の血液にはいくつか種類があり、その対応した血液を輸血では使用しなければいけないそうです」
ルセラン「故に王族の血液型の把握は必須であり、技術が確立した後に王族の親族全て検査がありました」
ルセラン「これが数年前の事です」
ルイス「あの、何を・・・」
ルセラン「その祭に発覚しました」
ルセラン「王族に1人、理論的にあり得ない血液型の人間がいる事を」
ルセラン「そう、そのルセランであった筈の人間は、前女王夫妻の子供としてはあり得ない血液型をしていました」
ルイス「──え?」
ルセラン「理論が間違っているのか」
ルセラン「親族の検査でミスが生じたのか」
ルセラン「もしくは前女王の不貞があったのか」
ルセラン「疑念は紛糾しました」
ルセラン「既に前女王夫妻は亡くなっているため、確実な算出は難しかった」
ルセラン「この事に間違いがあってはならない」
ルセラン「故に慎重に、確実に、そして隠密に物事は調べられて行きました」
ルイス「ルセラン様?」
ルセラン「・・・そして結果は」
ルイス「ルセラン様!?」
ルセラン「現ルセランはルセランではあり得ない、という事です」
ルイス「──っ!?」
ルセラン「で、あるのならば」
ルセラン「話は簡単です」
ルセラン「いつルセランはルセランで無くなったのか」
ルセラン「・・・そこからはルイスの両親の元に話を聞きにいけば種明かしはすみました」
ルイス「事故・・・」
ルセラン「はい」
ルセラン「前女王夫妻、そして護衛の兵もすべて死亡」
ルセラン「生き残ったのはまだ乳飲み子であったルセラン」
ルセラン「それを助けたのはルセランと同じ髪と目をもった子供、ルイスの両親」
ルセラン「全てルイスの・・・」
ルセラン「いえ、私の両親が自白した事です」
ルイス「待って・・・」
ルセラン「大罪人を死刑にし、関係者に緘口令を引いたとしても問題は残ります」
ルセラン「すなわち、ルセラン女王です」
ルイス「待ってください!!」
ルセラン「・・・」
ルイス「そ、それはおかしいです、変です・・・」
ルイス「仮にそれが本当だとしたら、今この場にいる貴方は・・・」
ルセラン「絶対に守らねばならないことがありました」
ルセラン「1つ、ルセラン様は最初から1人だけ」
ルセラン「王家に間違いは無かった」
ルセラン「だから、・・・本当のルセラン様と偽物が入れ替わる準備が」
ルイス「入れ替わり・・・」
ルセラン「誰も気付いてはならぬ」
ルセラン「誰にも知られてはならぬ」
ルセラン「全ては『ルセラン』様を女王にするために」
ルセラン「期限は、・・・長くなってしまいましたね」
ルセラン「1年も過ぎてしまいました」
ルイス「・・・だから、私に女王の入れ替わりを?」
ルセラン「・・・」
ルイス「・・・だから、周囲に私と区別が着かないように?」
ルセラン「・・・」
ルイス「全ては、今日の為に?」
ルセラン「・・・」
ルセラン「貴方様は・・・」
ルセラン「ルセラン様は、演技が苦手なようでしたから」
ルイス「──っ!?」
ルセラン「さて、そろそろ時間ですね」
ルセラン「お召し物をお変えいたします」
ルセラン「あなた様に相応しい物に」
ルイス「貴方は・・・?」
ルイス「貴方はこれからどうするの?」
ルセラン「・・・さて」
ルセラン「大罪人の娘にして主犯、親と同じくお縄について・・・」
ルイス「殿下の所に行きましょう、早く!!」
ルイス「それだけは絶対に!!」
ルセラン「・・・」
ルセラン「冗談ですよ・・・」
ルイス「──えぇ!?」
ルセラン「・・・誠に心苦しくありますが恩赦を頂いております」
ルセラン「今までの女王としての行動、そして私も被害者の1人という事で」
ルセラン「赤子を罪に問うわけにはいかないそうです」
ルセラン「ですので、まぁ、明日からはタレイアにある王家の別荘の管理を言い付けっております」
ルセラン「・・・本当に、お優しい方です」
ルイス「・・・じゃあ」
ルセラン「はい」
ルセラン「ルイスの女王のお側付は今日でお暇ですね」
ルイス「・・・」
ルセラン「さ、では改めて、お手を」
ルイス「私は・・・」
ルセラン「・・・ルセラン様、覚えていますか?」
ルセラン「タレイアで私が言ったこと」
ルイス「え?」

〇湖畔の自然公園
ルセラン「・・・ルセランはきっと立派な女王になるわ」

〇貴族の応接間
ルイス「あぁ・・・」
ルセラン「・・・願わくば」
ルセラン「どうか願わくば、私達の子供達は何のしがらみの無く、笑い合うことができる国をお作りください」
ルセラン「これが私の最後のわがままです・・・」
ルイス「・・・」
ルセラン「・・・では」

〇朝日

〇貴族の応接間
ルイス「・・・できました、ルセラン様」
ルセラン「えぇ・・・」
ルイス「ルセラン様、そのような顔では臣下や民に不安を与えますよ?」
ルセラン「・・・分かっています」
ルイス「・・・」
ルイス「・・・朝日ですね」
ルイス「私はこの朝日を見るのが好きでした」
ルイス「けど、同時に嫌いでした」
ルセラン「──え?」
ルイス「いつまでこのここからの景色が見れるか分かりませんでしたから」
ルイス「けど」
ルイス「けど最後に、貴方様と見れて良かったです」
ルイス「では、ルセラン様」
ルイス「皆がお待ちです」
ルイス「いってらっしゃいませ」
ルセラン「・・・えぇ」
ルセラン「行ってきます」
ルイス「・・・」
ルイス「・・・さようなら、ルセラン様」

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