先生! 恋愛小説で殺人事件を起こさないでくださいっ!

柚月たみ子

第2話 ミステリ脳に恋は難しい(脚本)

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〇学校の屋上
神崎イチゴ「れ、恋愛小説? 東雲くん、ミステリー作家って言ってなかった?」
東雲栄「栄でいい、イチゴ」
神崎イチゴ「う、うん」
神崎イチゴ(ご、強引~☆ でも、オレ様系ヒーロー、嫌いじゃないよっ!!)
東雲栄「まあ、イチゴが驚くのも無理はない。 しかし、これには瀬戸内海よりも深い理由があってだな・・・」
神崎イチゴ「深そうだけど、狭そうでもあるね・・・」
東雲栄「まあ聞け。最近、既刊のミステリ小説の売り上げが悪くてな」
東雲栄「新境地・・・つまり恋愛小説に挑戦してみろと担当に言われたんだ」
神崎イチゴ「出版不況の時代だもんね」
東雲栄「俺の実力不足だ」
神崎イチゴ(わあ、ストイックなんだ。ちょっと素敵かも・・・!)
神崎イチゴ「で、でも恋愛小説を書くためのお手伝いって・・・なんでアタシなの?」
東雲栄「イチゴは恋愛漫画が好きなんだろう? だから、恋愛のことに詳しいと思ったんだ」
神崎イチゴ「な、なんでアタシが、恋愛漫画が好きって知ってるの!?」
神崎イチゴ(やだっ! じつは栄くんって、アタシのストーカーだったの!? こ、怖いっ! 可愛いって罪ねっ!)
東雲栄「ん? イチゴが忘れてた漫画が恋愛ものだったから、そうだと思ったんだが・・・違うのか?」
神崎イチゴ「・・・違いません」
神崎イチゴ「で、でも現役高校生ミステリ作家が書く恋愛小説かあ。話題性バッチリだね」
東雲栄「ああ。だが・・・俺は、根っからのミステリ作家だ。脳がすでにそうなっている」
神崎イチゴ「自分で言い切っちゃうんだ」
東雲栄「こうしてイチゴと話している瞬間も、屋上から飛び降りても死なない方法を考えているほどだ」
神崎イチゴ「まだ考えてたんだ・・・」
神崎イチゴ「でもそれなら、普通の女子高生だと思っていたら実は天使で・・・っていう設定なら、屋上から飛び降りても死なないよ!」
神崎イチゴ「そしてその天使が実は悪魔だった同級生と禁断の恋に落ちて・・・」
東雲栄「なるほど! そういう考えもあるのか!」
東雲栄「さすがイチゴだ! 俺の目に狂いはなかった!」
神崎イチゴ「えへ☆ 照れちゃうよ~」
東雲栄「というわけで、恋愛小説を書く為の手伝いをして欲しい!」
神崎イチゴ「お断りします」
東雲栄「な、何故だ!? 何か不満でもあるのか!?」
神崎イチゴ「うーん・・・栄くんと一緒にいると、疲れるからかな☆」
東雲栄「・・・もうちょっとオブラードに包もうか」
神崎イチゴ「あは☆ ごめんごめん♪」
神崎イチゴ「でも、栄くんの創作活動に付き合ってたら、漫画を読む時間、なくなっちゃいそうだし」
神崎イチゴ「だから、ごめんなさいっ!」
東雲栄「ふう・・・ならば奥の手か」
神崎イチゴ「奥の手?」
東雲栄「これを見ろ」
  そう言い、栄は自分のスマホをイチゴに差し出した。
  そこには、栄がハートの眼鏡をかけた女性と仲良くパフェを食べている写真が表示されている
神崎イチゴ「え、栄くん、彼女いたの・・・?」
神崎イチゴ(な、なんだろう。この敗北感・・・)
東雲栄「彼女じゃない。よく見ろ。このハートの眼鏡、どこかで見たことないか?」
神崎イチゴ「え・・・あっ!?」
神崎イチゴ「栄くん、その漫画のカバーの折り返し部分を見せてっ!」
神崎イチゴ「もちろんだ」
  栄は持っていたイチゴの漫画を開き、カバーの折り返し部分を見せる。
  そこには、ハートの眼鏡をかけた著者の近影が・・・。
神崎イチゴ「あああああああー!!」
東雲栄「ふっ・・・吉良めきこ。女子中高生からの絶大な支持を誇る新進気鋭の少女漫画家・・・」
東雲栄「そして、俺の担当さんと、とても仲が良い!」
神崎イチゴ「なっ・・・!?」
東雲栄「担当さんとの打ち合わせの時に、丁度吉良先生も同席していてな。 これは、その時の写真だ」
神崎イチゴ「・・・う、羨ましい」
神崎イチゴ「めきこ先生って、ドロドロの三角関係から溺愛されて困っちゃう系まで幅広く描いてて、それが全部大ヒットしてて!」
神崎イチゴ「アタシ、大ファンなのっ!」
東雲栄「サイン、欲しいだろ?」
神崎イチゴ「ほ、欲しいですっ・・・!」
東雲栄「担当さん経由で頼んでやる。だから・・・」
神崎イチゴ「待って!」
東雲栄「?」
神崎イチゴ「アタシ、こういう展開、漫画でいっぱい見てきたの」
神崎イチゴ「つまり、サインの代わりに恋愛小説を書く手伝いをしろってことだよね?」
東雲栄「ご名答だ」
神崎イチゴ(や、やっぱり・・・! でも、恋愛漫画ではこういうの言い出すのはイケメンのヒーローなんだけど・・・)
神崎イチゴ(現実は・・・イケメンだけど変態ミステリ脳のヤバイ人だったよ・・・)
東雲栄「ちなみに、この本はイチゴが途中で逃げないよう、俺が預かっておく」
神崎イチゴ「ええっ!? 続きが早く見たいんだけど!?」
東雲栄「ならば、俺が早く恋愛小説のインスピレーションが湧くよう、手伝ってくれ」
神崎イチゴ「ううっ・・・」
神崎イチゴ(恋愛漫画では、ここから恋が始まるのがセオリーだけど・・・)
神崎イチゴ(アタシ、いくらイケメンでも、この人のこと好きになれる自信ないよお~!!)
神崎イチゴ(こうなったら、ちゃちゃっと手伝って、早く漫画返してもらおう・・・)

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