12面 海の音を届けてね(脚本)
〇水中
今、海の底より音が届いたよ
うん、海の音
うん、海の音
聞きねぇ
うん、聞きねぇ
泡が一粒、浮き上がってきたのを
そのように描く、少女マンガか
(少女姉妹かな)
・・・・・・・・・
回(転)して得をする道
回して逃げる道
〇未来の店
──折中さんに仕事を教えてもらう。
ありがたいんだけど複雑な気持ち。
油っぽいローションか何か
首に塗り伸ばす俺
江藤鉱(折中先輩か 俺後輩だもんな)
江藤鉱(俺のが知ってることなんて わずかだし・・・)
(何人か座ってる地べたフロア)
星羽さんは、
葵星羽「ちゃんと教えてあげなよーっ」
折中珠未「うーっすっ」
くらいのやりとり。
江藤鉱(うーん、これじゃなー 恋仲なんてなれんのかな)
江藤鉱(でもちゃんと教えてもらった方が いいに決まってる)
足元床に透明の液体
ワックスか何かなのかな、広がって
そこ走るのかなみんなで
(滑るに任せて?)
・・・一二〇〇円て高いと思わない?
って言ってケンカしないで
江藤鉱((ケチつけないことか))
たなからボタもち
江藤鉱(『わーいっ』でいいよ)
江藤鉱(クリさんと『わーい』でいい)
〇未来の店
江藤鉱「クリ後?」
葵星羽「だって君の後ろが大変なんだもの」
江藤鉱(星羽さんは他の人で手いっぱいなのか)
クリさんは一人、給水を担って
プラコップに注いでいたりする。
江藤鉱(一杯もらいたいけど そんなことよりな)
江藤鉱(助けていいならそうしたい)
〇諜報機関
35:00
──以内に脱出?
この小さいモニターで
3D空間を進んでか。
向うはサラサラさせるつもりはない。
江藤鉱(えっ)
江藤鉱(これ持っていっちゃっていいの?)
元素系(だったっけ?)手の平大の
ヤオアニぬいぐるみくらいのそれを
クーラーボックスくらいの
開いたトランクの中から
目の前で抜き取っていいの?
(重要パーツじゃないの?)
江藤鉱(逃げ出せるわけないと 思ってんだな、くそ)
?「・・・大丈夫大丈夫、平気よ」
?「こんなの最初にやった 自分探しくらいのものだと思えばいいのよ」
江藤鉱(そうか・・・果てしない迷宮の中を)
深く進んでいって
深く進んでいって
〇電脳空間
珠未姫
・・・って思いたい?
おでこにティアラをつけた
平べったいグラフィックのお姫様に
たどりつければいい
〇トラックの荷台
──九宝さんが運び出してる
マネキンサイズの素材、何かしらん
(肌色で継ぎ目は目立つけど)
(トラックの荷台から
降ろすように受け取って)
江藤鉱(ビニール感あるけど)
江藤鉱(グッと押しつけられてくると 肌の感じもするな)
江藤鉱「そのまんま もらっちゃいたいくらいですけどねーっ」
江藤鉱(あーこれいいな 十分だなこれで)
江藤鉱(あーいかん 俺変な気分起ってるな)
〇簡素な部屋
と、九宝さんとくっついちゃってる。
背中合わせ、手もつないじゃってる?
それをにぎっにぎっとやっていくと
弾んでいって手つないで振るような・・・
そんな映画の若い男女の一幕も浮かぶ。
(フラットなカーペットスペース
棚前に二人座って)
部屋の中だけど、浮かれてないし
とか、何なんだ。
江藤鉱(俺は、身体に押しつけられたのは そのマネキンか)
江藤鉱(九宝さんわかっちゃうだろー)
江藤鉱(九宝さんも嫌がって離したりしないし)
江藤鉱(俺は折中さんが、なのに・・・)
ほとんど観客はない
結婚式を挙げよう
〇村に続くトンネル
(・・・目的は?)
(いずれにせよ
あなたをひっこめるだろう)
未来から来た者を現在から
それは未来から来た者も承知していた
〇住宅地の坂道
・・・UFO研究家と
未来から来た者が傍にいて
折中珠未さん、右に寄り添って
もたれてくるので、
もう手を握ってしまう。
江藤鉱(ちょっと変な握りだけどいい)
二人で坂を上る。
江藤鉱(坂の上、その向こうには 海とかあるのかな)
江藤鉱(感極まるなー)
あなたの声ならぴったりなんじゃないの?
江藤鉱「一緒に輪を閉じて」
江藤鉱「お互いの在り方を無くして」
折中珠未「その先で、うちに何て言ってくれるの?」
江藤鉱「何よりです」
折中珠未「変なのー」
折中珠未「・・・・・・」
折中珠未「仲良くなりたいよ」
〇未来の店
──ヤオバザでは雨だからか
聞いてないじゃんけん大会やってる。
壁には紙作りの二つ折り飛行機
何か書いてあるのか吊るされて
じゃんけん大会優勝したのは、
36歳おでこ拡張した真横すだれの男性。
俺と4つしか違わないのかー
でもうれしいんじゃないかな。
〇備品倉庫
川浦さん。倉庫で、
川浦 凪「じゃああとはこれとこれ出して・・・」
俺、ちょうど倉庫から店舗に出るとき、
江藤鉱(そんなにやることはないっぽいな)
って思ってたら川浦さんが
コンテナ転がしてきたので、
扉開けてエスコート。
川浦 凪「あーりがとー」
えらい喜んでくれたり。
星羽さんと入れ違い、
俺は、こんにちはー言えん、
江藤鉱「オケもごん、ようん」
ごもっちゃうけど、
星羽さんも愛想よくしてくれて。
江藤鉱(上掛けいらないな)
江藤鉱(みんな店舗の人は脱いでるしな)
江藤鉱(みんな大好きだ)
江藤鉱(もこもこ着ごもるの脱ぐよ)
〇結婚式場の入口
・・・珠未くんとこの
おっさんに賭けている
江藤鉱(おっさん?俺だよ、薬師丸だよ)
平板なスペースに二人
立たせて、すっか
江藤鉱((じゃあ、結婚?))
?「無事、届けてね、回り道でも」
江藤鉱「ラジャー」