罪  恋―TSUMIKOI―

望月麻衣

エピソード21 SpecialⅡ(脚本)

罪  恋―TSUMIKOI―

望月麻衣

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〇高層ビル群
  私たちは手をつないで、歩き出す。
梓「久弥の家はどの辺なの?」
久弥「ここから見えるよ」
  と指したその先は、高層ビル。
  
  いわゆるタワーマンションだ。
  なんとなく、以前久弥が住んでいたビルに似ている。
梓「えっ、あそこに?」
久弥「じーさんの持ち物なんだ」
  なるほど、と納得する。
  
  
  なんたって、高宮グループだ。

〇高層ビル群
  そのまま私たち、マンションの敷地内に足を踏み入れた。
  近くに来るまで分からなかったが、外灯に噴水にベンチと、ちょっとした公園のようになっている。
  近くのビルには様々なクリニックや美容室、スポーツジムが入っていた。
  
  
  世界的に有名なカフェも側ある。
梓「すごい。この界隈だけで、なんでもできちゃうね」
  そんな話をしていると、
「久弥っ」
  ベンチに座っていた女性が突然立ち上がって、駆け寄って来た。
  不穏な予感がして、
  私の心臓が嫌な音を立てる。
「会いたかった」
  目を潤ませながら近付く、髪の長い、綺麗な女性。
  全身、ブランドものに身を包みながらも、それが嫌味ではない。
  
  
  見るからに『お嬢様』だ。

〇高層ビル群
  バクバクと鼓動がうるさい。
  
  
  そんな私の動悸を余所に、久弥はニッコリと笑みを浮かべた。
久弥「こんばんは、 どうされました?」
「久弥が全然会ってくれないから・・・」
  彼女はそう言ったあと、私を一瞥して、険しい表情を見せる。
「・・・この方は?」

〇高層ビル群
梓「久弥、私・・・ 今日は帰った方がいいかな」
  なんだか気圧されて、
  少し後退りしたその時、
  久弥がしっかりと私の肩を抱いた。
久弥「彼女は、河村梓さん。 僕の大切な人なんです」
  彼女は虚を衝かれたように目を見開き、
  
  
  顔を真っ赤にして、逃げるように駆けだした。
梓「良かったの?」
久弥「うん、何も問題ない」
梓「今の人は?」
久弥「パーティで人に紹介されて、 連絡先を渡されたんだ 俺は渡してないけど」
梓「それだけ?」
久弥「それだけ」
  と、久弥はサラリと頷く

〇高層ビル群
久弥「よく、勘違いさせるみたいなんだ。こうしてマンションの前や会社に押し掛けられることが多くて」
  思わず納得してしまった。
  だから、あの秘書さんの眼差しが厳しかったのかもしれない。
久弥「って、こんな風に言っても、信じられなかったりするかな?」
  苦笑を浮かべる彼に、
  ううん、と首を横に振った。
梓「久弥は私に嘘をついたことがないような気がするから」
  そう、17歳のあの頃。
  私と会う前に、誰かと寝ていたりしても、悪びれもせずにその事実を伝えていた。
  『大丈夫、さっきしていても、また梓とできるから』
  あの頃の久弥の言葉が脳裏をかすめ、
  
  
  急に頬が発火するかのように熱くなった。

〇空
  私たちそのままエントランスに入り、エレベータで最上階に向かう。
  最上階には、部屋が一つだけ。
  
  
  ペントハウス、というのだろう。
  どうぞ、
  
  
  と開いた扉の向こうには、広々としたリビングが見える。
梓「素敵だけど、やっぱり シンプルな部屋なんだね」

〇おしゃれなリビング
久弥「とりあえず、座って。 ワインでいいかな」
梓「あ、ありがとう、手伝うよ」
  と私は久弥と共に
  キッチンに向かう。
  生活感がまるでない、
  物が少ないッチンだった。

〇システムキッチン
久弥「梓は今も実家?」
梓「ううん。 ずっと実家だったけど、今の法律事務所に就職が決まってから、一人暮らしをはじめたの」
久弥「梓の部屋にも行ってみたいな」
梓「・・・ワンルームの小さな部屋だから。その割に物も多くてゴチャゴチャしてるし」
  久弥の家のキッチンを少し大きくしたくらいだよ、と洩らして、思わず目をそらした。
  こんな部屋に住んでいる今の久弥には、見せられない、
  
  
  なんて思ってしまったり。

〇システムキッチン
梓「あ、なんだか、牡蠣の燻製とかの缶詰が色々あるんだね。全部ギフトでもらったもの?」
  キッチンの棚を眺めながら話題を変えると、
  不意に後ろから強く抱き締められた。
  甘い香りに包まれて、
  
  
  ドキン、と鼓動が跳ねあがる。
久弥「小さく狭い部屋、いいな。こうやって手を伸ばしたら、すぐに捕まえられる」

〇システムキッチン
梓「えっと・・・久弥?」
久弥「俺、梓ん家、 転がり込んで住みついてもいい?」
梓「うちには大人2人が住めるスペースなんてないよ・・・」
  ドキドキしながらそう答える。
  緊張に身体が強張るようでありながら、この腕の中で溶けてしまいそうな、
  
  
  
  不思議な感覚。

〇システムキッチン
久弥「んー、それじゃあ、梓がこの家に転がり込んで来てくれたら」
  と言って、耳を甘噛みする。
  ビクンと身体が跳ねる。
久弥「支社長室で押し倒したかったのを必死に堪えてたの、知ってた?」
  抱き締めた腕に力を込められ、
  
  
  甘苦しく胸が詰まった。
  そのまま重なる唇に、
  
  何かが決壊して、しがみつくように応えてしまった。
  互いに、言葉もなく、
  からめとるように、
  
  
  貪るように、
  キスを繰り返す。

〇赤いバラ
  ずっとずっと焦がれていた。
  もう一度だけ久弥に会いたいだなんて、願っていたのは、ただの強がりだ。
  こうして、キスをしたかった。
  私のすべてを奪った、
  
  
  
  魅惑の口付け。

〇赤いバラ
  そのままゆっくりとフローリングに押し倒される。
  キッチンのワインの瓶が、カタンと倒れて、
  
  
  真っ赤なワインが私の体に落ちて来た。
  ごめん、汚しちゃって、
  と耳元で囁かれたけど、
  
  
  そんなことはどうでも良くて。
  ただ、このまま強く抱き締めて欲しかった。

〇赤いバラ
  ブラウスのボタンを外して、肌につたったワインを舐める。
  芳醇な葡萄の香り。
  熱くもしなやかな舌先。
  身体を縁取る長い指。
  すべてに眩暈がする。

〇赤いバラ

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コメント

  • 二人の幸せな未来が読めて良かった( *´艸`)

    梓も久弥も頑張ったよね

    麻衣先生の多才さに、改めて感心しました

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