〇豪華な部屋
　　義兄に告白されてから、数日が過ぎた──
　　今日は、義弟（おとうと）が下宿先から
　　帰ってくる。
　　家族３人で食事なんて、久しぶりだ。
　　私は、朝からご機嫌に、鼻歌なんて歌いながら、義弟を迎える準備をしていた。
アルフレッド「テオが帰ってくるのが、そんなに嬉しいか？」
リア「嬉しいですよ。帰ってくるのもそうだけど、３人揃うのは久しぶりだもの──」
アルフレッド「そうか・・・」
　　義兄は、あれ以来、何も変わっていない。
　　私を恨んでいる・・・と言ったはものの、
　　言動はまったく変わっていないのだ。

〇豪華なベッドルーム
　　たしかに、
　　私たちの関係は間違っている・・・
　　でも、それ以外は。
　　いつも通り、優しい義兄だった。

〇豪華な部屋
　　恨んでいるなら、もっと暴力をふるったり、乱暴な言葉を使うものと思っていたが・・・
リア（なんなの・・・？ 私で寂しさを紛らせてるだけ・・・？）
リア「来たわ！」

〇おしゃれな玄関
テオドール「姉さん、ただいま」
リア「テオ、おかえりなさい」
　　私たちは、再会を喜んで抱きしめあった。
アルフレッド「テオドール、おかえり」
テオドール「ただいま、兄さん」

〇豪華な部屋
リア「大学生活はどうなの？　楽しんでる？」
テオドール「楽しんでるよ。 下宿先の人たちとも仲良くなったし・・・」
リア「テオは、誰とでも仲良くなれるものね」
　　テオは、とても明るくて社交的だ。
　　家にいると、花が咲いたように周りが明るくなる。
アルフレッド「・・・・・・・・・・・・」
　　義兄は、少し離れた場所で私たちを見ていた。
テオドール「兄さん。兄さんも、何か話してよ。 仕事の事とか、恋の事とか！」
リア（こ、恋の事・・・!?）
アルフレッド「いや・・・。俺は、いい」
アルフレッド「少し仕事が残ってるから、２人で話して いなさい。夕飯は一緒に食べる」
テオドール「ちぇー。つまんないなぁ・・・ せっかく兄弟水入らずなのに」
リア「お兄様は、忙しい人だから・・・」
テオドール「まあ、いいや。 ところでさぁ・・・姉さん」
リア「な、なによ、にじり寄ってきて！」
テオドール「兄さんとは、どうなってるの？」
リア「ぶふっ!!」
　　突然の質問に、私は、お茶を噴きかけた。
リア「ど、どうなってるって・・・？」
テオドール「やだなぁ。 何のために俺が家を出たと思ってるの？」
テオドール「兄さんの気持ちは、 とっくに気づいてるでしょ？」
リア「なっ・・・！ テオ、そんなつもりでこの家を出たの!?」
テオドール「俺は、兄さんも姉さんも大好きだから」
テオドール「２人がうまくいってくれたら、 俺も嬉しい」
　　なん・・・っていい子なの、テオ!!
　　本当、お兄様もテオを見習ってほしいわ!!
リア（でも、どうしよう・・・）
リア（テオに、 お兄様の事を相談してみる・・・？）
リア（私は、お兄様に愛されてるんじゃない。 ・・・恨まれてるんだって）
リア（でも、テオはお兄様の事を尊敬している。 下手に相談すると、幻滅させるかもしれない・・・）
テオドール「・・・ん？　どうしたの姉さん？」
リア「ううん、なんでもない」
リア（・・・やっぱり、やめておこう。 変に心配かけるのもよくないし）

〇豪華な部屋
　　その後、腕によりをかけて作ったメニューで、食事をした。
リア「お兄様、 今日はテオも手伝ってくれたのよ」
アルフレッド「そうか・・・」
テオドール「みんなで食べると、おいしいよね！」
アルフレッド「・・・そうだな」
リア（すごく、楽しい！ こんな時間は久しぶり────）
リア（でも・・・）
リア（お兄様、ずっと無表情・・・ 楽しくないのかしら・・・？）
テオドール「姉さん、このソテー、すごくおいしいよ！ ねえ、兄さんもそう思うでしょ？」
アルフレッド「そう・・・だな・・・」
リア（・・・あれ？ いつもは、もっと褒めてくれるのに・・・）
リア（もしかして、本当に楽しくない!?）
リア（えぇ〜っ、どうして〜!?）

〇豪華な部屋
　　その後、仕事を終えた義兄も交えて、
　　カードゲームなどをした。
リア「あーっ！　また負けた!!」
リア「もう、ふたりとも、強すぎ!!」
テオドール「姉さんは、ウソをつくのが下手なんだよ」
リア「そ、そんなことないわよ！」
リア「お兄様も、なんとか言って！」