エピソード2(脚本)
〇大会議室
玲奈「あなたもフェミニストなのよ」
二見明日香「フェミニスト!?️」
〇大会議室
わたしは就職活動の最終面接で
三浦涼子、中村翔太、
高見沢玲奈と知り合った
〇レトロ喫茶
最終面接の後、四人でカフェに行った
涼子「・・もうダメ、わたし不採用確定ね」
玲奈「そんなことないよ、大丈夫!」
涼子「最終面接なのに話題はフェミニストのことばかりで、二見さんと高見沢さんばかり話して」
涼子「わたしなんてもうダメだよ」
翔太「そーだよなぁ、俺も同じダメかなぁ」
玲奈「大丈夫!、みんなで合格しようよ!」
二見明日香「でも合格は4人でもう一つのグループからも選ばれるのでしょ?」
二見明日香「この中からも不採用の人がいるんだよね?」
玲奈「大丈夫! ここにいるみんな合格する可能性もあるってことよ!」
二見明日香「・・・・。」
高見沢玲奈に嘘はなかった
彼女の言葉は心からのものだった
彼女はほんとうにこの世界すべてを愛しているのだろう
〇ビジネス街
一週間後、わたしに採用の通知が届いた
〇ビジネス街
そして驚いたことに
〇オフィスのフロア
三浦涼子、中村翔太、高見沢玲奈も
みんな採用されたのだった
涼子「高見沢さんの言った通りね! まさかみんな採用なんて!」
〇小さい会議室
それからわたしたちは
みんな一緒に社内研修を受け
〇ファミリーレストランの店内
ランチや晩御飯もよく一緒した
高見沢玲奈の話題は
フェミニズムのことばかりだった
ただ話題がそればかりなので
時に、涼子と翔太を疲れさせた
〇女子トイレ
そして、三浦涼子がわたしと同じで
生理が重いことを知った
涼子「ごめんね、トイレに付き合わせちゃって」
二見明日香「いいよ、わたしも重いから」
二見明日香「それにずっと玲奈と話してたら フェミニストにされちゃう」
涼子「ふふ、 たしかに玲奈って疲れるところあるよね」
涼子「そういえば、明日香って 女子高、女子大だよね?」
涼子「男の人と付き合ったことある?」
二見明日香「えっ?」
二見明日香「・・・・・。」
涼子「ふふ、無理して言わなくていいよ」
これが・・・女子同士のマウント?
〇オフィスのフロア
やがて配属が決まり
高見沢玲奈は広報部
三浦涼子は業務部
わたしと中村翔太は営業部に配属された
〇研究施設のオフィス
配属後、
担当企業への挨拶と仕事の割り振りを受けた
そして担当企業の社外研修を受けるように
言われた
二見明日香「泊まりで四日も研修を受けるんですか?」
高畑「岩見海運さんは取引先の新人に 研修に来るよう言うんだよ」
高畑「昔ながらの漁業を知ってもらうためにって」
二見明日香「わかりました」
高畑「毎日仕事終わりは飲み会だから注意して」
二見明日香「注意?」
課長「お得いさまの研修だから飲み会に参加の方がいいが、違うって思うことはしなくていい」
二見明日香「違うって思うこと?」
課長「もし断ったら相手を怒らせてしまうようなことでも、違うって思ったらしなくていい」
課長「無理はしなくていい、そういうことだ」
二見明日香「わかりました」
〇海岸沿いの駅
三日後、わたしは岩見海運の研修に参加した
〇島の家
岩見与兵衛「おう! ねーちゃん! A Iシステムさんの新入社員か!?️」
二見明日香「・・・・・。」
二見明日香「はい、そうです」
岩見与兵衛「俺が岩見海運の岩見だ! よろしくな!」
岩見与兵衛「おい! 母さん! 挨拶しろや!」
岩見やまな「こんにちは、岩見の家内のやまなです」
岩見やまな「よろしく」
二見明日香「・・・よろしくお願いします」
岩見与兵衛「じゃ、母さん! このねーちゃん、家に案内しておいてくれ」
岩見やまな「わかりました、こちらにどうぞ」
〇古風な和室(小物無し)
岩見やまな「明日香さん、若い女の子に汚くて狭い部屋でごめんねえ」
二見明日香「お気になさらず」
岩見やまな「じゃ、用意ができたら漁港に案内しますので」
二見明日香「ありがとうございます」
〇堤防
わたしはやまなさんに案内されて漁港に行き
〇漁船の上
漁船に乗って漁業を見学した
岩見与兵衛「よーほーいさー」
男性B「やーさー、ほいやさー」
〇倉庫の搬入口
ただ、一番驚いたのは
やまなさんを含めた老齢の女性が
魚の裁断、魚の冷蔵庫入れ、定置網の修理、釣り糸の解きとずっと働いていたことだった
その手は荒れに荒れ
皮膚は固くこわばっていた
岩見与兵衛「おう! ねーちゃん! 今日は大漁だから飲み会だ! 付き合えや!」
岩見やまな「父さん、若い女の子に無理はやめてやね」
岩見与兵衛「はは!、わかってるよかーさん 今時はあほなテンダー平等とか天ぷらとかあるからな!」
岩見やまな「いつの世も漁師のペースで飲ませたらいけませんよ」
岩見与兵衛「わーったよ! かーさん!」
女の人たちは引き続き網の修理を行なっていたが、男の漁師さんは飲み会に出かけた
〇大衆居酒屋(物無し)
居酒屋で大漁のお祝いとわたしの歓迎会が催された
「乾杯ー!」
岩見与兵衛「・・・・・。」
男性B「・・・・・。」
二見明日香「・・・・・。」
岩見与兵衛「おい!、ねーちゃん!、ほら!」
二見明日香「なんでしょう?」
岩見与兵衛「いや・・・なんかあるだろ?」
漁業長「岩見さん、この子は今時の「サラダ取り分けしない女子」だよ、だからわかってないよ」
岩見与兵衛「なんだよー つまんねー、テンダー平等ってやつか!」
岩見与兵衛「チッ!」
皆(漁師・男性)の気分を害したのか
わたしは早々と帰ることになった
〇大衆食堂
岩見与兵衛「まーったく今時の新入社員はダメだな! 飲んで深める絆ってのをわかってねー!」
漁業長「まー、酌をしないのはいいけど、鍋を取り分けるくらいは相手への敬意だからね。。」
岩見与兵衛「そーだろ!?️、漁業長、ほんと今時の女はその辺わかってねーよ!、な!」
二見明日香「・・・・・。」
〇古風な和室(小物無し)
わたしが岩見さんの家に戻ると、やまなさんがお風呂と食事の準備をしてくれた
岩見やまな「ごめんねー 漁師の集まりって怖かったかい?」
二見明日香「いえ、大丈夫です」
岩見やまな「そうかい、いろいろすまないねえ」
二見明日香「やまなさんはずっと漁港で働いて、家事もしているんですか?」
岩見やまな「それが漁師の嫁だからねえ」
二見明日香「これは?」
〇寂れた村
婚姻の鐘だ! 花嫁道中だ!
どこの花嫁だ!?️
山の向こうの花嫁らしいぞ!
子供B「花嫁さんが来るんだよ!」
子供A「どんな花嫁さんかな!」
花嫁の嫁ぎ先は漁師らしいぞ!
山の娘が漁師の嫁なんて務まるのかねえ
漁師なんて飲む、打つ、買う、
ろくな人間じゃないよ
それよりも山の農家は苦しいんだよ
子供A「花嫁さんだ!」
子供B「すごくきれいだよ!」
白無垢に青の色味か! 洒落てるねえ!
山の農民風情が無理をして!
いや、これは山から海に嫁がせるって
決意さな!
・・・もう、親元には帰ってこない
・・・そういうことかい?
・・・そうだな、それがあの花嫁衣装さ
〇山中の坂道
ね、お父さん!
あの花嫁さんはどこへ行くの?
漁師の村は山道、獣道を通って
山から降りていくんだ
男A「脚は大丈夫か?、疲れてないか?」
やまな「・・・はい」
男B「それでは進もうか」
やまな「・・・はい」
お母さん、花嫁衣装で旅するってこと?
旅じゃないさ、二日二晩の花嫁道中さ
その道中の最後に待つのは、旦那様なんだよ
やまな「・・・?」
男B「花嫁よ、海に近づいたようだ」
やまな「海?」
男B「これが波の音だ」
男A「・・・この大きな音が海?」
男B「波の音だ」
やまな「海と波は違うものなのですか?」
男B「波を集めたものが海だ、海はとても大きい」
やまな「山よりも?」
男B「この世に山よりも唯一大きなものが海だ」
やまな「・・・。」
旦那様はね、遠くから、家のすぐそばでも
花嫁を花嫁衣装で初めて見るんだよ
花嫁が一番きれいに見えるように
初めてが一番きれいな姿のように
それが花嫁道中さ!
〇空
やまな「・・・これは?」
男B「これが海さ!」
男A「なんと!、山が小さく見えるとは!」
おい! あれは誰だ!
花嫁道中だ! 与兵衛の所の花嫁さんだ!
与兵衛を呼んで来い!
別嬪の花嫁が来たってな!
〇古風な和室(小物無し)
岩見やまな「・・・・・・。」
岩見やまな「・・・・・。」
岩見やまな「なんでこんな話したんかねえ・・・」
岩見やまな「こういう話、地元の人にはできんで、誰にも喋らんかったのに・・・」
二見明日香「女同士だからですよ」
岩見やまな「・・・・・。」
岩見やまな「そうなんかねえ」
〇海岸沿いの駅
わたしの研修は終わり、海の村を後にした
〇オフィスのフロア
わたしは研修で知り合った
やまなさんのことを玲奈に話した
玲奈「・・・・・。」
玲奈「やまなさんは時代の犠牲者ね」
玲奈「わたしたちフェミニストも活動はネットや都会ばかり」
玲奈「そうした地方の犠牲者も救わなくちゃいけないね・・・。」
玲奈「明日香、考えさせられたわ」
二見明日香「・・・・・。」
玲奈「どうしたの?、明日香?」
二見明日香「やまなさんがわたしたちと違う時代を生きて、人生のすべてをパートナーに捧げた結果になったのかもしれない」
二見明日香「でもそれだけ?」
二見明日香「もしかしたら・・・、 やまなさんは恋をしたのかもしれない」
玲奈「漁師のパートナーに?」
二見明日香「海に、恋したのかも・・・」
玲奈「ふふ・・・」
玲奈「明日香、あなたほんとうにおもしろい!」
玲奈「明日香、あなたはフェミニストにしてはロマンチスト過ぎるわ」
玲奈「もっと現実を見ないとね」
どうもわたしは玲奈とは相容れない
やっぱりフェミニストとは相容れないのか
な・・・?