エピソード4 第一王子、ルーシーの村にたどり着く(脚本)
〇寂れた村
数時間後。
もう日が暮れようとしている頃に、ルーシーの村に着いた。
小さなキズから流れる血は止まったが、まだ背中の大きなキズはズキズキと痛む。
ライル「はあ、はあ・・・・・・」
俺は息も絶え絶えに、村の中に入る。
ルーシーの家に向けて、進んでいく。
ライル「おおい! ルーシー。いるか?」
「あん? だれだよ、こんな時間に」
ガチャリ。
ルーシーの家のトビラが開く。
ルーシー「・・・・・・ト、トカゲぇ!? でけえ!」
ライル「お、落ち着いてくれ。俺だ。ライルだ」
ルーシー「ラ、ライル様? 声は確かにライル様のものだ」
ルーシー「でも、その姿はいったい?」
彼女には、俺の竜化スキルのことは話していなかった。
ライル「話は後だ。申し訳ないが、まずは中に入れてもらえないだろうか」
ライル「そして、背中のキズを治療してもらいたい」
ルーシー「あ、ああ。わかったよ。入ってくれ」
ルーシーの案内に従い、俺は彼女の家の中に入る。
ルーシー、それに彼女の両親によって、俺の背中のキズに応急手当がなされる。
ズキズキ。
まだ痛むが、これで徐々にでも回復に向かうだろう。
そしてしばらくした頃、俺の竜化スキルが解除された。
人の姿に戻る。
スキルの副次的な効果により、服も元通りだ。
全裸というわけではない。
ライル「ふう。これで何とかひと息つけるか・・・・・・」
無事に人里に保護され、背中のキズに応急手当がなされ、竜化スキルが解除された。
取り急ぎの懸念事項はなくなったと言っていいだろう。
ルーシーが俺を空き部屋に案内してくれる。
俺はベッドに寝そべり、安静にする。
ルーシーが付いてきて、ベッドの近くに座る。
ルーシー「ライル様。事情を説明してくれよ」
ルーシー「この国の第一王子様なんだし、あたいみたいな村娘には話せないこともあるんだろうけどさ」
俺はこの村に、幼少の頃から何度も通っている。
彼女は村娘ではあるが、俺にとっては幼なじみのような存在である。
細かな礼儀や規則などは、無視して接してもらっていた。
ライル「ああ。実はな・・・・・・」
俺は今日の一件について、説明していく。
国王である父上から追放を宣言されてしまったこと。
第二王子である弟から追い回され、街を追い出されてしまったこと。
何とかこの村までたどり着いたこと。
ルーシー「そ、そうか・・・・・・。苦労したんだな」
ルーシー「とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」
ライル「悪いな。面倒をかける」
ルーシー「いや、いいさ。ライル様にはいろいろと助けてもらった恩もあるしな」
ルーシー「父ちゃんと母ちゃんには、あたいから説明しておくよ」
そんな感じで、俺はしばらくこの村に滞在することになった。
追放された第一王子を匿うなど、この村には負担をかけることになってしまう。
キズが癒えたら、なるべく早く出立することにしないとな。
俺は今後の方針に考えを巡らせる。