エピソード3 第一王子、街から逃げ出す(脚本)
〇ヨーロッパの街並み
ブリケード王国の第一王子であった俺は、王である父上から追放を言い渡されてしまった。
弟のガルドからの提案で、最後のチャンスとして竜化スキルを使った。
しかし残念ながら、いつも通りの羽付きトカゲに変化するだけで終わってしまった。
ガルド「はっ! おらおら! もっと速く走らねえと、死んじまうぜ~?」
ライル「うわああぁっ!」
剣を振りかぶりながら追いかけてくるガルドから、俺は必死で逃げる。
王城は既に出て、今は町中を走っている。
民衆たちが俺とガルドに視線を向ける。
「なにあれ? トカゲ?」
「大きなトカゲだなあ。第二王子のガルド様が討伐しようとしてくれているみたいだぞ」
「がんばれー! ガルド様ー!」
ガルドはあれでも、そこそこ民衆たちからの人気はある。
一方の俺は、使いこなせていない竜化スキルのことは広まっていないが、ガルドと比べて不出来だという噂は広まってしまっている。
ライル「だ、だれか、助けて・・・・・・」
俺は既にガルドから何度も斬りつけられている。
血を流しながら、町中を走り続ける。
「あのトカゲ、何かしゃべったか?」
「気のせいじゃない? トカゲがしゃべるわけないよ」
「それにしても、間抜けな顔のトカゲだねえ。早く追っ払ってほしいね」
ライル「くそ。くそおおおぉ!」
だれも助けてくれない。
俺は涙を流しながら、街の出口にまでたどり着いた。
もう日が暮れる時間だ。
これからは、魔物の活動が活発になる。
よほどの戦闘能力がなければ、うかつに外に出るわけにはいかない。
しかしーー。
ガルド「はっはっは! 生きたままここまでたどり着くとはな!」
ガルド「逃げ足だけはいっちょ前だな」
ガルドがすぐ後ろに迫っている。
躊躇している場合ではない。
俺は思い切って門を出て、街から離れていく。
ガルド「ちっ。もうすぐ夜か」
ガルド「1人で追いかけるのは面倒くせえな」
ガルドが門の付近で立ち止まる。
ガルド「今日のところは見逃してやるぜ」
ガルド「いつか必ず殺してやるからな、無能」
街から離れていく俺を見て、ガルドは最後にそう捨て台詞を吐いた。
俺はそのまま、道を進んでいく。
ライル「くそ・・・・・・。斬られたところが痛む・・・・・・」
ガルドは俺をいたぶることを楽しんでいた。
剣聖スキルを持つあいつが本気になれば、俺はあっさりと殺られていたかもしれない。
ズキズキ。
俺は体の痛みに耐えながら、道を進む。
ライル「このままじゃマズイ・・・・・・。止血しないと・・・・・・」
ライル「それに、どのタイミングで人間に戻るかもわからない」
ライル「1人で夜を明かすのは危険だ」
街の外には、魔物が生息する。
外壁で覆われた街に住むのが一番安全だ。
次に安全なのは、街と街の間や山間部に点在する小村だ。
人が住む以上、最低限の対魔物用の柵や堀などは設けられている。
ライル「そうだ。ルーシーの村に行こう」
ライル「彼女たちであれば、俺を匿ってくれるはず」
俺は第一王子として、勉学や鍛錬に励んできた。
竜化スキルこそ使いこなせていないが、それを抜きにしても次期国王としての素養は身につけてきたつもりだ。
ルーシーの村は、かつて俺が食料事情や魔物の繁殖の問題を解決してあげた村だ。
俺に対する感謝の念も持ってくれているはず。
俺は希望を胸に、トカゲ状態のまま歩みを進めていった。