誰かのために(脚本)
〇お化け屋敷
矢柄 鉄「待てやぁぁぁ──!そこを動くなぁ──!!」
拳也「か、かかった──!行くぞ!!」
拳也を見つけた矢柄の眼は血走り
まるで餌を見つけた
獣のように一歩また一歩と詰め寄ってくる
車が最も近づく瞬間、
矢柄は車体に飛びついてきた
神野アヤト「くるな!くるな!!この手を離せ──!!」
拳也「ヒィ──!」
〇岩山の中腹
矢柄 鉄「おらぁ──!止まらんかい──!」
拳也「痛てぇ!!うわ、うわっ、うわ──!!」
拳也「ゴホッ!ゴホッ!!」
神野アヤト「ううっ、いてててて・・・」
神野アヤト「ハッ!!」
神野アヤト「拳也!?血が出てるぞ!!」
拳也「心配すんな・・・ 口の中・・・口の中を切っただけだ!!」
矢柄 鉄「クックック・・・残念やったのー!」
矢柄 鉄「・・・ん?」
矢柄 鉄「おい、おい!この男? とーちーやったか、死にかけとるやんけ!」
矢柄 鉄「いい気味や、 気分がスッキリしてきたわー」
矢柄 鉄「お前は元気そうやのぉー 名前はそう、アヤトやったっけ?」
矢柄 鉄「・・・」
矢柄 鉄「お前らムカつきすぎて、 名前覚えてもぉーたわ!!」
矢柄 鉄「さて・・・」
矢柄 鉄「拳也ぁ・・・」
矢柄 鉄「・・・チャンスやろか?」
矢柄は拳也の前に包丁をそっと差し出した
矢柄 鉄「このガキか、 そこに寝転がってるおっさんどっちか・・」
矢柄 鉄「──刺せ!!」
矢柄 鉄「簡単なことや自分が死ぬか 赤の他人のこいつらを殺すかや」
矢柄 鉄「クックック・・・」
矢柄 鉄「さぁ、死にたくなかったら犯れや!」
神野アヤト「・・・拳也」
拳也「・・・」
拳也「その前に1つだけ質問を・・・」
矢柄 鉄「なんや?はよいえや!」
拳也「おかんを見殺しにしたって 聞いたんだけど・・・」
矢柄 鉄「・・・ハァー」
矢柄 鉄「あのなぁ、拳也・・・よく聞けよ」
矢柄 鉄「こいつらが現れんかったら艶は死なんかった・・・つまり原因はコイツらや!」
神野アヤト「・・・な、何をいってるんだ?」
矢柄 鉄「考えてみろや、ケンカはなんで起こる?」
拳也「・・・」
矢柄 鉄「最初にケンカを売るヤツがいるからや!」
矢柄 鉄「『原因を生み出す』ヤツや!」
矢柄 鉄「つまり・・・」
矢柄 鉄「コイツらが艶を殺した原因や!!」
神野アヤト「む、無茶苦茶だ!」
矢柄 鉄「あぁっ!!」
矢柄 鉄「何勝手に喋ってんねん! 次喋ったらお前から、ぶっ刺すぞ!!」
矢柄 鉄「・・・」
矢柄 鉄「嘘ついたのは、お前を傷つけへんためにや!親心やんけ、拳也──わかれよぉ──」
矢柄 鉄(拳也には金を掘り出す作業を してもらわんとあかんでな・・・)
拳也「ゴホッ!!ゴホッ、ゴホッ!!」
矢柄 鉄「なんや?怪我でもしたんか?ひ弱やの──」
神野アヤト「拳也・・・ 口の中だけでそんなに血が出るのか!?」
拳也「・・・ハァ、ハァ」
拳也(俺は馬鹿だから、鉄が騙そうとしているのか、どっちが正しいかわからない・・・)
拳也(アヤト達が悪いのか?鉄が悪いのか? どっちが正しい答えなんだ?)
神野アヤト「・・・」
矢柄 鉄「苦しかったやろうなぁ── アレはあかん、艶を溶け殺しよった・・・」
拳也「・・・」
拳也「原因はコイツらか・・・」
矢柄 鉄「あぁ、そうや・・・ヒヒヒヒッ・・・」
拳也は包丁に手を伸ばし握りしめた
拳也「おとん・・・」
拳也「じゃあ、なんで助けなかった!?」
拳也「原因なんて俺にはどうでもいい!」
拳也「それよりも・・溶けていくおかんを・・・」
拳也「なぜ助けなかったんだ!!」
拳也「許せないのは・・・」
拳也「矢張り、お前だ!・・・鉄──!!」
拳也「なっ・・・!?」
矢柄 鉄「な、なんや!?」
神野アヤト「じ、地震!?」
拳也「鉄が気を取られてる! チャンスは今しかねぇ!!」
──ガキン!!
拳也「え!?」
矢柄 鉄「うっ・・・!!」
矢柄 鉄「このぉ・・・どあほがぁぁぁぁ!!」
拳也「うわぁぁぁぁぁ!!」
神野アヤト「・・・け、拳也!!大丈夫か!?」
拳也「な、なんで・・・!? ちゃんと、腹に刺したのに」
神野アヤト「破れた服から見える、アレはまさか!?」
矢柄 鉄「おう、おう・・・拳也・・・ ちゃんと腹、狙ってえらい、えらい!」
拳也「サラシの中に金を入れていた・・・だと!?」
矢柄 鉄「クックック・・・ やっぱり・・・金やなぁ・・・」
矢柄 鉄「人は裏切りよるけど・・・」
矢柄 鉄「金は俺を守ってくれよる」
矢柄 鉄「拳也・・・」
矢柄 鉄「・・・」
矢柄 鉄「一回、崖から落ちてみよかぁ!?」
〇暗い洞窟
拳也の服を掴んだまま引きずるように
鉄は崖に向かっていく
神野アヤト「やめろ──!!」
神野アヤト「ぐわっ・・・!!」
神野アヤト「ズササッ──!!」
拳也「アヤト・・・!!」
矢柄 鉄「チョロチョロしてんじゃねぇ!!」
矢柄 鉄「雑魚は黙って順番待ちしてんかい! ますは拳也からじゃあ──!!」
神野アヤト「行かせない・・・!」
矢柄 鉄「・・・あぁ?」
神野アヤト「だ、黙ってられるわけないだろ!」
神野アヤト「拳也を話せ!このクズ鉄野郎!!」
拳也「アヤト・・・!」
矢柄 鉄「ドサッ・・・」
矢柄 鉄「拳也ぁ・・・お前は・・・ コイツの次に変更じゃ──」
矢柄 鉄「・・・ハァ──」
矢柄 鉄「アヤトくん・・・君うるさいわ・・・」
矢柄 鉄「とりあえずどこから・・・ 『壊されたい』んや?」
矢柄 鉄「顔か?足か?・・なぁ、聞いてるやんけ!」
矢柄 鉄「スタ、スタ、スタ・・・」
矢柄はその暴力を、見せつけてやるといわんばかりに目標を変え歩き出した
矢柄の手が頭を掴もうとした、
その時──
ガシッ!!
おい・・・、お前の相手は俺だろ!?
〇暗い洞窟
神野アヤト「とーちぃぃぃ──!!」
神野アヤト「目が覚めた!ほんとに・・・よかった・・」
神野ツカサ「アヤト・・・待たせたな!」
矢柄 鉄「おらぁ、何よそ見してんじゃー!!」
神野ツカサ「うっ・・・!!」
神野ツカサ「ガクッ・・・!!」
矢柄 鉄「なんやカラ元気かい!笑わせよる!!」
神野ツカサ「クソッ!!体が思うように動かない・・・」
矢柄 鉄「オラァ──!!」
矢柄 鉄「弱い・・・弱すぎんぞー!!」
矢柄 鉄「はよ、立てや!まだ殴りたらんからなぁ」
矢柄 鉄「クックッククク・・・ ワーッ、ハッハッハ──!!」
神野ツカサ「うっ、うえ──っ!ハァ、ハァ!!」
神野アヤト(とーちー、病み上がりだから 体が動いていない!!)
拳也「ア、アヤトの親父!!」
神野ツカサ「拳也!!大丈夫か!?」
拳也「馬鹿野郎、それはこっちの台詞だぜ!! ゴホッ、ゴホッ!!」
「拳也!」
拳也「大丈夫だ・・・ ハァ、ハァ・・・俺にまかせろ」
拳也「あんたには見てて欲しいんだ・・・」
神野ツカサ「・・・なにいってる?無茶するな!」
拳也「今からやる事に対して・・・ 絶対、俺に近づかないでくれ!」
拳也「2人とも絶対だぞ!!」
神野ツカサ「おい!!待て!!・・・うっ、足が動かない!!」
神野アヤト「拳也──!!」
拳也「うぉ──!!」
拳也は走り出し、鉄の腰に抱きついた!
矢柄 鉄「なんや拳也・・・ジャレつきたいんか?」
拳也「あぁ、おとん・・・ いや・・・鉄・・・」
拳也「・・・一緒に地獄で遊ぼうや!!」
矢柄 鉄「ふん・・・ お前の力で俺を崖に落とすきか・・・」
矢柄 鉄「力の差がわからんのか? ミジンコ並みの知能やのう」
拳也「フゥ──!ウー!ウォォォォォー!!」
矢柄 鉄「・・・ほんま」
矢柄 鉄「・・・艶に似て阿保や!」
拳也「う・・・う・・・鉄!鉄!鉄!許さない ──ゴボッ!! ゴボ、ゴボ、ゴボッ──!!」
矢柄 鉄「おわっ!!なんや!!」
拳也「ハァ、ハァ・・・お前があの時 飲み物奪ったから悪いんだ・・・」
矢柄 鉄「なんやと・・・!?」
拳也「一緒に落ち・・・ようか・・・ ゴミの・・・クズ鉄さんよ・・・ゴボッ!!」
矢柄 鉄「ガキが血が出てるぐらいで ワシがビビるか・・・よ・・・!?」
矢柄 鉄「あ・・・、あ・・・」
矢柄 鉄「あ、あ、あぁ・・・」
矢柄 鉄「う、うぎゃぁ!!なんやお前は─────!!」
〇暗い洞窟
拳也の外見は、みるみる変化していった
皮膚も髪の色も変わり
口から緑の液体が出たり入ったりしている
目の前でその光景を
目の当たりにしている矢柄は
一歩、また一歩と
崖に向かって後ずさりしていく・・・
拳也「て、鉄・・・許さない・・・」
拳也「うぅ、うおぉぉぉ────!!」
矢柄 鉄「ひぃ!!離せ!離せ化け物!!」
矢柄 鉄「あっ!!しまっ・・・た・・・!?」
〇黒背景
矢柄 鉄「お!お!お!落ち────」
矢柄 鉄「──────!!」
拳也「あ、あぁぁぁ・・・落ちやがった・・・」
神野ツカサ「拳也!!」
拳也「アヤト・・・親父さん・・・ウッ!」
拳也「ウッ!?ウヴッ!!オロロロロロロ・・・」
拳也「ゴボ!!ゴボ!!ウッ──!ウウ──ゴホッ!!」
神野アヤト「拳也!?」
拳也「アヤトが・・・俺の為に・・・ハァ、ハァ」
拳也「鉄の前に・・た、立ってくれたように・・」
拳也「お・・・俺も初めて・・・」
拳也「『 誰かのため』に、行動したんだぜ・・・」
拳也「すごいだろ・・・ハァ、ハァ・・・」
拳也「鉄は下に落ちていった・・・ 後悔は・・してない・・ハァ、ハァ・・・」
神野ツカサ「あぁ、あぁ・・・わかった・・・」
拳也「・・・えっ!?」
〇壁
拳也「地面が!?」
拳也「あっ、あっ、あ──!!」
神野ツカサ「危ない!!」
ガシッ!!
〇暗い洞窟
拳也は崖の下に落ちる
あと一歩の所でとーちーに腕を掴まれた
崖に足がかかるところがなく
ブラブラと空中を揺れている
拳也「ち、近づくなって・・・言っただろ・・・」
拳也「ゴブッ!!もう・・俺は死んでしまう・・・」
神野ツカサ「バカなこと言うんじゃない!! しっかりつかまってろ!」
拳也「ペットボトル・・・飲み切る前に鉄に取られて・・・この有り様だ・・・ゴフッ!!」
神野ツカサ「さぁ左腕を出して! そうだ!いいぞ、上に上がってこい!!」
拳也「ヴフッ!! モドキが体の中で暴れている・・・ ハァ、ハァ・・・このまま落として・・・」
神野ツカサ「出来るわけないだろ!!」
神野アヤト「拳也!しっかりしろ!!腕を挙げろ!」
拳也「や、優しいなぁ・・・」
拳也「俺に、ちゃんと接してくれたのは・・・」
拳也「おかん以外で・・・は、初めてだ・・・」
拳也「ブチッ!ブチ、ブチ、ブチッ!!」
神野ツカサ「何!?腕が取れ・・・!!」
拳也「2人とも──」
拳也「──ありがとう」
「拳也ぁぁぁぁぁぁ────────!!」
とーちー格好良すぎる!(゚∀゚)
と思った直後に🥲どうにもならなさそうですね。。
あああああ予想はしてたけど
モドキーーーー!!😂😂😂
あぁああぁぁ😭
もっと幸せな方法はなかったんでしょうかぁああぁぁ😭
男前過ぎる拳也くん…
とーちーが復活して嬉しい反面、喪失感の大きいストーリーでございました…