エピソード395 風魔法の修練 森を疾走(脚本)
〇森の中
ーー前略──
今は風魔法の使い手を招いて講習を受けているところである。
講師は、蓮華とイリアだ。
蓮華「・・・・・・であるからして、この時に風魔法の情景を脳内に強く浮かべることで、より強力な風魔法の発動が可能になるでござるよ」
蓮華は、故郷のヤマト連邦では”山風”の二つ名を持つ侍だ。
この新大陸でも、Cランク冒険者として確かな実力を示している。
タカシ「ふむふむ。なるほど」
ぶっちゃけ半分くらいしか理解していないが、俺はそう相槌を打っておく。
イリア「やれやれ・・・・・・。ほとんど理解していないのが丸わかりじゃ」
イリアは、”烈風”の二つ名を持つBランク冒険者だ。
外見は幼女だが、これでもとっくに成人済みらしい。
口調は年寄りのそれであり、俗に言うのじゃロリである。
イリア「こやつのような半人前には、習うより慣れろじゃ」
イリア「風魔法には、とっておきの修練方法がある。蓮華とやら、お前もかつてやったのではないか?」
蓮華「あう・・・・・・。あれでござるか・・・・・・」
タカシ「あれとは?」
蓮華「風魔法の修練は・・・・・・、その・・・・・・、風を肌で感じて一体になるために・・・・・・ごにょごにょ」
イリア「生娘でもあるまいし、照れるようなものでもあるまい」
イリア「要するに、全裸になって自然の中を疾走すればいいのじゃ。風を全身で感じて、風魔法のイメージを固めることができる」
露出狂じゃねえか。
なかなかファンキーな修練方法だ。
タカシ「なるほど・・・・・・。それはぜひ、手本を見せてほしいな」
蓮華「た、たかし殿。それはせくはらというやつでござるよ・・・・・・」
タカシ「すまない。軽はずみな発言だった」
イリア「ふむ。裸ぐらい、いくら見られてもよかろう」
イリア「もしや蓮華は、生娘なのか?」
この口ぶりだと、イリアは経験済みのようだ。
実年齢は何歳なんだ?
蓮華「そ、それはその・・・・・・。あう」
タカシ「まあいいじゃないか。俺は1人で修練をすることにするよ」
イリア「いや、せっかくだし妾も参加するのじゃ」
イリア「お前は半人前とはいえ、スジがいい。ともに修練をすることで、妾にも得られるものがあるじゃろう」
言っている内容は立派だ。
しかし実際にやろうとしていることは、ほぼ初対面の人とともに全裸で森を疾走することなんだよな。
イリア「蓮華よ。お前は、さらなる高みに興味はないのか? 現状の自分に満足している豚か?」
言っていることはシリアスのように思えるが、実際のところは露出イベントへのお誘いである。
ちなみに、ブタは几帳面できれい好きな性質を持つと聞いたことがある。
怠惰で不潔という印象は、勘違いからの風評被害らしい。
いや、今はこんなことはどうでもいい。
蓮華「そうでござった。拙者には、故郷に守るべき者たちがいる」
蓮華「そのために、強くならねばならん」
そんな感じで、結局は3人で風魔法の修練を行うことになった。
俺たちは服を脱ぎ、全裸になる。
そして、みんなで森の中を駆け出す。
この森は、人や魔物などがあまりいないらしい。
風魔法の修練にはうってつけである。
それに、俺の気配察知のスキルもあるしな。
一般人とばったりなどということは起きないだろう。
タカシ「うおおおぉ! 俺は、風と一体になる!」
蓮華「ふふ。あははっ! 拙者も、何やら楽しくなってきたでござる!」
イリア「その調子じゃ! 羞恥心を捨て、風と一体になるのじゃ!」
俺たち4人は、そんな感じでしばらく森の中を駆け回った。
そして、森の中の俺たちに近づいてくる気配に気がついた。
この足音は・・・・・・。