第4話(脚本)
〇明るいリビング
愛川菜々美「ハプニングもありましたが無事美味しく出来ましたね」
愛城しずく「はい、これでカレーは一人で作れるようになったと思います」
愛川菜々美「それはよかった でも、カレーだけでは飽きてしまうでしょうからまた別の料理も教えないとですね」
愛城しずく「え、また教えてくださるんですか?」
愛川菜々美「愛城さんが嫌でなければ、ですが」
愛城しずく「そ、そんな 嫌なワケありません! 是非・・・」
〇綺麗なキッチン
パクっ
愛城しずく「へっ? 愛川さん!?」
〇明るいリビング
愛川菜々美「愛城さん?」
愛城しずく「あ、はい! 是非お願いしたいです!」
愛城しずく(うっ、気を抜くとさっき指を咥えられたのを思い出しちゃう)
愛川菜々美「でしたらよかった でも、嫌なら嫌って素直に言ってくださいね」
愛川菜々美「私、そうゆうの気づくのが下手なので」
愛城しずく「いいえ、本当に嬉しいです! 愛川さんと会える時間も増えますし」
愛川菜々美「そう言ってもらえるならよかった では──」
愛川菜々美「あ」
愛城しずく「電話ですか? 遠慮しないで大丈夫ですよ 私気にしませんので」
愛川菜々美「ありがとうございます ではちょっと失礼します・・・」
愛川菜々美「もしもし? ──」
愛城しずく(何だろう? 愛川さん、電話の相手を見た時凄い嫌そうな顔してた)
愛城しずく(マリハラされてる時だってあんな顔してなかったのに・・・)
愛城しずく(いや、そんな愛川さんのプライベートを覗き込もうとするなんてやり過ぎだよね)
愛川菜々美「すみません、終わりました」
愛城しずく「あ、おかえりなさい」
愛川菜々美「え? あ、はい」
愛城しずく「どうかしましたか?」
愛川菜々美「いえ、「おかえりなさい」なんて言われ慣れていなったもので少し驚いてしまいまして」
愛城しずく「あ、なるほど」
愛川菜々美「でも少し嬉しかったです 今ちょっとナーバスになっていたので」
愛城しずく「今の電話ですか?」
愛川菜々美「ええ、まぁ・・・」
愛城しずく「あっ、ごめんなさい! 私余計なことを」
愛川菜々美「いえ、大したことではないんです」
愛川菜々美「ただ来週末予定が入ってしまったので次回料理を教えられるのは少し先になりそうです」
愛城しずく「そうなんですね、それは少し残念です」
愛川菜々美「ええ、でも再来週は空いてますので」
愛城しずく「では再来週を楽しみにしてますね」
〇オフィスのフロア
愛城しずく(って言ってもまぁ会社で会えるんだけど)
志保見優香「しずくーおはよー」
愛城しずく「あ、おはよう優香」
志保見優香「ん? んん~?」
愛城しずく「な、何? 急にどうしたの?」
志保見優香「はは~ん、こいつは」
志保見優香「ちょっと香里」
立花香里「あ、おはよ」
志保見優香「しずく、恋人できたよ」
愛城しずく「え? 何急に!?」
志保見優香「表情見ればわかるよ ちょっと前までの生気の抜けた顔と全然違うもん」
立花香里「そうなの? おめでとう、しずく!」
愛城しずく「え? いや、違うから! 勝手に優香が言ってるだけで」
志保見優香「そんなこと言ってー 私の予感が外れることなんてまずないんだから」
志保見優香「この前の休みにデートでもしてきた感じ?」
〇綺麗なキッチン
〇オフィスのフロア
愛城しずく「あれはデートなんかじゃ・・・」
志保見優香「『あれは』ってワードが出てくるってことはやっぱり思い当たる節はあるってことだ」
愛城しずく「あ、いやそれは言葉の綾で・・・」
志保見優香「まぁ深くは詮索しないよ とにかくしずくにも恋人ができてホッとしたわ」
立花香里「そのうち私たちにもどんな人なのか教えてね」
〇オフィスのフロア
愛城しずく(恋・・・確かに私、愛川さんに好意は抱いてる でもそれって恋なんだろうか)
愛川菜々美「愛城さん」
愛城しずく「愛川さん!?」
愛川菜々美「業務が終わったので愛城さんも終わっていたら一緒に帰ろうかと思ってきたのですが・・・どうかしましたか?」
愛城しずく「あ、い、いえ何でもない! 何でもないんです!」
愛城しずく「ちょっとビックリしちゃっただけで」
愛川菜々美「驚かせてしまいましたか、すみません」
愛城しずく「私が勝手に驚いただけなので気にしないでください」
愛城しずく(変なこと言われたせいで愛川さんを意識しちゃう)
愛川菜々美「愛城さん、顔が赤いようですが大丈夫ですか?」
愛城しずく「あ、ひゃい! 大丈夫です! ちょっとこの部屋暑いからですかね、ははは」
愛川菜々美「暑くはないと思いますが・・・ もしかして熱があるのでは?」
パシッ!
愛城しずく「あっ! ごめんなさい! 手、痛かったですよね?」
愛川菜々美「いえ、全然 突然顔に手を近づけてしまった私が悪いんです」
愛川菜々美「熱があるかどうか確かめたくて」
愛城しずく「はい、そうですよね」
愛城しずく(そんなことされたらもっと顔が熱くなっちゃうよ)
愛川菜々美「愛城さん、さっきより顔が赤くなってきていますよ やはり熱が・・・」
愛城しずく「そうですね! やっぱり体調悪いのかも 移したら大変なので私、一人で帰りますね」
愛川菜々美「あ、愛城さん!」
愛川菜々美「やっちゃった・・・かな」
〇商店街の飲食店
愛城しずく(あー、完全にやっちゃった 愛川さんの手をのけたりして、絶対嫌われたよね、私)
愛城しずく「これ飲んで少しは冷静にならなきゃ」
愛城しずく(恋人になりたいだなんて全然思ってなくて、でも普通の他人には感じない特別な気持ちもある)
愛城しずく「やっぱり私、愛川さんのこと・・・」
〇繁華な通り
〇商店街の飲食店
愛城しずく(あ、愛川さんだ)
〇古いアパート
愛城しずく(謝ろうと思って追いかけてきたけど、結局声がかけられないまま)
愛城しずく(これじゃストーカーだよね)
ガチャ
愛城しずく(え? 愛川さんの住まいってここなの?)
愛城しずく「部署が違うからって給料がそんなに違うわけじゃ・・・ないよね?」
大家「ちょっと愛川さん~」
愛城しずく「わっ」
愛城しずく(危ない、見つかるところだった)
愛川菜々美「あ、大家さん」
大家「もうすぐ更新月でしょ? 貸してる私が言うのもなんだけどそろそろもっといいところに引っ越したほうがいいんじゃない?」
大家「この辺周りに何もなくて夜は危ないし 女性が1階に1人で住んでるなんてやっぱり──」
愛川菜々美「ご心配ありがとうございます でも、私まだ引っ越す気はありませんので」
大家「それはやっぱりお母さんへの仕送りのため?」
愛城しずく(お母さんへの仕送り?)
お2人の距離感が、見ていてもどかしくもあり楽しくもありですねw 大人として、マイノリティとして、そんな感情がブレーキをかけているところが、もどかしくて尊いですね!