罪  恋―TSUMIKOI―

望月麻衣

エピソード16 復讐の果てⅡ(脚本)

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〇ホテルの部屋
梓「涼太のお父さんのニュースを見たの。 涼太のお父さんから会社を乗っ取った社長さん、あの人だったね」
  ポツリと言う梓に、小さく頷いて、柄にもなく身の上話をした。
  母親に捨てられて、佐竹に売春を強いられていたこと。
  
  
  あるキッカケから復讐に目覚めたこと。
梓「・・・私を抱いたのも、復讐なんだよね?」
  小声で尋ねる梓に、反射的に否定した。
久弥「違うよ」
  少しムキになっている自分がいた。
  梓を復讐の道具にしたなんて、そんな風にだけは思われたくない。

〇ホテルの部屋
梓「それじゃあ・・・・・・どうして?」
久弥「・・・最初は、奴の妻と息子をたらしこむつもりだったんだ。 妻も子もたらしこんで抱いてやろうと思っていた」
久弥「で、妻は簡単に落ちたけど、涼太は無理だったな」
  梓に話しながら、自分の本心に気付く。
  こんな関係じゃなかったら、素直に友達になりたい、と口にしてから、実感する。
  そうだな、こんな出会いじゃなかったら、涼太と友達になりたかった。
梓「・・・だから、その代わりに・・・・・・涼太の代わりに私を?」
  苦しそうに問う梓。
久弥「違うよ、梓」
  想いを、伝えたい。
  
  
  それでも、重くは受け取ってほしくない。

〇ホテルの部屋
  養護施設の先生によく似ていた、と伝える。
  
  
  初恋だったと。
  そう、『似ている人だったから、それだけなんだ』って、思ってくれたらそれでいい。
久弥「その人に、梓はよく似てた。 それで、目が離せないくらいに梓を見入ったよ」
  梓は言葉も出ないほどに驚いた様子でこちらを見ていた。
久弥「・・・そしてドキドキもした。 純粋に、梓に触れたいと、思ったんだ」
久弥「恋してたよ、梓に。 涼太に嫉妬もしてた」
  どうして、こんなことを言ってしまったのか。
  
  
  
  喉の奥が苦しくなって、目頭が熱い。

〇空
  そうだよ、梓。
  
  
  こんな俺だけど君に恋してた。
  どんなに歪んでいても、壊れていても、
  この気持ちは
  
  
  本当だったんだ。

〇ホテルの部屋
梓「私も・・・あなたに恋してたよ」
  最後まで、震えるような瞳でそう告げる。
  今なら、純粋に思ってもいいのかな?
  『嬉しい』って。
  ありがとう、と礼を言う。
  自分が普通に育っていなくて、感覚が可笑しかったこと。
  俺の存在が、いい刺激程度になってくれているんだろう、その程度の気持ちだろうと思っていたこと。
  梓を追い詰めてたことに気付かなかったことを伝えた。
  だからこそ、もう梓には会わないと。
梓「・・・そういうと、思ってた」
  涙を零しながら俯く梓。
  胸が痛くて、
  
  
  そっと立ち上がって、彼女の頭に手を乗せた。
  これだけは伝えたい。
久弥「・・・金銭を介さずに、抱き合ったのは梓が初めてだった。 ありがとう」

〇ホテルの部屋
梓「離れたくないって言っても、駄目なんだよね?」
  子供のように泣きじゃくって、袖をつかんだ梓の姿に、何かが決壊した。
  もう触れないと決めていたのに、気が付くと彼女の身体を引き寄せてキスをしていた。
  彼女のすべてを堪能するように、
  
  何度も何度も角度を変えて、舌を絡ませ、深いキスをする。
  息が漏れて、体中が発火するように熱い。

〇空
  このまま、梓を強く抱き締めて離さずに、一緒にどこかに連れて行きたい。
  なんて、そんな甘い願望を抱き続けられるほど、自惚れは強くない。
  色々と厄介な身だよ。
  このカラダに大金を払って来た客たちが、これから必死になって俺を探し出すだろう。
  しばらく身を隠さなければいけないような人間。
  梓とは住む世界が違うんだ。

〇ホテルの部屋
久弥「これもまた、もう一回言うよ。 もう二度と、こんな悪いオトコには引っ掛からないように」
  胸が張り裂けそうに痛くて、
  これ以上、梓の顔を見ることが出来ずに、振り返らずに部屋を出た。
  通路を歩きながら、涙が頬を伝うことを感じていた。
  初めて金銭を介さずに抱き合った彼女は、
  本当の意味で、
  
  
  
  俺の初恋だったんだ。

〇空
  ねえ、梓。

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コメント

  • 最後まで一気読みしました!
    いろいろな人間模様、それぞれの人からの見解が知れて、とても面白かったです!
    描写や表現が美しく、情景が頭にどんどん浮かんできて、感情移入して読みました。流石です!

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