第1話 チャバネゴキブリ編(脚本)
〇黒
血の繋がった父親が死んだ時に気づいた事がある
私は1つ、他の人とは決定的に違うところがあると
〇白
〇オフィスのフロア
NS製薬総務部
藤井ゆい「恭介さん! 総務部にいらして、どうしたんですか?」
私は藤井ゆい
NS製薬の総務部に勤めている
そしてこの魅力的な男性、藤井恭介さんは、NS製薬の研究所本部長であり、私の義理の父でもある。
私はこの先の一生を恭介さんと添い遂げる事を(勝手に)誓っている。
藤井恭介「ああ、ゆい。総務部長に頼みたい事があってね。電話中みたいだから伝言頼まれてくれるか?」
藤井ゆい「はい!もちろん」
藤井恭介「ありがとう。任せたぞ」
中山紗季「あっ、恭介本部長もう帰っちゃったの?」
城島舞美「うわ本当だ! 折角のお話するチャンスがっ!」
中山紗季「いいよね、ゆいはさ! 恭介さんと家で話したい放題でしょ?」
藤井ゆい「恭介さんは本当に忙しいから、家に帰ってくるのも遅いし、私だってまともに話せてないよ」
そう、研究所本部長である恭介さんは多忙を極めており、帰宅するのも22時が普通のような生活。
何とか少しでも疲れが取れるようにと、美味しいご飯とお風呂を準備しておくのが、私の役目♪
中山紗季「あ!今度さ!お家での恭介さんの写真撮ってきてよ〜!」
城島舞美「わ、いいね〜! 恭介さんってSNSやってないからプライベート謎なんだよね〜、超気になる!」
「だよね〜!!」
恭介さんは、聡明かつ朗らか、容姿端麗と非の打ち所がなく、老若男女問わず社員に好かれている
高橋奈々子「えー!なになに!? 恭介さんのお話?」
中山紗季「そ!今度ゆいに恭介さんのプライベート写真見せてもらおうって!」
この3人は恭介ファンを名乗り、忙しい恭介さんを隙あらば追い回している迷惑女達である。
自称天然、SNS大好き、自撮り大好き、が共通点で、見事に見た目もほぼ一緒である。
恭介さんはすごく忙しいのに、
こんな女達の雑談に絡まれても嫌がる顔を見せない
こういう奴ら⋯
ああ、何だっけな⋯
何かに似てる⋯
カサカサ群れている茶色の⋯
藤井ゆい「あ、チャバネゴキブリだ!」
「嘘でしょ!! どこどこっ!?」
藤井ゆい「え?そこに?3匹?」
「むりむりむりっ!!! 誰か追い払ってーー!!」
チャバネゴキブリ達は一目散に散っていった
最近、
恭介さんの周りに沸いている害虫が
目につくようになってきた
藤井ゆい(恭介さんが家でも外でも 安心して過ごせるようにしなきゃ・・・)
〇おしゃれなリビングダイニング
私の実の父親は典型的なクズだったが、母の再婚相手である恭介さんは⋯
神様からの贈り物のように素晴らしい人だった。
母と私は恭介さんと出会い、
ようやく幸せな日々を得た
しかしそんな日々は長く続かなかった
クズを養ってきた心労からか、母は3年前に病で他界した。
いなくなった母を思い出す度、クズへの憎しみが増していく。
一方でそれは
私の中の恭介さんという人間の素晴らしさをより浮き彫りにしていった。
藤井ゆい(恭介さんは会った頃から全然変わらないなぁ)
藤井ゆい(いつでも優しくて格好良くて⋯)
いつしか私は、
私を娘として愛してくれる恭介さんに、焦れた想いを感じ始めていた。
藤井ゆい(そう、恭介さんにとって私は娘⋯ 恭介さんに私の気持ちをぶつけて、困らせちゃいけない⋯)
藤井ゆい(だって私は本当に恭介さんが大切で、大好きで、愛してるから⋯)
藤井ゆい(恭介さんを困らせるような害虫にはならない)
〇黒背景
高橋奈々子「ねぇねぇ、ゆいはいつになったら独り暮らしするの?」
城島舞美「そろそろ彼氏とか作らないの〜? もう30歳でしょ?」
中山紗季「いい加減ヤバイって! 恭介さんにも心配されちゃうよ?」
恭介さん
忙し過ぎるからさ
今更1人置いて出ていけないよ
城島舞美「え〜でもさ〜? それってゆいの役目なのかな? 新しい奥さん作るべきなのかもよ?」
中山紗季「いつまでもゆいが家にいたらさ、恭介さん新しい出会い逃しちゃうんじゃない?」
そう
こういう害虫を家に入れる訳にはいかない
世にはびこる害虫(クズ)は
恭介さんにだけは近づけさせない
私がしっかり駆除してあげるね
〇オフィスのフロア
お昼休み
私はチャバネゴキブリの駆除方法を調べていた。
ハッカ油、重曹、ホウ酸団子⋯
ゴキブリは共食いをする習性があり、ホウ酸団子で死んだゴキブリの死骸を食べたゴキブリもまた、死に至る、ね。
藤井ゆい「つまり、アイツらの通り道に毒入りの餌を置いておけば、全員釣られて全滅と」
藤井ゆい「シンプルね ♪」
中山紗季「ねぇ、ゆい。 チャバネゴキブリってちゃんと駆除できたの?」
藤井ゆい「まだだけど、駆除方法が分かったから、任せておいて ♪」
中山紗季(なんか楽しそうなのは気のせい⋯?)
藤井ゆい「あ、早速だけどさ」
中山紗季(早速⋯?)
藤井ゆい「恭介さんのプライベート情報、良いこと教えてあげる」
中山紗季「え!?何だそっちね! やるじゃない、ゆい!」
藤井ゆい「ゴニョゴニョ⋯」
〇休憩スペース
休憩室
中山紗季「昨日、ゆいから聞いたんだけどさ」
中山紗季「恭介さん、謙虚で控えめな子がタイプらしいの!」
「え!そうなんだ!?」
(おしとやかで女性らしくしてる私はアリって事ね!!)
中山紗季「あっ!!!」
藤井恭介「あ、いたいた。お疲れ様!」
「お疲れ様です!! 恭介さん!」
恭介はタピオカミルクティーをテーブルに置いた。
藤井恭介「ゆいからコレが好きって聞いてね。良かったら休憩中に飲んでくれ」
藤井恭介「じゃ、俺は仕事に戻るな」
藤井ゆい「はい、お疲れ様です」
「あ、ありがとうございます!! 恭介さん!!」
中山紗季「恭介さんから差し入れ頂いちゃった!!」
(やっぱり脈アリ!?!?)
藤井ゆい「あ、そうそう」
藤井ゆい「今日は9月11日、大安日と一粒万倍日が重なる日なのよ?」
そう言って、ゆいは3人にチラシを見せた
「おねがいタピオカミルクティー!?」
中山紗季「ね、願い事⋯」
高橋奈々子「そ、そんなの決まって⋯」
恭介さんって、
謙虚で控えめな子がタイプらしいの!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
城島舞美「わ、私・・・」
城島舞美「恭介さんに可愛いって言われたい!!」
高橋奈々子「え!? 何それ私もー!!」
中山紗季「私は・・・」
中山紗季「恭介さんに熱く見つめられて、抱きしめられたい!」
(控えめ⋯⋯?)
それぞれ好き勝手に願い事を宣言した3人は、タピオカミルクティーを飲みながら、オフィスへと帰っていった。
藤井ゆい「可愛いって言われたい。 熱く見つめられて、抱きしめられたい。ね」
藤井ゆい「ふふ、恭介さんが本当に好きなのは・・・」
〇動物園の入口
藤井恭介「久しぶりだな、ゆいと動物園に来るのは」
藤井ゆい「うん!ここ来てみたかったの! ここにいる動物、普通とはちょっと違うらしいから」
藤井ゆい「あ!ほらほら!アレ!!」
「ウウゥッ!ウァ!ウウゥ!!!」
藤井恭介「な、何だ!? すごい必死だな?エサが欲しいのか?」
藤井ゆい「息がピッタリなクマがいるって、SNSで話題らしいよ?」
藤井ゆい「しかも、タピオカが好きなんだって!」
藤井恭介「た、タピオカ!?」
藤井恭介「息ピッタリでタピオカ好きで、SNSで流行っているって⋯」
藤井恭介「何かどこかで聞いたな?」
タピオカミルクティーを飲みながらクマを眺めるゆい
藤井恭介「そ、そんなにタピオカが欲しいのか⋯?」
藤井恭介「まあしかし、芸達者なクマっていうのも 可愛いな!」
藤井ゆい「ふふっ、恭介さんクマ好きだもんね。 でも吠えるしか芸がないから飽きちゃった!」
藤井ゆい「恭介さん、次行こう!」
久しぶりの動物園を満喫するゆいと恭介。
二人を見つめながら、必死に雄叫びをあげるクマ2匹。
クマ達の必死な雄叫びは観客を湧かせ、タピオカに必死すぎるクマとして、動画がSNSでバズる事になった。
〇オフィスのフロア
藤井恭介「ゆい。 あの3人は今日も無断欠勤なのか?」
藤井ゆい「そうみたい⋯ まあ常識に欠けてる所があったから、辞める時もこんなものかも⋯」
藤井恭介「そうか⋯ ゆいが言ってた通りになったな」
藤井ゆい「あっ!!!」
藤井ゆい「チャバネゴキブリ!!」
ゆいは、無断欠勤中の紗季の机の上にいるチャバネゴキブリを指差した
藤井恭介「ゲッ!! 本当だな⋯」
藤井恭介「うーんと⋯ 1匹だけか?」
恭介は、机の上にいるチャバネゴキブリを逃さないようじっと見つめる
そして素早くティッシュを取り、チャバネゴキブリをティッシュで包み込んだ
藤井恭介「よし!」
藤井ゆい「ありがとう恭介さん!」
藤井ゆい「実はこの間3匹見かけてたんだけど⋯」
藤井ゆい「2匹はもう駆除したから、これで最後の1匹だと思う!」
藤井恭介「お、良かった。これで安心だな」
〇ソーダ
チャバネゴキブリ駆除完了★
歪んだ正義感という恋愛感というか、恐ろしい…
チャバネゴキブリ3人もそんなたいしたアプローチをしていないのにこの仕打ち。以降の被害者達はどうなるのやら…
恭介の気持ちが気になります。
本当は歪んだ感情を娘に抱いてそうですね。
お母さんが亡くなった理由ももしかして…?
色々妄想が膨らんで楽しいです。
めちゃめちゃ可愛い顔して怖いこというゆいにゾクゾクしました!
クマになった…クマ…どうやって?いや、そこは考えちゃダメだ……怖いよーーー😱
ゆいの害虫駆除は今後どうなっていくのか……怖いけど気になります!