エターナル・ヘリックス

糸本もとい

第9話「別離」(脚本)

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〇神社の本殿
  2029年12月31日
児玉優美「そろそろカウントダウンですね」
ジェイコブ・ロドリゲス「ええ、それにしても人が多いですね」
児玉優美「ほんとに・・・あの、手、繋いでいいですか?」
ジェイコブ・ロドリゲス「もちろん」
北畠真弘「いやあ、仲睦まじいねえ」
高倉隼人「ほんとうに・・・はああ・・・」
北畠真弘「まだショックを引きずってるのかい?」
高倉隼人「そりゃそうですよ・・・まさか、ジェイコブさんとは・・・」
北畠真弘「僕は、そこまで意外じゃなかったけど」
高倉隼人「ええ? 15歳も違うんですよ?」
北畠真弘「大した差じゃないさ」
高倉隼人「そうですかねえ・・・」
北畠真弘「ジェイコブさんは優しいな上に頼りがいも感じさせる紳士だからね」
高倉隼人「そこは否定しませんけど・・・」
児玉優美「あ、いよいよですよ」
「5、4、3、2、1・・・」
「ハッピーニューイヤー!」
児玉優美「明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします」
ジェイコブ・ロドリゲス「こちらこそ、よろしくお願いします」
児玉優美「楽しい1年になるように、お参りしなきゃです」
ジェイコブ・ロドリゲス「そうですね。楽しいが一番です」
児玉優美「はいっ!」

〇川沿いの公園
  同日、正午。墨田区隅田公園
北畠真弘「どうやら人払いの術式が展開されているようだ・・・」
高倉隼人「道満の霊圧をビシビシ感じますね・・・隠す気は無いらしい」
ジェイコブ・ロドリゲス「では、こちらも臨戦態勢で」
北畠真弘「そうですね。顕現させておきましょう」
源頼光「さて、では参りましょうか」
源義経「御意」
レオニダス「・・・応」
児玉優美「よろしくお願いします」
蘆屋道満「お待ちしておりました」
児玉優美「随分と開けた場所を、ご指定ですね」
蘆屋道満「人払いの術式を展開させています。人目は気になさらなくて結構ですよ」
児玉優美「そうですか・・・」
蘆屋道満「さて、短い期間ではありましたが、私が用意した思考の時間・・・」
蘆屋道満「その結果を伺ってもよろしいですか?」
児玉優美「わたしは、信用した人と一緒にいます。急進派に付くことはありません」
蘆屋道満「左様ですか。私としては残念な返答ですが、若さを加味すれば、それも致し方なし」
蘆屋道満「では・・・ここは、力尽くとでも参りましょうか・・・」
レオニダス「貴様の思い通りにはさせぬ!」
蘆屋道満「不撓の王を前にして、出し惜しみはしません」
蘆屋道満「轟轟雷雷、急急如律令!」
レオニダス「ぐがあああぁぁぁ」
蘆屋道満「伝承具現が間に合わないと察するや、自ら盾となり児玉さんを護りましたか。お見事」
児玉優美「ジェイクさん!」
児玉優美「許さない・・・!」
セミラミス「貴様の相手は、我が直々にしてやろう」
蘆屋道満「おお・・・女帝にして最古の毒殺者としての偶像。是非お手合わせ願いましょう」
源義経「好き勝手言ってんじゃねえ・・・!」
源義経「八艘跳び!」
蘆屋道満「豪豪水龍、急急如律令!」
源義経「くそっ・・・! 水には水ってことかっ! いくつ術を持ってやがる!」
蘆屋道満「次はどう受けますかな!」
蘆屋道満「劫劫炎竜、急急如律令!」
源頼光「朝家の守護!」

〇川沿いの公園
蘆屋道満「この伝承具現は、斯くや私でも、些か手に余りますな」
蘆屋道満「やはり、四人の憑坐を同時に相手となると、策が必要」
蘆屋道満「・・・結構。一旦は退くとしましょう」
蘆屋道満「近いうちに相見えましょうぞ・・・」

〇川沿いの公園
セミラミス「息をしておらぬか・・・」
「・・・・・・」
セミラミス「いま顕現を解けば、優美は耐えられぬであろう。少し時間を置こう」
源頼光「それがよろしいかと・・・では、我々は顕現を解くとしましょう」
源義経「・・・御意」
瀧上正臣「救急車の手配はしてあります。お三方は車に」
北畠真弘「あなたは・・・?」
瀧上正臣「遠野の同僚です。瀧上と申します」
北畠真弘「あなたが瀧上さんですか・・・では、後のことはお任せしても?」
瀧上正臣「はい。お任せを」
瀧上正臣「容態は?」
部下「駄目です・・・反応ありません」
瀧上正臣「心臓マッサージを続けろ。不撓不屈の王、レオニダスの憑坐だ・・・」
瀧上正臣「蘇生の望みはあるかもしれん・・・」

〇おしゃれな居間
  翌日、昼過ぎ。世田谷区深沢
遠野篤志「児玉さんの様子は、いかがですか・・・」
北畠真弘「食事も喉を通らないようです・・・無理もありません」
北畠真弘「わずかな期間とはいえ・・・いえ、わずかな期間だからこそ、でしょうか・・・」
北畠真弘「恋人を亡くしたショックは強いのでしょう」
遠野篤志「・・・私の判断ミスです。道満との接触は避けるべきだった」
北畠真弘「道満は今、どこに?」
遠野篤志「行方をくらませています。我々でも、相手が道満では、足取りを掴むのは難しい」
北畠真弘「道満があそこまでの使い手とは、僕も思いませんでした」
遠野篤志「実際に相見えての感想は、いかがでしたか」
北畠真弘「非常に厄介な相手です。憑坐にとって武器ともなる伝承具現に頼っていない」
北畠真弘「岸村氏の憑坐としての霊力と、神格霊である道満の陰陽、呪術を掛け合わせた・・・」
北畠真弘「あれは、もはや魔術と呼んだ方がいい異能の力です」
北畠真弘「強力ではあるが連発できない我々の伝承具現だけでは太刀打ちできない」
遠野篤志「そこまでとは・・・」
遠野篤志「対策を練る時間をいただきます。児玉さんには休んでいただくとして・・・」
遠野篤志「北畠さんと高倉さんには、引き続き護衛を・・・」
北畠真弘「僕も隼人も、そのつもりです」
遠野篤志「ありがとうございます」
遠野篤志「この家は、私のセーフハウスですので、気兼ねなく使ってください」
遠野篤志「一通り揃っているとは思いますが、必要なものがあれば用意します」
北畠真弘「分かりました。それにしても・・・この短期間で3人もの憑坐が亡くなりました」
北畠真弘「急進派は本当に、憑坐を実験動物として見ているのでしょうか・・・」
遠野篤志「神格霊に自我を明け渡した宮成大貴の処理と、凶刃に倒れた萩原さん、そして・・・」
遠野篤志「今回のジェイコブさんの件は、同列には語れませんが・・・」
遠野篤志「急進派を、差し当たっては道満を、このままにはしておけない。それだけは言えます」
北畠真弘「今回も処理という形を・・・?」
遠野篤志「・・・それも含めて、早急に検討します」
遠野篤志「これ以上、規模が大きくなる前に、決着を付けなくてはなりません」

次のエピソード:第10話「視野」

コメント

  • ジェ、ジェイコブー!!
    せっかく恋人になれたのに…😭

  • いや、ちょ、うそやん!?
    うそやん!!??Σ(゚口゚;

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