エピソード10(脚本)
〇貴族の応接間
高天神美音子「姉さん、翔のことを隠しおおせる って思ってたの?」
高天神吉祥子「そんなつもりは・・ でも、翔のはずはないわ」
高天神美音子「言い切れないでしょ、そんなこと!」
高天神美音子「いつだって情報の後出しが 一番サイアクなのよ!」
菊梁善意「あの・・翔さん、というのは?」
天上美月「高天神翔さん、おそらくは翼くんの兄 にあたる人・・ですよね?」
高天神吉祥子「なぜ、それを!」
高天神美音子「ほら、もう気づいているのよ、警察は!」
天上美月(て言うか、心を読んだだけ、だけどね ・・・あと、警察じゃないから、私は)
天上美月「我々も詳細は存じません」
天上美月「ただ、ご事情をお話いただいた方が 無用な疑いを抱かれずに済むと思います」
高天神吉祥子「わかりました」
高天神吉祥子「ご推察のとおり、私たちの従兄弟は もうひとりおります」
高天神吉祥子「翼の兄にあたる、翔です」
〇教室
8年前、翔が高校生の頃
クラスにいじめ事件が起こりました
もともとは転校生の少女に向けられた
いじめだったのですが
それを注意した同級生のAさんに
矛先が向かい、徐々にエスカレートして
Aさんが階段から突き落とされて
大怪我する事件が起こってしまったのです
ところが
これをきっかけに流れが変わります
転校生やAさんを支持するグループが
反撃を始めたのです
彼らに対する批判はSNSや噂話を通じて
広がっていき
〇一戸建て
追い詰められた主犯格のCが
転校生Bさんの家に放火してしまいます
ところが
それは始まりに過ぎませんでした
〇森の中
翌朝、学校からほど近い林の中で
Bさんが刺殺体で発見されました!
当然、疑いの目はCに向かいましたが
〇一戸建て
監視カメラの映像から
Bさんの死亡推定時刻には
犯行現場から遠く離れたBさんの家に
Cがいたことは明らかでした
〇駅のホーム
かわって疑われたのは、Cと一緒に
いじめを主導したDでしたが・・
駅のホームで何者かに突き飛ばされ
亡くなりました
〇教室
今度は逆に
最初の被害者のAさんが疑われました
Dが「突き飛ばされた」ことも
Aさんの被害を連想させ
疑いに拍車をかけたのですが・・
〇渋谷のスクランブル交差点
そのAさんが繁華街の雑踏の中で
やはり何者かに刺されて、殺されました!
このときCは、放火がボヤで済んだ為に
不起訴処分で釈放されていたのですが
Aさんと同じ雑踏の中にいたと
あとでわかったのです
〇貴族の応接間
菊梁善意「ちょ、ちょっと ひと死に過ぎじゃないですか!?」
高天神美音子「でも、それで終わりじゃなかったのよ」
菊梁善意「そのCが犯人だったんですか? ・・・あれ? 翔さんの話は?」
高天神吉祥子「とんでもない真相がわかったのは そのあとでした」
〇古びた神社
Cは「自分は呼び出されて繁華街へ
行っただけだ」と主張しました
担当の刑事さんは最初、まったく信じて
いなかったのですが
Cから「また呼び出された」との
連絡があり、待ち合わせ場所に向かうと
CやDと対立していた
Aさんの友人のEさんが刺されており
その傍らで血まみれのCが
犯人を取り押さえていたのです!
高天神美音子「それが翔でした」
高天神美音子「しかも、翔は」
隙きを見てナイフを奪い返すと
Cを刺して逃げ出しました!
気が動転した刑事さんは発砲してしまい
被弾した翔は神社の石段を転げ落ちました
〇作戦会議室
CとEさんの死亡が確認された一方
運良く弾丸が急所をそれた翔は
一命をとりとめました
取り調べに対して
翔は犯行を呆気なく自白しました
〇教室
いじめ事件で翔は、どちらの側でも
ありませんでした
高天神翔「みんな楽しそうなことやってるな、 って思ってたんだ」
高天神翔「対立がエスカレートするほど面白い! 安易に仲直りなんて、つまんないぜ」
高天神翔「だから、盛り上がるイベントを 用意してやったんだ」
高天神翔「期待どおり、対立は盛り上がったよ」
〇一戸建て
高天神翔「さらにBやEの味方のフリをしてけしかけ Cの不安をギリギリまで煽ってやった」
高天神翔「一方でCにも近づいて、Bの家が燃えれば 引っ越してすべて解決すると思い込ませた」
〇一戸建て
高天神翔「暗示をかけて人を操るのは 高天神家の、忍者の得意技だ」
高天神翔「狙いどおり C はBの家に放火してくれた」
〇森の中
高天神翔「それから「Cが何か企んでいるらしい」と Bを林に誘って刺し殺してやった」
高天神翔「何故って? 対立を盛り上げるためさ! 最高だろ!?」
〇駅のホーム
高天神翔「Cにアリバイができるようにしたのは もちろん謎を面白くするためさ」
高天神翔「で、次に疑われるDを始末した」
〇作戦会議室
高天神翔「刑事さん、そろそろ僕の思考法 わかってくれたかな?」
高天神翔「一番怪しそうなヤツを片付ける! これで犯人が誰だか、わからなくなる」
高天神翔「ね、ワクワクするでしょ?」
刑事「おまえは・・・狂ってる」
高天神翔「ありがとう! 最高の褒め言葉だ」
〇渋谷のスクランブル交差点
高天神翔「で、次はトラブルの根源! 良識派優等生のAだ」
高天神翔「こういうヤツが一番迷惑なんだよね ほっときゃ良かったのに、転校生なんて」
高天神翔「AとCを互いの名前で呼び出した 「仲直りして事件の真相を探ろう」ってね」
〇古びた神社
高天神翔「で、まあ、だんだん飽きてきたから EとCを片付けて終わりにしよう」
高天神翔「って思ったんだけど Cに気づかれちゃってさ」
高天神翔「あとは知ってのとおりだよ」
〇貴族の応接間
高天神美音子「でも結局、翔は精神鑑定で責任能力はない って判定されて釈放されたのよ」
高天神吉祥子「けれど、あの子を世の中に戻すわけには いかなかった」
天上美月「それで閉じ込めたのですね? こちらのお屋敷の中に」
菊梁善意「え!? いるんですか、彼はここに?」
高天神吉祥子「ええ、邸内の一番厳重な座敷牢に 翔は閉じ込めてあります」
天上美月「会わせていただけますか? この私、天上美月を、高天神翔さんに」
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