第8章 光精の国の王女(脚本)
〇森の中
ヴィオラ・コーディエ「えい!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「燃えろ!」
ヴィオラ・コーディエ「これでとどめだ!」
ノエル・エンジェライト「・・・敵は全滅しました」
ミモザ・クラリティ「おふたりとも、すごいです! お見事な連携です!」
ヴィオラ・コーディエ「うん! シグバートが合わせてくれたからな」
ノエル・エンジェライト「興味深いです 火以外の属性も剣に付与することができるかもしれません」
ノエル・エンジェライト「ミモザさんの光精術とぼくの氷精術も、検証する価値はありますね」
ミモザ・クラリティ「そっ・・・ そう、です・・・ね・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・そろそろ日が暮れる 早めに野営の準備をしよう」
ヴィオラ・コーディエ「さんせーい」
〇空
ヴィオラ・コーディエ「ただいまー ・・・ってシグバート! ペグの打ち込みが甘いよ」
ノエル・エンジェライト「これでは強風で倒れてしまいますね」
シグバート・フォン・ブラッドショット「む・・・」
ミモザ・クラリティ「シグバート様、枝を拾ってきました 火をおこしていただけますか?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「まかせておけ」
ヴィオラ・コーディエ「うわっ! 火強すぎ! 加減しろよな!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ぐっ・・・」
〇森の中
ミモザ・クラリティ「テントの設営ができましたね 日没に間に合ってよかった」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・今回のテント設営にあたり、オレは足手まといだった それは認めよう」
シグバート・フォン・ブラッドショット「だがオレは同じ轍は踏まない 刮目せよ」
ヴィオラ・コーディエ「誰もそんなこと言ってないだろ・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・水を汲んできます ヴィオラさん、行きましょう」
ヴィオラ・コーディエ「え、あたし? 別にいいけど・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・では、行きましょう」
ヴィオラ・コーディエ「ノエル! ちょっと待てって・・・ノエル!?」
〇山中の川
ノエル・エンジェライト「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「ノエル!」
ヴィオラ・コーディエ「どうしたんだよ、急に」
ノエル・エンジェライト「・・・ヴィオラさん」
ノエル・エンジェライト「貴方は多情多感の傾向があります」
ヴィオラ・コーディエ「えっと、感情的ってこと?」
ヴィオラ・コーディエ「まあ否定はしないけど いきなりなんなんだ?」
ノエル・エンジェライト「・・・・・・」
ノエル・エンジェライト「相手のことを強く意識せざるを得ない その場にいられないような・・・」
ノエル・エンジェライト「その感情の正体を・・・ 貴方は知っていますか」
ヴィオラ・コーディエ「え? うーん、そうだなぁ」
ヴィオラ・コーディエ「あたし、シグバートやレオナと よくケンカしてたんだけどさ」
ヴィオラ・コーディエ「無視しようと思っても どうしても気になっちゃうよな」
ノエル・エンジェライト「・・・ケンカ、ですか」
ヴィオラ・コーディエ「あ! あとバーバラ先生に叱られてるときとか」
ヴィオラ・コーディエ「胸がざわざわして その場から逃げ出したい気持ちになるよ」
ノエル・エンジェライト「・・・そうですか」
ノエル・エンジェライト「では・・・」
ノエル・エンジェライト「自分の失態で迷惑をかけた相手だから ・・・ということでしょうか」
ヴィオラ・コーディエ「もしかして、ミモザのこと?」
ヴィオラ・コーディエ「ミモザも恥ずかしいって言ってたよ だからお互い様ってことでいいじゃん」
ノエル・エンジェライト「・・・なぜですか ミモザさんに落ち度はないはずですが」
ヴィオラ・コーディエ「それは・・・」
ヴィオラ・コーディエ「・・・ノエル、あそこ! 茂みの陰に人が倒れてる!」
ヴィオラ・コーディエ「迷子かな?」
ノエル・エンジェライト「・・・脈はあるようです」
ヴィオラ・コーディエ「よかった!」
ヴィオラ・コーディエ「やっぱさ、別行動のときは あたしら、別々のほうがいいな」
ヴィオラ・コーディエ「もし毒とかだったら ミモザかシグバートがいないと治せないし」
ノエル・エンジェライト「シグバートさんは解毒魔法を使えません」
ヴィオラ・コーディエ「そうだっけ」
ヴィオラ・コーディエ「ま、とりあえず連れて帰ろうぜ ノエル、水はよろしくな」
ノエル・エンジェライト「わかりました」
〇森の中
ヴィオラ・コーディエ「ただいまー」
シグバート・フォン・ブラッドショット「遅かったな・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・!?」
ノエル・エンジェライト「茂みで倒れていたので連れてきました」
シグバート・フォン・ブラッドショット「な・・・ なぜデアネイが!?」
ヴィオラ・コーディエ「え、デアネイって・・・」
ミモザ・クラリティ「シグバート様、食材を切り終えまし・・・」
ミモザ・クラリティ「・・・デアネイ様!?」
???「うーん・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「ミモザさん・・・!? どうしてここに?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「それはこちらのセリフだ」
デアネイ・フォン・スペサルト「義兄上・・・!」
ヴィオラ・コーディエ「きみ、ミモザの妹だよな? どうしてあんなとこで倒れてたんだ?」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・それは・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「魔物か!?」
ヴィオラ・コーディエ「にしてはすぐ近くから聞こえたけど・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「あぅ・・・ い、今のは・・・」
ミモザ・クラリティ「もうすぐ夜になります 詳しい話は食事をしながらにしませんか?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・そうだな」
ヴィオラ・コーディエ「じゃ、みんなでささっと仕上げちゃおうぜ!」
〇森の中
デアネイ・フォン・スペサルト「おいしい!」
ミモザ・クラリティ「ノエル様が採ってきてくださったキノコがいい風味です」
シグバート・フォン・ブラッドショット「キノコの見分けなど、よくできたな」
ノエル・エンジェライト「・・・山育ちですので」
ヴィオラ・コーディエ「最後に入れた白ワインもいい味出してるな!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「おい それはオレの荷にあったワインか?」
ヴィオラ・コーディエ「やべっ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ブラッディ周辺でしか栽培していない白葡萄で造られたワインだぞ!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「母上の目を盗んで城の貯蔵庫から拝借してきたのに・・・」
ヴィオラ・コーディエ「ごめんって! エレスティアで美味いワイン奢るからさ!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「そういえばおまえはエレスティア出身だったな 美味いワインを知っているのか?」
ヴィオラ・コーディエ「うん! 港町ポーラの白ワインはエレスティアで一番美味いんだって」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・・・・」
ミモザ・クラリティ「・・・デアネイ様 どうしてプレーンにおられるのですか?」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・父上の・・・こと 知ってしまって・・・」
ミモザ・クラリティ「陛下のこと・・・ですか?」
デアネイ・フォン・スペサルト「ミモザさんと・・・ ミモザさんの母上のこと」
ノエル・エンジェライト「・・・!」
デアネイ・フォン・スペサルト「あんなことを・・・! 父上のこと、信じてたのに・・・!」
ミモザ・クラリティ「デアネイ様・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「ボクは未成年だからまだ王になれない ・・・父上が生きてる限りは」
デアネイ・フォン・スペサルト「ツートーン魔法学園でしか栽培してない毒草があるって噂で訊いて・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「やめておけ 父親殺しが露呈すれば、民信を失うぞ」
デアネイ・フォン・スペサルト「でも、義兄上・・・!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・なぜスペサルト行きのポータルが停止していたかが判明したな」
ヴィオラ・コーディエ「どういうこと?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「家出した娘を遠くへ行かせないためにナギット様・・・スペサルト王が命じたのだろう」
ヴィオラ・コーディエ「・・・なるほどね」
シグバート・フォン・ブラッドショット「とにかくデアネイ 今日はオレたちと休んで、明日スペサルタイトへ戻れ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「デアネイが戻れば、ナギット様もポータルを再稼働させるだろう」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・・・・ 義兄上も・・・ 父上みたいになるの?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「なんだと?」
ミモザ・クラリティ「シグバート様、デアネイ様・・・!」
ヴィオラ・コーディエ「な、話し合いは明日にしない? 今日はもう遅いし・・・」
ノエル・エンジェライト「同意します」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・確かにな デアネイ、オレたちを出し抜いて学園へ行こうなどと思うなよ」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・・・・」
〇テントの中
ヴィオラ・コーディエ「あいつ、あんな言い方しなくたっていいのにな」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「きみが国に戻りたくないなら戻らなくてもいいと思うよ」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「なんて・・・ 無責任なこと言うとシグバートがうるさいかもな」
デアネイ・フォン・スペサルト「あなた・・・」
ヴィオラ・コーディエ「ん?」
デアネイ・フォン・スペサルト「あなたは・・・ 義兄上の・・・なに?」
ヴィオラ・コーディエ「シグバート? 友だち・・・って言っていいのかな?」
ヴィオラ・コーディエ「あ、でも今は特別試験の・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「義兄上は姉上の婚約者なの! あなたみたいな人がなれなれしくしないで!」
ミモザ・クラリティ「デアネイ様!」
ヴィオラ・コーディエ「あたしが追いかける! ミモザはシグバートとノエルに知らせて!」
ミモザ・クラリティ「は、はい!」
〇森の中
ヴィオラ・コーディエ「いないな・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・ヴィオラ!」
ヴィオラ・コーディエ「シグバート!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「オレも行く 火精術があれば視界を確保できるだろう」
ヴィオラ・コーディエ「うん! さ、行こう!」
〇山中の川
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「父上・・・ どうして母上を・・・」
ヴィオラ・コーディエ「・・・あ、いた!」
ヴィオラ・コーディエ「さ、戻ろうぜ」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「デアネイ・・・ 先ほどはすまなかった おまえの気持ちも考えずに・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「どうして・・・ その人と来たの?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「夜に行動する場合、火精術と光精術の使い手は分けたほうが・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「やっぱり義兄上も・・・ 父上みたいに・・・」
ヴィオラ・コーディエ「ちょっと待てよ きみの父さんはなにをしたんだ?」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ミモザは庶子だ それが意味するところを知ってしまったのではないか」
ヴィオラ・コーディエ「あっ、そうか・・・」
ヴィオラ・コーディエ「けど、シグバートも・・・って どういう意味だ?」
デアネイ・フォン・スペサルト「だって・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「義兄上は・・・ 姉上がいるのに、他の女の人と仲よくして・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「それも、姉上の前で! 不誠実だと思わないの!?」
「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「おまえ、ミモザの前で女の子と仲よくしてたのか? そりゃ嫌がられるだろ」
デアネイ・フォン・スペサルト「えっ・・・!?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「ミモザは嫌だなんて言わないだろうけどさ もうちょっと優しくしてやれよな」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・善処しよう」
デアネイ・フォン・スペサルト「え、あ、あの・・・」
ヴィオラ・コーディエ「ま、とりあえず戻ろ ミモザとノエルも心配してるだろうし」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「分かっただろう? あいつはああいう奴なんだ」
デアネイ・フォン・スペサルト「あの人・・・だいじょうぶなの?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・どうだろうな」
シグバート・フォン・ブラッドショット「オレはあいつを・・・ むしろ、ノエルより男だと思っている」
デアネイ・フォン・スペサルト「それもどうかと思うけど・・・」
デアネイ・フォン・スペサルト「でも・・・ 悪い人じゃなさそうだね」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・それは間違いないな」
〇テントの中
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・ヴィオラ、さん」
デアネイ・フォン・スペサルト「ボク、誤解してて・・・ごめんなさい」
ヴィオラ・コーディエ「誤解・・・?」
ヴィオラ・コーディエ「ま、気にすんなよ!」
デアネイ・フォン・スペサルト「ミモザさんも、ごめんなさい」
ミモザ・クラリティ「いいえ ご無事でよかったです」
ヴィオラ・コーディエ「今日はもう寝ようぜ 明日のことは明日考えよう!」
ミモザ・クラリティ「そうですね おやすみなさい、ヴィオラさん、デアネイ様」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・おやすみなさい」
ヴィオラ・コーディエ「・・・・・・」