王太子殿下、女の私が騎士団長でいいんですか!?

川原サキ

18話 新たな難題(脚本)

王太子殿下、女の私が騎士団長でいいんですか!?

川原サキ

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〇武術の訓練場
富士丸葵「次は隊列を組んだまま駆け足。行くよ!」
  舞踏会の客人も皆それぞれの屋敷に引き上げて、イーリス城にはいつもの日常が戻ってきた。
  私も騎士団員たちと、馬術の訓練に励んでいる。
富士丸葵「よーし、それじゃあ少し馬を休ませよう。休憩が終わったら馬上試合の模擬戦だよ」
タラゴン「げぇ~ッ! まだ続けるんですか!? 騎士団長がこっちにかかりきりだと、拗ねちゃいますよ?」
富士丸葵「拗ねるって、誰が?」
タラゴン「決まってるでしょ、王太子殿下ですよ!」
富士丸葵「ぶっ!!」
  思わず、飲みかけたお茶を吹き出してしまった。
富士丸葵「な、なんで私がいないからって、王太子殿下が」
タラゴン「あれ~、騎士団長、自覚ないんですかぁ? あの博愛主義の王太子殿下が、騎士団長だけは特別扱い」
タラゴン「兄か親友か・・・いや、恋人みたいだって、評判ですよ」
富士丸葵「ばっ、バカなこと言わない! 王太子殿下に、不敬が過ぎるよ!」
  慌てて叱りつけるが、心臓がバクバクとひどい音を立てている。
チャイブ「オレたちが不敬だなんて、ひどいこと言うなぁ」
タラゴン「そうそう、不敬は宰相ブランのヤツですよ!」
富士丸葵「ブラン? 彼ならもう大人しくなったはずだけど」
チャイブ「とんでもねえよ、団長! アイツは舞踏会が終わってから毎日、議会で殿下をネチネチ責めてるって話ですぜ」
  チャイブの言葉に、耳を疑う。
富士丸葵(ブランには、メリナ姫のことで一泡吹かせたはずなのに、どうして)
富士丸葵「その話、詳しく聞かせて!」
チャイブ「俺たちも、マルク様がぼやいてたの聞いただけなんで。 これ以上のことは分からねえよ」
タラゴン「気になるなら、自分で確かめりゃいいじゃないですか」
富士丸葵「確かめるって言っても、私は大臣との会議には出席できないし」
チャイブ「おっと、そりゃ団長らしくねえな。正攻法がムリなら、抜け道を探すのが戦術の基本でさぁ」

〇城の回廊
富士丸葵「右から3つ、下から15個・・・こ、ここかな?」
  回廊に面した城の外壁。
  そのレンガをそっと引っ張ると。
富士丸葵「すごい、チャイブの言ったとおりだ!」
  すっぽりと抜けたレンガひとつ分の穴。
  そのの向こうには、レイルズと大臣たちがそろい踏みする会議室がある。
  つまりここは、昔誰かが作った、会議を盗み聞きするための穴なのだ。
富士丸葵(チャイブってば、よくこんなこと知ってたな)
  感心しながら、柱の陰に身を隠して耳を壁の穴にピタリと付ける。
  すると──
富士丸葵(この声は・・・)

〇城の会議室
ブラン「では、今回の舞踏会でご招待した姫君からの求婚は、全てお断りになると」
レイルズ「もう何度も、そう言ったよ」
ブラン「やれやれ・・・信じられませんな。殿下がこの国の財政状況を把握なさっていないとは」
レイルズ「それは分かってる。今年の作物の収穫が終われば、国庫にも余裕が──」
ブラン「甘い、甘すぎますぞ! そもそも殿下はもうとうに身を固められてしかるべき年齢」
ブラン「裕福な姫君が数多、殿下との縁組みを望んでおられる!」
ブラン「真に王国のためを想われるのであれば、一刻も早く身を固めるべきではありませんか! しかるに!!」
  ドンッ
  ブランは語気を強め、ドンと机を叩く。
ブラン「殿下は姫を選り好みし、国のための政略結婚をなさるつもりはないと言う!」
ブラン「これは国家に対する背信行為に他なりませんぞ!」
マルク「口が過ぎますぞ、宰相殿!」
ブラン「金食い虫の戦争屋は黙っていろ! これは政治の話だ!」
マルク「くっ・・・」
  ブランは意地悪い笑みを浮かべながら、ゆっくり椅子から立ち上がる。
ブラン「王太子殿下・・・素直に白状なさったらどうです?」
レイルズ「白状? なんのことか分からないな」
ブラン「あの舞踏会の夜、殿下が特別に目をかけられていた姫がいらっしゃいましたな」

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