王太子殿下、女の私が騎士団長でいいんですか!?

川原サキ

17話 メリナの決意(脚本)

王太子殿下、女の私が騎士団長でいいんですか!?

川原サキ

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〇貴族の応接間
富士丸葵「うん・・・咳も出ないしもないし、顔色もいい」
メリナ「だから言ったであろう? 姫はもう大丈夫じゃ!」
  舞踏会から5日後。
  完全に回復したメリナが、王太子の間にやってきた。
レイルズ「元気になって本当に良かった。だけど、もう少し養生していくんでしょう?」
メリナ「いや、あいにくじゃが、姫は明日にもこの城を発とうと思う」
富士丸葵「そんな急な!」
レイルズ「そうだよ、長旅は体に毒だ」
メリナ「かもしれんが、姫には心強いお医者様がついておるゆえな」
レイルズ「お医者様?」
  メリナがパンパンと手を叩くと、ひとりの青年が広間におずおずと入ってきた。
ユーリ「あ、あの・・・すみません・・・」
レイルズ「ユーリ? どうして君が?」
  さすがのレイルズも、目を丸くして驚いている。
ユーリ「はい。実は、メリナ姫の症状に心当たりがあって」
  恐縮しながらも、ユーリは熱心に語り始めた。
ユーリ「私は学所で、ユルベールや周辺諸国の地質について研究してるんです」
ユーリ「メリナ姫の暮らすバザルト公国は、国土の多くを鉱山が占めている」
ユーリ「採掘される中には毒性のある鉱石もあります」
ユーリ「姫に出ている症状は、ある鉱物が引き起こす中毒症状に、とてもよく似ていました」
レイルズ「鉱石の、中毒・・・」
メリナ「ユーリの見立てでは、国の水源となっている湖の中に、鉱毒が溶け込んでいる」
メリナ「それを飲んだ者の一部に、風土病の症状が現れているのではないかということなのじゃ」
ユーリ「それで、鉱物の中毒に効く薬草を調合して、飲んでいただいたんです。 効果があって良かったです」
レイルズ「すごいじゃないか、ユーリ。君はこの短期間で、そこまで突き止めたの?」
ユーリ「あ、あの・・・以前から、バザルトの鉱物に興味があって、いろいろ調べていたので」
  レイルズに褒められたユーリは、顔を真っ赤にして口ごもっている。
メリナ「そこで、レイルズ殿に相談なのじゃ」
レイルズ「相談? なんだろう」
ユーリ「解毒薬自体は、簡単に作れるんです」
ユーリ「ですが、仮説通りバザルトの水源に問題があるなら、それを浄化しないと風土病は根絶できません。ですから、その・・・」
メリナ「ユーリを我が国の研究者として、迎え入れたいのじゃ!」
  歯切れの悪いユーリに代わって、メリナはそう言うと勢いよく頭を下げた。
メリナ「優秀な学士であるユーリを我が国に譲れとは、不躾な願いであることは重々承知」
メリナ「しかしバザルトの国民のため、未来のため、ぜひこれを認めて欲しい」
富士丸葵「メリナ姫・・・」
  レイルズは深々と頭を下げるメリナとユーリに、一歩あゆみ寄ると笑顔を浮かべた。
レイルズ「ふたりとも、顔を上げて」
ユーリ「王太子殿下、わ、私は・・・」
レイルズ「ユーリ、バザルトに行くのは、君の意志でもあるんだろう?」
ユーリ「は、はい。私に学問の道を与えてくださったユルベール王国に、なんの成果もお返ししていないのに、申し訳ありません」
ユーリ「ですが、私の知識で誰かを救うことができるのなら・・・」
  ユーリはチラリとメリナ姫の顔を見た。
  メリナも力強い瞳でユーリを見つめ返す。
富士丸葵(あれ、もしかしてこのふたりって・・・)
  私の心の声に気付いたように、レイルズが私に視線を送り、笑みを浮かべる。
ユーリ「わ、私は、この先の人生を、バザルト公国とメリナ姫のために、捧げたいのです!」
レイルズ「そうか。その言葉が聞けて、良かった」
  レイルズは満足げにうなずくと、ふたりの手を取り、重ね合わせた。
レイルズ「メリナ姫、ユーリは我が国の誇る優秀な若者です」
レイルズ「バザルトでも、どうかお引き立てをお願いします」
  そしてユーリに視線を移し。
レイルズ「ユーリ。必ず自分の使命を果たし、メリナ姫とバザルト公国をお守りするんだよ」
ユーリ「は、はい!」
  メリナはそんなふたりを静かに見つめてから、私に右手を差し出した。
メリナ「アオイ殿、長らく世話をかけたな。この半月をアオイ殿と過ごせたこと、姫はきっと生涯忘れぬじゃろう」
富士丸葵「世話だなんて。姫と一緒に過ごせて、私も楽しかったです」
  私はメリナの小さな手を力強く握る。

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