罪  恋―TSUMIKOI―

望月麻衣

エピソード14 ゲームオーバー(脚本)

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〇ホテルの部屋
  復讐への手筈が整い、その前祝いに実業家の男を呼んで抱かれた夜。
  いつも以上に激しくむさぼる男を見ながら、
  コトが終わったら身を隠さないと、面倒なことになるなと感じていた。
  何度も抱かれ、男が帰った後、疲労感に襲われながらベッドに横たわり、花びらのように散らされた万札をなんとなく見ていると、
  突然、梓が部屋に訪れた。
  驚いたように、怯えたように、こちらを見る大きな瞳に、
  意外なほどに何も感じなかった。

〇ホテルの部屋
久弥「突然、訪ねてくるなんて珍しいな」
  梓に視線を合わせて、口角を上げる。
  キスマークだらけの身体に、ベッドの上に散らされた万札。
  あー、見られたな。
  その程度の感覚だった。
  言葉も出ない様子の彼女に、興奮すら感じゾクリとした。
  穢れていると思っているんだろう。
  彼女の口から蔑みの言葉が出るのだろうか?
  そう思うと、更にゾクゾクする自分は、やはりどこか壊れている。
  何も言わない彼女に、追い打ちをかけた。
久弥「せっかく来てもらったけど、悪い。 疲れてるんだ。 抱かれるのは、抱くよりも疲れるな」
  さあ、梓。
  
  
  なんて言う?
  汚いと声を上げるのか、泣いて飛び出すのか。
  それは、君の中で俺がいっぱいになる瞬間だ。
  身震いするほどに、ゾクゾクする。

〇ホテルの部屋
  彼女は小刻みに震え、目にいっぱい涙を溜めながら視線を合わせた。
梓「涼太を・・・憎んでるの?」
  なぜ、そんな言葉が出るのか、解せないままに頬杖をつくと、
梓「涼太のお母さんとも、寝てるんでしょう?」
  梓は目をそらしながらそう言った。
  なるほど、女の勘は本当に鋭い。
  そこまで察していたとは。
  梓を抱くことで、快楽と刺激を楽しんでもらえたらと思っていたのに、
  
  
  まさか胸を痛めていたとは・・・
  俺は君にとって、純粋に君を悦ばせることができるオモチャであればそれでいいと思っていた。
  胸を焦がすのは、俺だけでいいと。
  オモチャは楽しませるもの。
  苦しい想いをさせていたなんて、
  
  
  微塵も気付かなかったよ。

〇ホテルの部屋
  性的なこと以外には、ちっとも勘が働かないこの自分は、
  やっぱり壊れたオモチャだ。
久弥「梓とはゲームオーバーだ。 もう、会わない」
  梓は更に身体を震わせた。
梓「・・・いや・・・だよ、久弥。 そんなこと、言わないで?」
梓「涼太を憎んでいて、私と寝ることで、涼太に復讐したいっていうなら、私を利用してもらっていいから、」
梓「もう会わないなんて、 そんなこと言わないで?」
  ポロポロと流れる涙を前に、
  
  
  胸が痛む。
  梓に想ってもらえて、嬉しいという感情が湧かない。
  こみあがるのは、申し訳なさだけ。
梓「それとも・・・涼太のことを憎んでるなんて口にしたのがいけなかった? それなら、もう二度とそんなこと・・・」
久弥「――梓」
  彼女の言葉を遮る。
  ごめんね、梓。
  
  
  こんな風に苦しめてたなんて、思ってなかった。

〇ホテルの部屋
  指で、彼女の輪郭をなぞり、そっと顔を覗き込んだ。
  すぐ目の前にある梓の情けない顔に胸が詰まる。
  優しく後頭部を包んで、コツンと額を合わせた。
久弥「これに懲りて、 もう二度と悪いオトコには捕まるなよ」
  心からの言葉だ。

〇ホテルの部屋
  ――梓
  
  
  
  壊れたオモチャは夢を見ていたよ。
  好きな人を幸せにできていたという夢。

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