王太子殿下、女の私が騎士団長でいいんですか!?

川原サキ

15話 舞踏会開幕(脚本)

王太子殿下、女の私が騎士団長でいいんですか!?

川原サキ

今すぐ読む

王太子殿下、女の私が騎士団長でいいんですか!?
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇大広間
  大広間に現れた、ひときわまばゆく輝く姫。それはメリナだった。
  あまりにも豪華なその出で立ちに、招待客がみな感嘆の息を漏らす。
レイルズ「メリナ姫、1曲踊っていただけますか?」
メリナ「喜んで、レイルズ王太子殿下」
  美しいワルツの調べに乗せて、レイルズとメリナが踊り始めた。
  メリナがクルリとターンすると、身につけたバザライトがきらめき、あたりに光のシャワーが降り注ぐ。
富士丸葵(メリナ姫、すごく綺麗だ。それに、ほんの1日会わないだけで、ぐっと大人っぽくなった気がする)
  小柄なメリナの体は、レイルズの腕の中に、すっぽりと収まってしまう。
  ふたりは顔を寄せ合い、何やら言葉を交わすと、弾けるような笑顔を浮かべた。
  ブランがそんなふたりを見て目を丸くする。
ブラン「ど、どういうことだ。メリナ姫は騎士団長に夢中のはずでは」
  悔しげにうめくブラン。マルクはしてやったりの表情で、私に視線を送る。
  けれど私は、うまく笑顔を返せない。
富士丸葵(どうしよう、胸が痛い・・・)

〇大広間
  演奏が終わると、レイルズとメリナはお辞儀を交わす。
  次の姫と踊り始めたレイルズをフロアに残して、メリナが私の方へやってきた。
富士丸葵「とても素敵でしたよ、メリナ姫」
メリナ「姫も着飾れば、それなりに見えるであろう?」
  冗談めかして言うメリナ。その額には汗が浮かび、頬は紅潮している。
富士丸葵「少しお疲れのようですね。あちらで休みましょうか」
メリナ「そうじゃな」
  大人しくうなずき、長椅子の方に向かおうとしたが──
メリナ「っ・・・!」
  よろめいたメリナを、慌てて抱きかかえた。
富士丸葵「大丈夫ですか!?」
メリナ「だ、大事ない、少し、めまいがしただけ──ケホッ! ゴホ、ゴホ!」
マルク「どうした、アオイ」
富士丸葵「メリナ姫が発作を起こしました! 医者を呼んでください!」
マルク「なに!? 分かった! お前は姫をお部屋に!」
富士丸葵「はい!」

〇城の客室
メリナ「スゥ・・・スゥ・・・」
  医師の応急処置を受けたメリナが、ベッドの上で小さく寝息を立て始めた。
富士丸葵「メリナ姫は大丈夫なんでしょうか」
宮廷医師「ひとまず発作は治まりました。2、3日はこのまま療養すれば良くなります」
富士丸葵「あの、この発作は」
  恐る恐る尋ねた私に、医師は苦い表情でゆっくりと首を振った。
宮廷医師「バザルト公国特有の風土病です。治療法はありません」
富士丸葵「じゃあ、不治の病ってことですか?」
宮廷医師「発作さえ抑えれば命の危険はない病です。疲労を溜めないよう、気をつけることですな」
  冷静にそう告げて、医師は部屋を後にした。
  入れ替わりに女官が入ってきて、葵に伝言を伝える。
女官「アオイ様。王太子殿下がお呼びです」
富士丸葵(そう言えば、殿下に頼みがあるって言われてたんだ)
  メリナのことは気にかかるが、舞踏会はまだ始まったばかりだ。
  メリナのことを女官に任せて、私は王太子の間に向かった。

〇貴族の応接間
富士丸葵「王太子殿下。お待たせしてすみません」
レイルズ「大丈夫だよ。10時の鐘が鳴るまで、ダンスは小休止だ」
レイルズ「それより、メリナ  は?」
  医師から告げられたことをレイルズに伝えると、彼は私を落ち着かせるように微笑みを浮かべた。
レイルズ「心配だろうけど、大丈夫だよ。命に関わる病じゃないし、メリナは強い姫だ」
富士丸葵「はい」
  それでも浮かない顔をする私を、レイルズがのぞき込む。
レイルズ「今日のアオイはずっと、泣き出しそうな顔をしてる」
レイルズ「メリナの病気のことだけじゃないよね。 どうして?」
富士丸葵「それは・・・」
レイルズ「もしかして、僕とメリナの婚約のこと?」
  ドキン、と胸が大きな音を立てた。
  聞きたくない言葉を突きつけられる気がして、ギュッと拳を握る。
レイルズ「アオイ、大事な話だ。ちゃんと聞いて」
  レイルズが私の汗ばんだ手にそっと触れた。
レイルズ「僕は王太子だ。僕と結婚する女性は、将来この国の王妃になる」
レイルズ「だから、僕はユルベールのことを考えて、妃を選ばないといけない」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:16話 夢の時間

成分キーワード

ページTOPへ