おやごころぎょうけつ(脚本)
〇古いアパート
殿 福「先週は毎日ケガ人が出たから、今週こそ平和な学校生活を送ろうな」
あづま「ウン!」
殿 福「いい返事が怖いよ そろそろ社会常識を身につけてね?」
殿 福「あ、親父 久しぶりに見たな」
殿 今日「実は、家の庭でキャンプするつもりが、魔が差してテントで紙ヒコーキを折ってしまって・・・」
殿 福「ホテル暮らしするハメになった? ばかだなあ」
殿 今日「いや──テントヒコーキが舞い上がって、降りるのは面倒だから飛んだまま生活してみた」
あづま「その滞空時間、履歴書に書けるぞ!」
殿 福「変な社会常識を出力してきたな」
殿 今日「でも妙だ、俯瞰してみると、ここ数日アパートが何者かに監視されている」
あづま「──!!」
殿 福「ストーカー? 先輩とかあづまの浮気相手とか、容疑者が多すぎる・・・」
〇屋根の上
手の者「どうだ」
手の者「侍が邪魔です」
手の者「まだ動かないのか!? 3日経つぞ」
玄担 一茶「そこな御仁、寝坊して朝食を食べ損ねてしまったのだが何かいただけないだろうか」
手の者「実は私も寝坊しまして」
手の者「すみません仕事中ですので」
玄担 一茶「これは失礼。屋根修理、頑張って」
手の者「まだ見えないか?」
手の者「侍が邪魔です」
〇おしゃれな教室
殿 福「パイナップルは爆弾に改造しちゃだめなの」
あづま「イガグリまでかあ」
南都 勅使香「キイィィィィ!! やっぱり一緒に登校してきたっ!!」
殿 福「ブレーキみたいな音でエンジン全開だ!」
南都 勅使香「あづま様、そんな男のどこがいいの!?」
あづま「ええ〜ヒミツ・・・」
南都 勅使香「恥ずかしがるあづま様も素敵!! 福ちゃんはふさわしくない!! 誰がふさわしいかって? そう」
殿 福(そういや、あづまはどうして俺なんかを好きなんだ・・・?)
〇散らかった職員室
浦紫 縞太郎「いいだろう。私も両脚を全治1ヶ月にされると腹が立ってきた。立てないからね」
大路 路大「先輩の顔を立てられないシンガリくんが悪いのですよ」
曇天坂 昇「シンガリに恨みはないが、あの父親──くそっ後悔先に立たず! 人生は複素数、虚部がある・・・」
大路 路大「南都財閥の調査によると、先生は完璧に好みのハズ。予算も南都から出るので思いきりやってください!」
仁輝 冷果「は〜い」
〇おしゃれな教室
仁輝 冷果「休田先生が腸捻転のため私が担当します。にてるれいかです既婚です」
あづま「裂果さんだ!」
殿 福「他人の空似だけど、似てる」
仁輝 冷果「──クローン技術の発展はすさまじく、自分のドッペルゲンガーに会っちゃったと思ったら自分自身だった、なんて怪談ができるかも」
殿 福「知り合いのそっくりさんに教わりたくない単元だった、恐ろし拡大半減だった」
〇おしゃれな教室
仁輝 冷果「アヴァランチカスタムさん、ちょっといい?」
あづま「あづまでいいよ」
仁輝 冷果「転校して日が浅いから、学校を案内したいと思うのだけど」
殿 福「毎日違う人間が言い寄ってきて案内してくれてるから、もう大丈夫だと思います」
仁輝 冷果「でも、毎日事件を起こしているそうだし・・・」
殿 福「全て俺の教育のせい──では全くないけど──申し訳ないです。 お願いします」
あづま「どこ案内してもらおうかなー!」
〇たこ焼き屋
仁輝 冷果「買い食いもまた学校生活に必須よ」
仁輝 冷果「はい、あーん」
あづま「はふはふ。おいしーい」
仁輝 冷果「そうでしょうそうでしょう。さあたこ焼きが100隻の舟で攻めてきたわ。タクティクスを見せて」
あづま「この陣形なら、ここを串刺しだっ!」
〇学校の部室
大路 路大「久しぶりの部活動、気分はどうだ」
殿 福「部活に復活! ていやいや、帰宅部ですよ。先輩だって」
大路 路大「私は家計部部長だよ? 部室は練習中の野球部部室」
殿 福「貴人風奇人キャラはどうしたんだよ」
大路 路大「食費には気を遣うよな 外で誰かに奢ってもらったりすると最高だ」
殿 福「活動始まっちゃった。毎日朝食を奢っている立場なので、概ね同意ですけど」
大路 路大「できればずっと外で遊んでいてほしい、そんな家族がいる?」
殿 福「いないとは言えない、ウチの場合散らかるとかじゃなくて崩壊だから」
大路 路大「また変なもの買ってきて! どうするのこれ貯金は大丈夫なの!?」
殿 福「変なもの作ったり持ってる子はいて、処理は大体爆発なので片付くけど後処理が大大爆発くらいの額になりがち」
大路 路大「そもそも収入ってどうなってるの!? 支出しかなさそうだけどホントに大丈夫?」
殿 福「どうなってるんだ──」
大路 路大「全部に当てはまる問題児がいる!」
殿 福「腹立ってきたな」
曇天坂 昇「今日は家計に苦しむお前を奢ってやる 知り合いのうどん屋があってな」
大路 路大「顧問の曇天坂先生!」
殿 福「ごっこ遊びかと思ったら顧問俺の担任か、肝心か?」
大路 路大「家計簿を見直したら、食べに行こうじゃないか!」
殿 福「よーし思いっきり切り詰めてやるー!」
〇遊園地の広場
あづま「こんなところも学校生活なんだね!」
仁輝 冷果「ふふ。まだ気付かないの? これはデート」
あづま「デートってなんだっけ?」
仁輝 冷果「デートは、愛の逃避行、癒しの包囲網」
仁輝 冷果「あなたは私のもう持病♡」
南都 勅使香「当館からのサービスですわ」
あづま「ヨダレでベトベトだからいらない」
南都 勅使香「なぜバレた──」
〇観覧車のゴンドラ
あづま「お腹がたこ焼きみたいに膨れ上がってるから座ってられるのはいいなあ」
南都 勅使香「スンスンスン、あづま様の香りが充満して最高」
あづま「薬莢の匂いだから実弾を撃てば嗅げるよ」
あづま「ボクにとっては、そんなに好きな香りじゃないけど・・・」
仁輝 冷果「あづま様は生粋の兵士、辛い経験を思い出させてはだめ!」
あづま「あなた、裂果さんだよね?」
宇蘭 裂果「気付いてくれると信じてた」
あづま「久しぶりな感じがする! らぶらぶしたいな〜」
あづま「でもダーリンと約束したから・・・」
〇うどん屋台
曇天坂 昇「第一志望最終面接に向かう駅近5分の道、俺は点P! 秒速5mで移動する点Pにあの男は言った!」
殿 今日「君も黄身になってみないか? 生まれ変わるぞ」
殿 福「もう食いたいぜうどん、超伸びた伊勢うどん」
浦紫 縞太郎「私が休職してうどん屋台をやっているのもシンガリ一家のせいだ、悪いと思うなら聞いてくれ」
曇天坂 昇「白身まみれ、ヌルッと留年──あの時の俺の体積がわかるか!? 俺は半径0.6mの球とする。ただし纏った白身を体積に含む!」
殿 福「卵──そうだ! 俺、帰ってあづまにオムライス教えなきゃ!」
大路 路大「これだけ引き留めて麗しの転校生が帰らなければ、破局が訪れるハズ──!」
〇遊園地の全景
あづま「きれいだ、エネルギー資源を取り合わないでいい国は無駄遣いできるんだなあ」
南都 勅使香「どう? 南都財閥のプライベートジェットなら観覧車より上から見渡せるし、最高級コースも食べ放題」
あづま「こんな美味しいの食べたことないし、遊園地はぐるぐるだ、楽しいなー」
宇蘭 裂果「あづま様はもっと癒されるべきなの。さあ次は南都グランドホテルに──」
あづま「ぐるぐる──そうだ、ダーリンに卵の溶き方を教えてもらうんだ!!」
宇蘭 裂果「この高さでも無事だと確信できる美しさ、完璧──!!」
南都 勅使香「香りが、あづま様の芳香が逃げる!!」
〇安アパートの台所
殿 福「早くしてよ〜ペコペコだよ〜」
あづま「卵って人差し指で触れただけで破裂しちゃうんだ!」
殿 福「3パック目だぞ!? 銃撃ちまくって人差し指だけ鍛えられすぎ!」
あづま「けぷ。実はボク、お腹いっっぱいで」
殿 福「もう! ご飯食べられなくなるから程々にしなさいって言ったでしょう!」
あづま「でもねボク、ダーリンのご飯がいちばんいいと思ったよ」
玄担 一茶「あったかい味がするからな・・・」
殿 福「なんだよ急に。でへへへへ」
あづま「ボクにマミーがいたらダーリンみたいな感じかもな!」
殿 福「しつけして飯あげて、たしかに親代わりじゃないか・・・」
殿 今日「そういうわけで我輩の夕食も頼む」
殿 福「俺は親父の親じゃねー!!」