後は野となれ 花となれ

もと

笑える内に笑え(脚本)

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〇山道
リュート「地図通りなら ここを抜けると王都の端の村に入る」
ロゼ「・・・すごい、着いちゃいましたね!」
ワイズ「だ!」
リュート「予定通り、姿を変えておくぞ」
リュート「ワイズ、貸せ」
ワイズ「あい!」
ロゼ「やっぱり慣れませんね」
ロゼ「うふふ」
ロゼ「あはは、可愛い!」
リュート「よし」
リュート「両側から支える 練習しただろう、浮いておいてくれ」
ワイズ「あぶ!」
ロゼ「うふふ」
リュート「喋るなよ」
ワイズ「だぶー」
ロゼ「うふふ」

〇草原の道
リュート「こんな田舎まで兵がウロついているとは 警護と言う名の監視か」
ロゼ「でも村の人達との仲は良さそうですね お手伝いしてる騎士さんもいたし」
リュート「命令を受けただけなのが良く分かる 戦う為に居る者がこんな所に送られたら やる事も無いだろう」
リュート「何もかもが無駄だな」
ロゼ「その新しい王様は 色んな無駄に気付いてないんですかね?」
リュート「やりたい事が子供なのだろう 『自分が一番偉い』と示したいとか そういう感じを受けないか?」
ロゼ「そう・・・だとしたら最低ですね!」
リュート「それしか見えていないのではないか 城に近付いているのに 術師の気配は無いに等しいからな」
リュート「腕の立つ術師に国中を回らせて 城は手薄になっている事にすら 気付いていないのだろう」
ロゼ「助かりますね!」
リュート「ロゼを旦那の元へ送るという 今の俺達には確かに有利だ」
リュート「ワイズはお尋ね者に近いだろうからな」
ワイズ「ばぶ」
リュート「国としては終わっている これからお前達が生きるには・・・」
リュート「いや、違うな さっさと国を捨てろ 隣国では駄目だ、遠い国で幸せになれ」
ロゼ「・・・それが一番良いと思いますか?」
リュート「ああ、そう思う」
ロゼ「・・・決めました」
ロゼ「夫と合流したら首に縄をかけて ルーサへ帰ります! みんなも誘って町ごと旅立ちます!」
リュート「そう来たか、それで良い 気持ちの良い奴らだったからな 皆で逃げてくれ」
ロゼ「リュートさんも一緒にですよ、 もちろんワイズちゃんも!」
ワイズ「あっぶー」
リュート「・・・そうだな、それも良い」
リュート「・・・」

〇中世の街並み
ロゼ「・・・わあ・・・」
ワイズ「あばあば」
リュート「喋るな」
ロゼ「あら?」
ロゼ「(これ、この張り紙、術師の赤ちゃん?! ワイズちゃんの事では?!)」
リュート「(・・・そうみたいだな)」
ロゼ「(変装して正解でしたね)」
リュート「(行動を共にしているロゼの旦那が 軍属の術師だという事も把握しているぞ、 ここに来るのも分かっている、と)」
リュート「(そういう牽制のつもりだろうな)」
ロゼ「人質という事ですかね?」
リュート「そうかも知れない 俺達の動きは読んでいるとでも 言いたい所か・・・」
  ルーサの者達に口を割らせたのだろうか?
  だとしたら町ごと消されたかも知れない。
  鶏頭を兄の様な存在だと言っていたな。
  アイツだけでも、いや、
  皆無事でいてくれたら良いが・・・。
  ・・・それかローグも触れていた教会か。
  シスターの中に内通者が居れば
  町の者達は無事なのではないか。
  ・・・もし帰る場所が無くなっていたら
  どんなに悲しむだろう・・・。

〇宮殿の門
ワイズ「ばあば」
リュート「バアバ? ・・・黙っておいてくれるか?」
ワイズ「あばー」
ロゼ「ただいまです! この奥に宿舎があるから勝手に 入って探して良いそうです!」
リュート「そうか、行くぞ」
ロゼ「まだご機嫌ナナメですか、ワイズちゃん?」
リュート「そうみたいだ」
ロゼ「じゃあ一回ギュッてしましょう! はい、おいで?」
ロゼ「・・・あらまあ?」
リュート「・・・」
ロゼ「でもすっごく偉いよ? エンエン泣かないのね、静かで偉い!」
  ・・・ワイズよ、何に憂いているのか。
  本当に妙に鋭くて困るな。
  勝手に入ってだと?
  好機じゃないか、入ってやるんだよ。
  だから頼む・・・。
リュート「・・・ワイズ、おいで」
ワイズ「・・・」
ワイズ「・・・ぐす」
リュート「よしよし、もう少し頑張れ ・・・後少しだ」
リュート「・・・これが終わったら帰るぞ」
ワイズ「・・・ぶ」
リュート「よし、行くぞ」
ロゼ「はい!」

〇城の回廊
ロゼ「・・・」

〇城の廊下
ロゼ「あ、すみません!」
術師「・・・はい?」
ロゼ「家族への差し入れを持って来ました! この人を探しています!」
術師「・・・この廊下の突き当たり、左の部屋へ」
術師「多分そこに詳しい者が、ああ、いや、 居ないかも、ごめん 私も今戻った所で・・・」
ロゼ「あら、すみません、お疲れ様です! ご親切にありがとうございます!」
術師「・・・いえ、こちらこそ・・・ すみません・・・!」
ロゼ「・・・」
ロゼ「行きましょう、行ってきます」
リュート「・・・うむ」
ワイズ「・・・あぶ」
リュート「捕まれ、行くぞ」

〇洋館の一室
ダズ「・・・どうぞ」
ロゼ「はい、失礼します」
ロゼ「押しかけてすみません こちらは弟と母です」
ダズ「ダズと言います ユーリとは同期で・・・」
ロゼ「そうですか、兄がお世話になってます」
ロゼ「あ、これは兄の好物のアップルパイです 便りが途切れたので心配していましたが、 お仕事に出ているのですね」
ダズ「・・・はい、もうしばらくの間・・・ 元気にしていると・・・思います」
ダズ「・・・それは預かっておきますよ」
ロゼ「お願いします せっかくみんなで来たのに残念ですね」
ロゼ「でも元気なら、それなら良かったです あの・・・いえ、ええと・・・」
ロゼ「しばらく城下町で過ごします どこに居るか分かる様にしておきます」
ロゼ「もし戻ったら・・・お伝え下さい」
ロゼ「兄を、ユーリを これからもよろしくお願いいたします」
ロゼ「・・・失礼します」
ダズ「・・・あの! ま、待って・・・下さい・・・!」
ダズ「独り言です、ただの・・・」
ダズ「ユーリは死にました 殺されました」
ロゼ「・・・」
ダズ「最初の遠征で、僕も一緒にいました ユーリとは「王の役に立ちたい」と 前の晩に話して酒を・・・」
ダズ「・・・でも、違ったんです 僕達の仕事は役に立つとか立たないとか そういう事じゃなかったんです」
ダズ「村を消せと・・・ユーリは拒否しました でも僕はやった、やってしまったんです」
ダズ「ぼ、僕の術を打ち消して、ユーリは その場でノエル様に殺されました」
ダズ「ここから三日、南西へ・・・ ゴードンという村、入口の右の柱の近く、 そこに・・・います」
ダズ「・・・これを、いつかご家族にと、 あの、すみません、ごめんなさい・・・!」
ダズ「・・・貴女はロゼさんではないのですか? 話を、話は聞いていました・・・!」
ロゼ「・・・」
ダズ「いえ、独り言なので返事は要りません もしそうなら何故こんな所へ・・・ もう伝達が回っているかも知れない」
ダズ「ユーリは父親になると喜んでいました 貴女が連れていた赤ちゃんは その子では?」
ダズ「術師の子供は力を引き継ぐと聞きます だとしたら貴女も赤ちゃんも 何もしてないのに・・・!」
ダズ「逃げて下さい! どうか遠く遠く離れて下さい! 本当にごめんなさい、すみません・・・!」
ロゼ「・・・ありがとうございます」
ロゼ「貴方は悪くありません」
ロゼ「赤ちゃんは・・・そうです 元気に生まれたんですよ」
ロゼ「だからダズさんも、どうかお幸せに」
ロゼ「貴方は・・・ 正しくは無かったかも知れないけど 正義です」
ロゼ「・・・さようなら」
ダズ「・・・!」
ワイズ「・・・」
ダズ「・・・」
ダズ「・・・」
ダズ「・・・!」
ダズ「空だ!」
ダズ「窓から飛んで逃げたぞ!」
「なんだと?! 空か!」
「空を探せ!」
「急げ! 逃すな!」
「ありがとうございます」
ダズ「・・・どうかご無事で・・・」
術師「ダズ!」
ダズ「姿を消している 老人が一緒だから徒歩だと思う 全力で上へ注意を向けてくれないか?」
術師「なるほど、了解した!」
術師「・・・話したのか?」
ダズ「・・・うん、全部・・・」
術師「・・・いつかユーリの町へ行こう 他の奴らも一緒に、皆で」
ダズ「・・・うん・・・!」
術師「・・・行くぞ!」

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