〇要塞の廊下
ゲンティム「ダーリナ、ゲイダル」
ゲンティム「二人は外を見回ってきてくれ」
ダーリナ「ええ」
ゲイダル「承知いたしました」
フェゴール「念のため、私も空から哨戒にあたります」
フェゴール「あの人間、どうも怪しい・・・」
フェゴール「あと普通にイケメンすぎてムカつきます」
ゲンティム「私情を挟むな」
ローレット「あたしはエリゼの傍にいる」
ゲンティム「ああ、俺らは嬢ちゃんの護衛だ」
ゲンティム「おとなしく武器も預けてきたし、 大丈夫だとは思うが」
ゲンティム「何か引っかかる・・・」

〇王妃謁見の間
ラフェル「お招きに感謝いたします」
ヴィエリゼ「和議を──とのことだけれど、 国王の意向ではないのでしょう？」
ラフェル「ご明察の通り」
ラフェル「これは僕個人からの提案です」
ヴィエリゼ「反乱でも起こすつもり？」
ヴィエリゼ「あなたの野心に付き合う気はないわ」
ラフェル「とんでもない！」
ラフェル「僕はただ、人間と魔族の争いを 終わらせたいだけなんです」
ヴィエリゼ「えっ・・・」
ラフェル「平和的な共存を基盤として、 人間と魔族の友好関係を築きたい」
ラフェル「ずっとそう考えていました」
ヴィエリゼ「ラフェルさん・・・」
ラフェル「すぐにお返事を、とは言いません」
ラフェル「しかし、承知いただけるのでしたら」
ラフェル「魔界に手を出さぬよう、 全力で父を説得します」
ヴィエリゼ「和議の条件は？」
ラフェル「そうですね・・・」
ラフェル「僕の、お嫁さんになって いただけませんか？」
ローレット「人質にしようっての!?」
ラフェル「違います！」
ラフェル「一目惚れ、なんです・・・」
ローレット「はあ!?」
ローレット「エリゼ、こんな話聞く必要ないよ」
ローレット「別に和議なんて結ばなくたって──」
ラフェル「あなたの──」
ラフェル「魔王の討伐命令が下ったことは ご存知ですか？」
ヴィエリゼ「ええ、知っているわ」
ラフェル「国王は冒険者たちだけでなく、 帝国軍も動かそうとしています」
ラフェル「あなただけではない。 魔族を殲滅するつもりなんです」
ラフェル「このままでは、全面戦争になってしまう」
ヴィエリゼ「・・・・・・」
ラフェル「止めるなら今しかありません」
ヴィエリゼ「少し・・・考えさせてください」
ラフェル「もちろんです」
ヴィエリゼ「よろしかったら、今日はこちらに お泊まりになりませんか？」
ヴィエリゼ「これから森を抜けるのは大変でしょう」
ラフェル「よろしいのですか？」
ラフェル「ありがたい」
ラフェル「旅慣れていないもので、 正直ヘトヘトだったんです」
ヴィエリゼ「まあ」
ヴィエリゼ「ふふっ」
ヴィエリゼ「すぐに部屋を用意させます」
ヴィエリゼ「護衛の方は二名で間違いありませんね？」
ラフェル「ええ。ここまで来たのは、 二名だけですよ──」

〇霧の立ち込める森
ゲイダル「異常はなさそうですね」
ダーリナ「・・・・・・」
ゲイダル「ダーリナさん？」
ダーリナ「すみません」
ダーリナ「ヴィエリゼ様が心配で」
ダーリナ「近頃ずっと、どことなく焦っているというか、余裕がないように見えるんです」
ダーリナ「あのラフェルとかいう男に 誑かされたらどうしましょう・・・」
ゲイダル「ローレットさんが全力で止めるでしょうから、大丈夫ですよ」
ダーリナ「たしかに、そうですね」
フェゴール「ダーリナさん！」

〇アマゾンの森
フェゴール「大変です！」
フェゴール「武装した大勢の人間が、境界を越えて 魔界に侵入してきています!!」
フェゴール「私は城へ報せに戻ります！」
フェゴール「ダーリナさんは森の北東、 ゲイダルさんは西の湖の警護を！」

〇黒背景

〇木の上
キオル「だああああっ!!」

〇けもの道
ルカード「疲れた？」
キオル「疲れた!!」
ミア「ほらっ、歩いて歩いて！」
ミア「はい、あんよが上手～」
キオル「ケンカ売ってんのか！」
ルカード「あれっ」
ルカード「あそこに誰かいる・・・」

〇森の中
手下１「うわ、気持ち悪ィ」
手下２「これ、本当に死んでんのか？」
密猟者１「いいから早く外殻を剥がしちまおうぜ」
密猟者３「この歯も売れるって言ってたな」
密猟者２「あたし触りたくな～い」
ルカード「お前たち、何をしてる!?」
「げえっ!!」
密猟者１「あの時の──」
「勇者ァ!?」
キオル「うわ、こないだの密猟者に その前の密売人の手下じゃん」
キオル「お前ら何でこんなとこいんだよ」
密猟者１「お、俺らは第三王子に雇われて、 言われた仕事をしてただけだ！」
ミア「その仕事とというのは、 門番さんを解体することなのかしら？」
門番「う、うう・・・」
門番「ハッ、ここはいったい・・・」
手下１「うわぁっ！　こいつ生きてる!!」
密猟者３「どうすんだよ!?」
ルカード「よかった、無事だったんだね」
門番「あれ、勇者さん。 どうして魔界に？」
門番「魔王陛下にこっぴどくフラれたって 聞きましたけど」
ルカード「え・・・」
キオル「あっはは！ そんな話になってんのかよ！」
ルカード「そ、それより！」
ルカード「何があったんだ？」
門番「そうだ、聞いてくださいよ」
門番「魔王城に、やたらキラキラした 冒険者が訪ねて来たんです」
ルカード「ラフェル王子だ・・・」
門番「通していいのか悩んでたら、 ゴツい甲冑の人間に急に殴られて！」
ルカード「それで気絶しちゃったんだね」
密猟者１「そりゃ王子の従者だ」
密猟者１「俺らは気絶したそいつを運んで バラしとけって言われたんだよ」
門番「バラす・・・!?」
門番「怖ッ!!　こっち来ないでください!!」
門番「来たら咬みますよ!?」
密猟者１「頼まれても行かねーよ!!」
ルカード「仕事というのは、それだけ？」
密猟者１「そいつをバラしたあとは 魔獣狩りでもして遊んでろって言われてる」
ルカード「きみたちも懲りないな」
密猟者１「近く狩猟が解禁されるから、 好きにしていいぞって言われたんだ！」
密猟者１「王子サマが言うんだ。 間違いねえだろ!?」
ルカード「王子は何を考えてるんだ・・・」
ルカード「きみたち、怪我をしたくなかったら 早く立ち去るといい」
密猟者１「何でだよ！ こんな儲け話、滅多にねえんだぞ!?」
ルカード「今回、討伐命令が下ったのは あくまで魔王だけだ」
ルカード「冒険者ギルドも商業ギルドも、 魔族、魔獣の理由なき狩猟は認めていない」
密猟者１「はあ？」
ルカード「いいから早くここから去れ。 じゃないと──」
キオル「全治何ヶ月がいいか選ばせてやるよ」
キオル「さ、どうする？」
密猟者１「わ、分かったよ！ 帰ればいいんだろ！」
密猟者１「チッ。行くぞお前ら！」
キオル「もしまた魔界で見かけたら ぶっ飛ばすからな!!」
ルカード「動けそう？」
門番「大丈夫です」
ルカード「なら、急いで魔王城に──」
ルカード「何だ!?」
門番「向こうの方からです!!」

〇山の中
ダーリナ「ここで何をしているのですか!?」
傭兵１「おい、金になりそうなのが出てきたぞ！」
傭兵１「小っせえ魔獣はあとだ、 この魔族の女を捕らえろ！」
傭兵２「うわぁっ!!」
傭兵３「ぐあッ!!」
傭兵１「怯むな！　かかれ！」
ダーリナ「次から次へと・・・」
ダーリナ「鬱陶しい!!」
ダーリナ「あなたたちの目的は何です!?」
傭兵１「王子サマのお願いで、 ちょっと狩猟を楽しんでるだけさ」
ダーリナ「ハッ」
ダーリナ「今すぐここから立ち去りなさい!!」