ブラックローズ・ガーネット(脚本)
〇川に架かる橋
晶(あきら)「はあー 明日テストだなー やだなー」
宝石商「やあ お嬢さん きれいな宝石はいかが?」
晶(あきら)「わっ 不審者? これは声掛け事案かしら」
宝石商「私は旅する宝石商。 怪しいものではありません」
宝石商「私が扱う宝石は全て 不思議な力があります」
晶(あきら)「あらすてき でも御高いんでしょう?」
???「助けて・・・!」
晶(あきら)(ん・・・? 宝石から声が聞こえたような)
宝石商「お代はいただきません プレゼントします」
宝石商「この赤い宝石が あなたを気に入ったと言っていますから」
晶(あきら)「もらっていいんですか?」
晶(あきら)「不思議だ 物が人を選ぶこともあるんだなあ」
晶(あきら)「この石は赤いから ガーネットかな?」
宝石商「そう・・・ガーネットですが ただのガーネットではありません」
宝石商「『ブラックローズガーネット』 望む恋愛を引き寄せるちからがあります」
宝石商「石の中に黒い薔薇が閉じ込められた 珍しい宝石です」
宝石商「石の力を引き出すおまじないを教えましょう」
宝石商「満月の夜 石にキスをしてください さっそく今夜 お試しあれ」
晶(あきら)「え〜 はずかしいな〜 恋愛運より勉強運のほうがいいな 明日テストだし」
宝石商「ただのおまじない されどおまじない 信じるか信じないかはあなた次第」
晶(あきら)「・・・せっかくもらったんだし 試してみるか 本物のパワーストーンかどうか、確かめよう」
宝石商「ふふふ ブラックローズガーネットが喜びます 私も宝石商冥利に尽きます」
宝石商「ではでは、私はこれで」
晶(あきら)「行ってしまった・・・」
晶(あきら)「宝石ってメルかリで高く売れるかな」
晶(あきら)「・・・ガーネットを持ってる方の手が 一瞬痺れた こわい・・・」
晶(あきら)「早く家に帰ろう」
〇女性の部屋
晶(あきら)「ただより高いものはないって言うし ちょっと怖いけど 好奇心がとまらない」
晶(あきら)「これが宝石の魔性なのか おまじない 試してみよう・・・・・・」
CHU
〇黒
石に吸い込まれる──!
〇赤いバラ
晶(あきら)「ここは・・・?」
ガーネット「はじめまして。晶 僕はガーネット。 僕の声に応えてくれてありがとう」
ガーネット「ここは僕のジュエリールーム。 僕と君しか立ち入ることのできない場所だよ」
晶(あきら)「くらくらする・・・・・・ 左腕がじんじんする・・・・・・」
晶(あきら)「もしかしておまじないって 契約の類だったの・・・?!」
ガーネット「そうだよ 契約によって 僕は君の ジュエリーサーヴァントになったのさ」
晶(あきら)「ということは 私は今日からジュエリーマスター」
晶(あきら)「変身とかできそう」
ガーネット「できるよ マスター」
晶(あきら)「クラスのみんなには秘密にしなきゃ・・・!」
晶(あきら)「ところで ジュエリーサーヴァントってなに??」
ガーネット「本来は契約者の望む恋愛を引き寄せる 手伝いをするのが ガーネットのジュエリーサーヴァントの 役目なんだけど・・・・・・」
ガーネット「僕はブラックローズ・ガーネット。 黒薔薇の花言葉、知ってる?」
晶(あきら)「知らない。怖そう」
ガーネット「結婚しよう 晶」
晶(あきら)「そんな花言葉あるんだ・・・・・・ 知らなかった」
ガーネット「冗談だと思ってるね?」
晶(あきら)「今日初めて会った人(?)に言われてもね・・・」
晶(あきら)「結婚詐欺かもしれない」
ガーネット「僕は晶と初めて会ったつもりは ないのだけど」
晶(あきら)「・・・・・・?? 覚えがない 私はここから帰れるのだろうか・・・」
ガーネット「帰りたいの?」
晶(あきら)「帰ったら帰ったで面倒なんだよな 明日テストだし」
晶(あきら)「よく、不思議な世界に迷い込んで、 元の世界に帰らなきゃ! と奮闘する話があるけど、 奮闘する動機があるのが凄い」
ガーネット「奮闘しなくていいじゃない」
晶(あきら)「いや奮闘しよ 単位落としたら留年の危機 それはまずい」
晶(あきら)「望む恋愛なんちゃらにうつつを抜かしている場合ではない」
ガーネット「それ、本当?」
晶(あきら)「え?」
ガーネット「単位とか留年とか 本当に晶にとって大事なこと?」
晶(あきら)「うーん 大事ではないが やらないと叱られてしまう 面倒だわ」
ガーネット「もったいないよ 面倒なことを大事にするなんて」
晶(あきら)「さすが宝石 綺麗事を言う」
ガーネット「君も宝石だよ」
晶(あきら)「え・・・? まさかこの勝手に赤い宝石が移植?された左腕から どんどん侵食して宝石化していくとか?」
ガーネット「それはないので安心して。 人の骨はアパタイトっていう宝石だよ」
晶(あきら)「なるほど」
晶(あきら)「そういえば、助けてって君が言ってたの? 何に困ってるの?」
ガーネット「・・・僕はジュエリーサーヴァント失格だから、処分される予定だったんだ」
ガーネット「僕は人の恋愛の成就より 自分の恋愛の成就にしか力が出せないんだ」
晶(あきら)「すごく人間っぽいね」
ガーネット「しかも僕は宿主の愛がないと生きていけない」
晶(あきら)「人間っぽい・・・・・・」
晶(あきら)「だから契約しても人間側に 利点がないので価値がつかず 処分されるはめに・・・?」
ガーネット「そうなんだよ」
晶(あきら)「うーん ジュエリーサーヴァントにも 個性があっていいと思うけどね」
晶(あきら)「メリットデメリットばかり考えると 息苦しいよ」
晶(あきら)「・・・ガーネットがかわいそうに見えてきた」
晶(あきら)「宿主からの愛って どんなこと? 磨いたりとか? 宝石だし」
ガーネット「・・・腕」
晶(あきら)「え?」
ガーネット「触らせてほしい」
ガーネット「しがみつきたい」
晶(あきら)「腕フェチなのね」
ガーネット「腕輪とか 指輪になりたい 何故か無性に」
晶(あきら)「ネックレスになりたがる 首フェチの宝石もいたりして?」
ガーネット「知り合いにいる」
晶(あきら)「まじか・・・」
晶(あきら)「はい 腕 貸すよ」
ガーネット「ああ 生き延びた たすかる・・・・・・」
ガーネット「すべすべだ」
晶(あきら)「・・・・・・」
晶(あきら)「もういい?」
ガーネット「HPが回復した」
晶(あきら)「RPGだと宝石がHPを回復するよね 役割逆転が起こっていて 面白い」
晶(あきら)「そうだ 変身ってどうやるの」
ガーネット「左腕のガーネット抱きしめながら 僕のことが好きって念じてくれたら いつでも変身できるよ」
晶(あきら)「えっ」
晶(あきら)「・・・変身したら何ができるようになる?」
ガーネット「不安なときは不安が気にならなくなるよ」
晶(あきら)「なんだビームとか魔法とかは撃てないのか」
ガーネット「撃てるよ」
ガーネット「でも そんなの使わないで済む方が いいでしょう?」
晶(あきら)「たしかに」
ガーネット「試しに変身してみてよ」
晶(あきら)「嫌だ」
ガーネット「いつでも力を使いたいときは 変身していいからね」
晶(あきら)「いや 誰かが見てるときは さすがにまずいのでは」
ガーネット「大丈夫 モザイクがかかるので」
晶(あきら)「それって大丈夫なの??」
晶(あきら)「そろそろ元の世界に戻っていい?」
ガーネット「左腕のガーネットを抱きしめながら 僕のことが好きって念じてくれたら いつでも戻れるよ」
晶(あきら)「ほんと 宿主からの愛を得るために 抜け目がないわね」
ガーネット「恐悦至極」
晶(あきら)「ほめてないわ」
〇女性の部屋
晶(あきら)「・・・・・・不思議な一日だった 寝よう」
晶(あきら)「すー・・・すー・・・」
???「ちょうだいちょうだい 愛をちょうだい」
晶(あきら)「いやー 今手一杯なので 無理ですね」
???「ちょうだいちょうだい」
晶(あきら)「困りますねー」
???「じゃあ死んじゃえ!」
晶(あきら)「ウワアアアアッ」
晶(あきら)「はあ・・・はあ・・・ 夢か・・・」
「不安なときは不安が気にならなくなるよ」
晶(あきら)「・・・睡眠変身するか」
晶(あきら)「仕方ない 悪夢はゴメンだ」
晶(あきら)「・・・好き」
晶(あきら)「おやすみなさい」
少女と宝石の関係が何か別世界にいざなってくれるような夢のあるお話でした。女性とジュエリーはきっても切れないもので、それでも宝石からも愛されるような女性でありたいですね。